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主に映画の感想文を書いています

試写感想「成功したオタク('24.3.30公開)」

3月30日から公開となる韓国の映画『成功したオタク』をオンライン試写で観ました。試写時点でのポスタービジュアルは、原題『성덕』が大きな文字でどんと書かれただけ(かつピンク)という「何の映画?」って感じだったのですが、これじつはドキュメンタリーなのでした。

「성덕(ソンドク)」とは、まさに「成功したオタク」を意味するスラングとのこと。日本でもこのスラングは使われているようで、意味はまあざっくり「周囲が認知してる強火オタク」って感じのニュアンスですかね。

で、じゃあ推し活のドキュメンタリーかというとまた少し違って、ずばり「“推し”が性犯罪で逮捕されてしまった“オタク”」である監督が、同じような経験をした“オタク”たちに話を聞いていく、というもの。

アイドルのみならず、ミュージシャンに俳優、映画監督etc... 同じ経験をしている人がものすごく多いであろう昨今、ありそうでなかったドキュメンタリーだな、と思いました。

難点としては、ことの発端となる「事件」が、おそらく韓国の人および韓国アイドルファンには周知の事件なのだろうけども、そうでない身からするとやや説明不足に感じることでしょうか(身近な範囲での置き換えは容易ですが)。

また、途中で「獄中の朴槿恵を支持する人たち」なんてのが出てきておもしろいんですけど(確かにそれも成功したオタクだ)、朴正煕と朴槿恵のブロンズ像が説明なく映し出されるだけ、みたいなショットなんかも韓国以外の観客にはやや不親切かなあと。あくまで韓国内向けの編集になっている感はありました。

でもほんと、自分の捧げてきた情熱と時間が全て黒塗りになってしまうこの問題というのはエンタメを愛する者なら誰しも少なからず共感を覚えられるはずで、この切り口のドキュメンタリーは興味深いです。シアター・イメージフォーラムなどで公開予定です。ぜひ。