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主に映画の感想文を書いています

2000年代の作品

アジアンドキュメンタリーズのパレスチナ関連作品とか、「ほつれる」「さよなら ほやマン」などのはなし。

▼アジアンドキュメンタリーズにて配信中の、パレスチナ関連のドキュメンタリー『オスロ・ダイアリー』『医学生 ガザへ行く』を観ました。宇多丸さんとアジアンドキュメンタリーズ代表の伴野さんが春に対談本『ドキュメンタリーで知るせかい』を出版予定との…

ウォン・カーウァイ「欲望の翼」「花様年華 4K」を観た

先日ウォン・カーウァイ4Kレストア上映企画「WKW4K」にて『恋する惑星(1994)』『ブエノスアイレス(1997)』の2作を鑑賞し、初めてウォン・カーウァイ世界に触れたわたしですが、その後すぐ配信で『欲望の翼(1990)』を、昨日は劇場で『花様年華(2000)…

まっぷるさんで新海誠作品7本の紹介記事を書きました

「まっぷるトラベルガイド」さんにて、新海誠監督の劇場用作品全7本について記事を書かせていただきました。それぞれ簡単な作品紹介と聖地ガイドになっています。新海誠監督につきまして良く言えば「フラットな視線を持つ」、悪く言えば「熱心なファンじゃな…

映画「ひめゆり(2006)」感想|13年をかけ、ひめゆり学徒隊の生存者22名に向き合ったドキュメンタリー

本作で扱われているのは、太平洋戦争末期・沖縄戦で多くの犠牲を出した「ひめゆり学徒隊」。公開以来16年間、毎年6月23日「沖縄慰霊の日」に合わせて上映し続けてきたという作品ですが、わたしは今回が初見となります。130分という長尺でありながら、本作は…

映画感想「ベアテの贈りもの」「宋家の三姉妹」|ありがとう岩波ホール特集上映inチュプキvol.1

東京・田端のユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」では現在「ありがとう、岩波ホール」特集上映と題して、7/29(金)に閉館となる岩波ホールで過去にかかっていた作品からチュプキ的に思い出深い何本かを上映しています。その第一弾となる『ベア…

濱口竜介監督作品「親密さ(2012)」と中編3本の感想|“言葉と乗り物”にますます浸る

先週に引き続き、Bunkamuraル・シネマの企画上映「濱口竜介監督特集上映《言葉と乗り物》+『寝ても覚めても』特別上映」に昼から籠ってきました。今回観たのは『親密さ』『永遠に君を愛す』『不気味なものの肌に触れる』『天国はまだ遠い』の4本です。日本…

濱口竜介監督作品「ハッピーアワー」「PASSION」「何食わぬ顔」感想|渦巻く本音の会話劇たち

日本映画初となるアカデミー賞作品賞ノミネートにより近作『ドライブ・マイ・カー』が世界的に注目を集めている濱口竜介監督。その初期作品『PASSION』『何食わぬ顔』と、317分尺のミニマムな超大作『ハッピーアワー』の感想について、鑑賞順に書いていきま…

サム・ライミ版「スパイダーマン」全3作と「アメイジング・スパイダーマン」全2作の一気見感想

MCU最新作のスパイダーマンなんちゃらかんちゃらを楽しむため、過去の『スパイダーマン』シリーズをスピード履修中。サム・ライミ版の3本と、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ2本の計5本を3日で一気見したので、ざっくばらんに鑑賞メモです。 なお…

映画「東京ゴッドファーザーズ(2003)」感想|クリスマスの奇跡が「激突」してくる

舞台はクリスマスイブの東京。ゴミを漁っていたホームレス3人組が捨て子の赤ちゃんを拾ってしまうところから始まる物語。なんか普通にハートウォーミングな話なのかなあとのんびり観ていたら、どっこい次々と「激突」してくるサプライズがすごくて(笑) こん…

映画「グラン・トリノ(2008)」感想|なんとなくの食わず嫌いを後悔。名作でした。

クリント・イーストウッド監督&主演の映画『グラン・トリノ』を観ました。 この映画、なんか渋そうじゃないですか。男とクルマとPTSDのハードボイルドな物語かなと若干身構えていたんですが、どっこい、めちゃめちゃ心温まる名作映画でした。いわば『ニュー…

斜に構えて「シンエヴァ」を観た。すごくよかった。【前半: 序破Qの復習/後半: ネタバレ雑感】

なんやかんや一応テレビシリーズから全部観てはいるんだけど、とはいえそんな熱心なファンじゃないしさ、と斜に構えていた『シンエヴァ』公開祭り。というより、ただのミーハーなノリで観に行くのは失礼かなみたいなところもあったんですが。 でもまあ、なん…

映画「箪笥<たんす>(2003)」感想|性癖にぶっ刺さる、継母と少女のサスペンスホラー

韓国のサスペンスホラー映画『箪笥<たんす>』を観ました。別冊映画秘宝「韓国映画究極ガイド」内の韓国ホラー特集にてこの場面カット(↑)と共に紹介されており、これは好きそうと思っていた作品です。単純に「あ、可愛い」っていう、それだけの理由です。…

映画「サマリア(2004)」感想|書くことがなくて墓の話に逃げる

キム・ギドク監督の『サマリア』を観ました。タイトルからしてヤバいやつを覚悟していたんですが、これまで観てきた同監督作『魚と寝る女(2000)』『悪い男(2001)』『嘆きのピエタ(2012)』に比べればだいぶクセのない映画だったかなあという印象です(…

映画「子猫をお願い(2001)」感想|のどかなコメディかと思ったら。後の「はちどり」にも繋がる作品

韓国映画『子猫をお願い』を観ました。ぺ・ドゥナさんの初期主演作品としてタイトルは以前から知っていましたが、観るのがだいぶ遅くなりました。 ぺ・ドゥナさんは山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ(2005)』や是枝裕和監督の『空気人形(2009)』など…

映画「シークレット・サンシャイン(2007)」感想|地味なのに展開が早く、いちいち行間が痛い(褒め)

イ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』を観ました。主演はチョン・ドヨン、そしてソン・ガンホ。かつてライムスター宇多丸さんも年間ベストに選んでいた本作、同監督の作品は昨年末に観た『バーニング 劇場版(2018)』がすごく良かったので楽…

映画「P2(2007)」雑感|クリスマスイブにNYの地下駐車場で監禁されるホリデイ・スリラー

クリスマスなのでクリスマスっぽい映画を探しましょう。「クリスマスイブ」「ニューヨーク」「監禁」──ふむ。いいですね。『P2』キミに決めた。 あらすじ クリスマスイブのニューヨーク。オフィスで最後まで残業していたアンジェラは、イカれた警備員の「粋…

キム・ギドク監督作品「魚と寝る女」「悪い男」雑感|完全アウトな純愛物語たち

キム・ギドク監督が新型コロナウイルスのため59歳で亡くなったというニュースが入りました。『嘆きのピエタ(2012)』くらいしかフィルモグラフィを存じ上げない監督でしたが、スキャンダラスな面も含めて名前はよく目にしていたので驚きました。そんなわけ…

映画「チェイサー(2008)」雑感|デリヘル店長と猟奇殺人犯の絶望的追撃戦

『哭声/コクソン(2016)』に引き続き、同じくナ・ホンジン監督のこちらはデビュー作『チェイサー』を観ました。韓国映画のなかでも特にメジャーなあたりではないかという印象がある本作ですが、主演のキム・ユンソクさんが出演している『あなた、そこにい…

パク・チャヌク監督作品「サイボーグでも大丈夫(2006)」雑感|B級だけどちょっといい話

パク・チャヌク作品集中履修、だいぶ進んできました。今回は2006年公開の『サイボーグでも大丈夫』を鑑賞。不思議なタイトルですが原題もそのまんまです。なお『サイコだけど大丈夫』という似て非なる(はずの)韓国ドラマがありますね。何か関係あるんでし…

パク・チャヌク監督作品「親切なクムジャさん(2005)」雑感|“復讐三部作”締めくくりはオールスターキャストの集大成的エンタメ作品

『復讐者に憐れみを(2002)』『オールド・ボーイ(2003)』から続くパク・チャヌク監督的“復讐三部作”の締めくくりとなる『親切なクムジャさん』を観ました。タイトルの「親切なクムジャさん(原題も同じ)」とは、イ・ヨンエさん演じる主人公のクムジャが…

パク・チャヌク監督作品「復讐者に憐れみを(2002)」雑感|エグい、エグすぎる。

さあ、ハマったらどんどんいきます。パク・チャヌク監督作品履修、引き続きお付き合いください。今回観たのは2002年公開の『復讐者に憐れみを』。本作に加え、翌年公開『オールド・ボーイ』、さらに続く2005年公開『親切なクムジャさん』までの3作を、パク・…

パク・チャヌク監督作品「渇き(2009)」雑感|ぶっちぎりの変態映画! 意外性だらけな吸血鬼ラブストーリー

これはまずいです。パク・チャヌク監督、わたし見事にハマりました。『お嬢さん(2016)』よかった、『オールド・ボーイ(2003)』よかった、そしてこの2009年公開作『渇き』。んーーー、どうしようもなく刺さる!! フェチなところに!! 邦題の『渇き』は…

パク・チャヌク監督作品「オールド・ボーイ(2003)」雑感|15年間わけもわからず監禁されていた男の物語

『JSA(2000)』『お嬢さん(2016)』と観てきたパク・チャヌク監督作品、今回は2003年公開の『オールド・ボーイ』を鑑賞しました。日本の同名コミックが原作となっており(なんでもポン・ジュノ監督からおすすめされたんだそうです*1)、非英語映画としての…

「愛の不時着」第1話に見られる韓国映画「JSA」オマージュについて(ただのタレコミ)

遂にあのビッグタイトル『愛の不時着』に手を出してしまいました。韓国の財閥令嬢がパラグライダーの事故で北朝鮮に不時着してしまう、というハードコアなラブコメですね。なお本稿では第1話にしか触れませんので、ドラマの展開に関するネタバレは実質含まな…

是枝裕和監督作品「大丈夫であるように -Cocco 終らない旅-(2008)」雑感|沖縄の人たちはなぜ明るく、歌い、踊り、三線を弾いているのか

是枝裕和監督の作品を順番に観ています。今回は劇映画ではなく、歌手のCoccoに密着した『大丈夫であるように -Cocco 終らない旅-』というドキュメンタリー映画です。これがめっぽうよかったので激推ししたいと思います。 ちなみにまず書いておくと、わたしと…

是枝裕和監督作品「歩いても 歩いても(2008)」雑感|希林さんのおかげで俄然明るくなった是枝作品

是枝裕和監督の作品履修を『誰も知らない(2004)』から再開したはいいものの、早速その次の『花よりもなほ(2006)』が一切配信されていないという壁にぶち当たりました(笑) 配信時代のこのもどかしさはなんとも言いがたい。そんなわけでいきなり飛ばして、…

是枝裕和監督作品「誰も知らない(2004)」雑感|こんなのきっと気付かない

『幻の光(1995)』『ワンダフルライフ(1999)』『DISTANCE(2001)』と順番に観てきたところで一年近く途切れてしまっていた是枝裕和監督の作品履修を再開。まずは2004年の『誰も知らない』から。 実際に起きた育児放棄の事件をモチーフとしたオリジナル脚…

大林宣彦監督作品「22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語(2007)」雑感

2007年公開の大林宣彦監督作品『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』をレンタルDVDで観ました。伊勢正三さん作詞作曲のフォークソング「22才の別れ」をモチーフとした作品になっており、こちらは未見ですが2002年公開の『なごり雪』に引き続いての「大分…

大林宣彦監督作品「その日のまえに(2008)」雑感

配信されている大林作品を全て観る(ことに最終的になった)マラソン、ついにゴールです。なぜかHuluでしか配信されていない『その日のまえに』が最後の一本。珍しくウェットな内容と相まって、なかなか感動的なフィニッシュとなりました。ではでは、しゅっ…

「ウォッチメン」原作コミック('86)、映画版('09)、HBOドラマ版('19)を一気に摂取した記録

本稿は『ウォッチメン』と名のついた各種作品を初めて摂取する方向け、より細かく言えばドラマ版を観たいんだけど予習は必要? と悩んでいる方向けのガイド記事、のようなものを目指しています。書いているのは、まさに一週間前くらいまでその状態だった人で…