映画「オードリー・ヘプバーン(2020)」感想|慈善活動に尽力した晩年までしっかりと見せてくれるドキュメンタリー
Bunkamuraル・シネマにて、ドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』を観ました。補足するまでもなく、オードリー・ヘプバーンのドキュメンタリーです。
わたしオードリーはかなり好きで、どれぐらい好きかというと初のNY旅行で『暗くなるまで待って』のロケ地へ行くぐらい好きなのですが(もちろんティファニーにも行ったしなんならブロードウェイ初観劇は『マイ・フェア・レディ』だった)、まあそんなわけで本作も結構楽しみにしていました。
ル・シネマは朝10時台の回だというのに150席のシアターが老若男女で満席。日本でのオードリー人気が全く衰えていないことを再確認です。ちなみに前回「確認」したのは「写真展オードリー・ヘプバーン」へ行ったとき。あれは確か平日だったのにものすごい人で、圧倒されたものでした。
さておき本作、ポスタービジュアルだけ見るとオードリーの輝かしい女優キャリアにスポットを当てた作品とも見えるのですが、その実は「人間オードリー・ヘプバーン」のドキュメンタリーとなっていて、彼女の生い立ち、私生活、晩年尽力した慈善活動まで、広く知ることができます。少なくとも「妖精オードリー」を堪能させる映画ではないです。
個人的に収穫だったのはやはり晩年、ユニセフ大使としてのオードリーをしっかり見れたことでした。ただでさえ華奢なオードリー、晩年の写真はどれも痩せこけていて、正直なところこれまで目を逸らしていました。でも本作を観ると、広く知られ愛された女優としての彼女は通過点に過ぎず、幼少期の過酷な経験に端を発する晩年の慈善活動こそがオードリー・ヘプバーンという人間のど真ん中なのかなと、そう思うようにもなりました。
先日観た『ZAPPA(2020)』も、「音楽家フランク・ザッパ」ではなく「人間フランク・ザッパ」のドキュメンタリーとして、晩年の社会活動家としての一面まで広くスポットを当てていました。Wikipediaの「晩年」だけではふーんで終わってしまう部分を、こうして映像でしっかり見せてもらえるのはありがたいです。痩せこけたイメージのオードリーが、強く美しいイメージに書き換えられた、これは大きいことです。
ただ本作、一点だけ苦言を申し上げるとするならば、やたら尺をとった「イメージ映像」は蛇足だと感じました。なぜあれを挿入しようとしたのかが理解できません。感動が冷めていく、謎の時間でした。それとも何か、関係のあるキャスティングなの……??
(2022年88本目/劇場鑑賞)