三宅唱監督「夜明けのすべて」のはなし。
三宅唱監督の最新作『夜明けのすべて』をグランドシネマサンシャイン池袋で観ました。『彼方のうた』の杉田協士監督が早くから大プッシュしていたこともあり、かつ松村北斗×上白石萌音という最高すぎるキャストに、だいぶ楽しみにしていました。結論、とてもとてもよかったです。
「PMS(月経前症候群)」と「パニック障害」をキーワードにはしつつ、それらを中心に置いているわけではなくて、他人に対して想像力を働かせたり思いやりを持つことで自分もいくぶんか息しやすくなるよと、そんな映画だったと思います。劇中で「人にやさしく 自分にもやさしく」という標語が出てくるのですけど、まさにこれが主題なのかなと。
また、松村北斗さんと上白石萌音さんのカムカムカップルが恋愛展開を生まないのも嬉しかったです。お互いのアパートを行き来するような間柄になってもなお、これは演出の妙でもあるのでしょうが、「そういう展開」になる気が全くしない安心感。いや別にわたし、この二人のラブストーリーも全然見たいんですけど、本作に漂う空気のなかではそんなことになってほしくなくて。万が一そうなっていたら星三つくらい削るところでした。
思い返せば序盤のシーンこそだいぶヒリヒリしていたものの、全体的にはただただ居心地のいい、毛布のような映画。このW主演キャストでこの内容に仕上げることができる今の映画界、今の時代、非常に素晴らしいなと、わたしは拍手喝采です。