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主に映画の感想文を書いています

2022年の鑑賞記録

映画「フタリノセカイ(2021)」感想|“多様性”はそんなに割り切れるもんじゃない

こちら、ポスタービジュアルがよくできているなと思いました。LGBTQをテーマにした作品であるということだけ知っていたのですが、その先入観でこのポスターを見たとき、女性同士のラブストーリーなのかなと想像したんです。つまり背中を向けている右側の人物…

映画感想「ベアテの贈りもの」「宋家の三姉妹」|ありがとう岩波ホール特集上映inチュプキvol.1

東京・田端のユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」では現在「ありがとう、岩波ホール」特集上映と題して、7/29(金)に閉館となる岩波ホールで過去にかかっていた作品からチュプキ的に思い出深い何本かを上映しています。その第一弾となる『ベア…

2022年5月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

すっかり!振り返り忘れてました! 2022年5月に観た映画やいろんなことを振り返ります。5月、映画は少なめでした。新作ドキュメンタリー『オードリー・ヘプバーン』の尋常ならざる客入りとか、チュプキのウクライナ難民支援上映で観た『黒い雨』がよかったな…

映画「マイスモールランド(2022)」感想|在留資格を失った在日クルド人家族の、フィクションだけど本当の話。

映画『マイスモールランド』を観てきました。いやあ……、観れてよかった。評判に違わず素晴らしい作品でした……。難民申請の不認定により在留資格がいきなり失効となってしまった在日クルド人の家族を描くフィクションの劇映画。監督はこれが商業デビュー作と…

映画「私だけ聴こえる(2022)」感想|“ろう者でも聴者でもない、コーダという種族”を少しでも知る

ドキュメンタリー映画『私だけ聴こえる』を、シアター・イメージフォーラムにて観てきました。「耳の聴こえない親を持つ、耳の聴こえる子どもたち=CODA」を題材にした映画『コーダ あいのうた(2021)』が今年のアカデミー賞作品賞に輝いたのは記憶に新しい…

映画「犬王(2022)」感想|大規模コンサートの興奮が見事に表現された、でも室町時代のお話。

湯浅政明監督の最新作『犬王』を観てきました。舞台は室町時代。平家の呪いで視力を失った琵琶法師の青年・友魚(声:森山未來)と、疎まれて育った異形の能楽師・犬王(声:アヴちゃんfrom女王蜂)、二人の若きアーティストが京の都を熱狂させていく物語で…

映画「誰かの花(2021)」感想|読み解きたくなる要素満載の、スリリングな団地群像劇。

築年数高めの「団地」が本作の主な舞台。ある日「ベランダから落ちた植木鉢」が、住人たちの人生を狂わせていきます。たったそれだけと言えばそれだけの物語。しかし「たったそれだけのこと」がどこにどう転んでいくのか全く読めない緊張感。ヒリついた、固…

映画「トップガン マーヴェリック(2022)」感想|“この世界では死なせない”っていう話に弱い

やたら評判が良かったので斜に構えて見始めたのですが、終わってみればいやはや、満足度、高っ。手に汗握って、感動して、めちゃくちゃストレートに面白い……。今年の「ザ・映画」は『ウエスト・サイド・ストーリー』が不動の一位かと思いきや、ここに来て頭…

映画「王の願い ハングルの始まり(2019)」感想|ハングル創製のifを描く、歴史改変物語。

ハングルの創製には諸説あり、世宗が一人で作った可能性もあるとされているそうです。当時の朝鮮には自国語を書き表す文字がなく、上流層のみが特権的に中国の漢字を使用していました。権力を誇示するための文字だったのです。しかし世宗が作ろうとしたハン…

唐突に「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」を観ている、からの脱線あれこれ

所謂ニチアサとは無縁だったわたしですが、いきなり『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』を観始めました。ことの起こりはまたしてもアトロクことTBSラジオ「アフター6ジャンクション」。宇多丸さんが今年は久しぶりに戦隊ものを観ているとたまに話していたので、チ…

1話15分の韓国ドラマ「ポンダンポンダン 王様の恋」が存外おもしろい

『イカゲーム』とかよりもっともっと短い韓国ドラマはないのかい、と探していて見つけた作品『ポンダンポンダン 王様の恋』。なんと1話15分、朝ドラ級の尺感です。しかも全10話! 朝ドラ2週分の尺感です。まあ150分って言っちゃうといきなり長い感出ちゃうん…

映画「シン・ウルトラマン(2022)」感想|詳しくなくても大丈夫、シュールが好きなら大丈夫。

メフィラスかっこいい(ゆめかわいいくらいのニュアンス)と噂の『シン・ウルトラマン』観てきました。わたしのウルトラリテラシーはそう高くなくて、かつて父が観ていたセブンを一緒に見たような気がする幼少期の記憶だったりとか、初代マンからレオあたり…

映画「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022)」感想|とりあえず楽しかったからヨシ!

MCU28作目『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』観ました。お決まり的に書いておくと、ネタバレありです多分。さて、一応わたしとMCUの仲についてですが、とりあえず映画は全作履修済(ただし観た端から順に忘れる)。ドラマは『ワンダ…

映画「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ(2020)」感想|この話は“きれいごと”じゃない

シネマ・チュプキ・タバタのウクライナ難民支援上映で、ドキュメンタリー映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』を観ました。2010年から2015年までウルグアイの大統領を務めたホセ・ムヒカ。在任中も公邸ではなく農場の自宅に住み、給料の9…

映画「カモン カモン(2021)」感想|これに心動かされない自分、なんか落ち込むかもとか思いつつ。

渋谷のWHITE CINE QUINTOにて映画『カモン カモン』を観ました。ひょんなことから幼い甥っ子の面倒をみることになってしまったおじさんホアキン・フェニックスのお話。すごく評価の高い作品ですし間違いないやつでしょうと安心しきって観たのですけども、お…

映画「オードリー・ヘプバーン(2020)」感想|慈善活動に尽力した晩年までしっかりと見せてくれるドキュメンタリー

本作、ポスタービジュアルだけ見るとオードリーの輝かしい女優キャリアにスポットを当てた作品とも見えるのですが、その実は「人間オードリー・ヘプバーン」のドキュメンタリーとなっていて、彼女の生い立ち、私生活、晩年尽力した慈善活動まで、広く知るこ…

映画「猫は逃げた(2022)」感想|城定秀夫×今泉力哉コンビによる、不貞な男女と猫の群像物語。

『愛なのに』を観たのはもう2ヶ月も前で、この『猫は逃げた』もその後すぐ公開されていたのになんか時間が合わず新宿武蔵野館を何度素通りしたことか……。kikiさんの最終上映でやっと滑り込めました。 どんなお話かというと、ざっくり「倦怠夫婦もの」でしょ…

2022年4月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

2022年4月に観た映画やいろんなこと(今月はかなり、いろんなこと)を振り返ります。 一応、25本。実際には多分30本くらい。もっとかも。今月は本当になんというか、雑多、ごった? 散らかってんな!という感じになってしまいました。そして意外と新作が少な…

ここ最近の鑑賞映画まとめて感想③|「梅切らぬバカ」他、いつぞやのチュプキ編

3週間前くらいのチュプキ鑑賞メモを超絶遅延で書きます(下書きに眠らせすぎました)。『梅切らぬバカ』『普通に死ぬ 〜いのちの自立〜』『人生フルーツ』の3本です。「梅切らぬバカ(2021)」自閉症の息子と、自身も老いてきたなか二人暮らしで介護の日々を…

映画「無法松の一生(1943)」感想|二度の検閲で切り刻まれても伝わってくる松五郎の想い

稲垣浩監督による1943年の阪東妻三郎版『無法松の一生』、だいぶ前にBSプレミアムで録っていた4Kデジタル修復版を観ました。今村昌平監督の『黒い雨(1989)』を先日観た際に、新藤兼人監督の『さくら隊散る(1988)』を連想しました。『さくら隊散る』は広…

映画「黒い雨(1989)」をシネマ・チュプキのウクライナ難民支援上映で観た

今村昌平監督作品『黒い雨』を、シネマ・チュプキ・タバタのウクライナ難民支援上映で観ました。この支援上映については『ピアノ -ウクライナの尊厳を守る闘い-(2015)』の感想記事などでも触れましたが、そもそもの発端は、今村昌平監督のご子息・今村広…

映画「ZAPPA(2020)」感想|フランク・ザッパへの勝手な誤解がとけていくドキュメンタリー

フランク・ザッパのドキュメンタリー映画『ZAPPA』を観てきました。じつを言うとわたしはザッパを聴いたことがなかったのですが、ザッパ門下生であるスティーヴ・ヴァイにはかつて傾倒しておりまして、名前としての親しみだけならそこそこ強く持っていました…

映画「ピアノ —ウクライナの尊厳を守る闘い—(2015)」をアジアンドキュメンタリーズのウクライナ緊急支援企画で観た

「アジアンドキュメンタリーズ」で現在実施されている「ウクライナ緊急支援企画 視聴料寄付プロジェクト」。その看板的作品である『ピアノ ―ウクライナの尊厳を守る闘い―』を遅ればせながら観ました。月額視聴でも単品購入でも495円が寄付されます。2014年2…

ここ最近の鑑賞映画まとめて感想②|「ペトルーニャに祝福を」「ものすごくうるさくて〜」ほか

前回に引き続き、溜めてた感想を一気に供養していく回です。 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011)』 『THE END(2011)』 『ペトルーニャに祝福を(2019)』 タイトルだけ見るとデスメタルみたいな顔面の映画を想像してしまうのですが、じつ…

ここ最近の鑑賞映画まとめて感想①|「聲の形」「建築学概論」「ストーリー・オブ・ラブ」ほか

前回の投稿から10日も開いてしまいました。生きてます。 その間も映画自体は15本くらい観ていたのですが、節操がなさすぎてもはや何も書けませんでした。そんなわけで「まとめて雑感」スタイルにて一旦リセットしようと思います。まずは5本、なんとなくラン…

映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」続編と併せた感想|筋が通った家庭内ドキュメンタリー

本作でカメラが捉えるのは、アルツハイマー型認知症を患った87歳の「母」と、そんな母を老老介護する事になった95歳の「父」。そしてカメラの手前にいるのは、両親の姿を記録することにした「ひとり娘=信友監督」。認知症という繊細な対象をドキュメンタリ…

映画「屋根の上に吹く風は」「夢みる小学校」感想|新たな学びのかたちを考えさせられるドキュメンタリー2本

シネマ・チュプキにて、学校教育もの2本立て『屋根の上に吹く風は』『夢みる小学校』を観ました。ともに2021年製作の2本、一見すると非常に似た作品です。どちらもとにかく既存の枠にとらわれない自由なかたちの教育をしている学校であることは同じ。ただ、…

杉田協士監督作品「ひとつの歌」「ひかりの歌」感想|監督の作家性が、わかったりわからなかったり。

『春原さんのうた』杉田協士監督の過去作『ひとつの歌』と『ひかりの歌』を、いずれもポレポレ東中野の特集上映にて観ました。ポレポレさんに行くのはじつは今回が初めて。中央線沿いのこのあたりって妙な精神的距離があって一歩踏み出せずにいたのですがよ…

聖蹟桜ヶ丘・キノコヤさんほか「春原さんのうた」ロケ地探訪

最近どうも自分のなかで特別な存在になっている映画『春原さんのうた』。たった一首の短歌を原作とした、杉田協士監督の作品です。その劇中で主要な舞台となっているのが、とっても雰囲気のいいカフェ「キノコヤ」。こんなカフェあったらいいなあと思ってい…

映画「やがて海へと届く(2022)」感想|岸井ゆきの×浜辺美波に釣られ、何も知らずに観てみたら。

彩瀬まるさんの同名小説が原作となっていることはエンドロールまで知らず、鑑賞動機は単純(っていうか不純)に「岸井ゆきの×浜辺美波」だなんてそんなの観ないわけがないでしょ!というもの。しかもなんか、百合みあるし。観るでしょ。 そんなわけで全く予…