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映画「屋根の上に吹く風は」「夢みる小学校」感想|新たな学びのかたちを考えさせられるドキュメンタリー2本

シネマ・チュプキにて、学校教育もの2本立て『屋根の上に吹く風は』『夢みる小学校』を観ました。


「屋根の上に吹く風は」「夢みる小学校」
映画「屋根の上に吹く風は」「夢みる小学校」ポスター


ともに2021年製作の2本、一見すると非常に似た作品です。それぞれのポスターに書かれたコピーを引用してみます。

授業も、テストも、クラスもない
鳥取県の山あいにある新田サドベリースクール
遊びだって生き方だって、自分で考え、自分で決める
子どもと大人の自由と葛藤の1年を追ったドキュメンタリー

(映画『屋根の上に吹く風は』ポスターより)
テストがない 宿題がない 「先生がいない」
30年前から先進的な教育を続ける「日本で最も楽しい学校」。
わくわくがとまらない 希望あふれる“教育変革ドキュメンタリー”

(映画『夢みる小学校』ポスターより)

どちらもとにかく既存の枠にとらわれない自由なかたちの教育をしている学校であることは同じ。ただ、例えば『屋根の上に吹く風は』の「新田サドベリースクール」が国から認可されていない学校である一方で『夢みる小学校』の「きのくに子どもの村学園」は認可校。理念の部分でも「自由」と「責任」についてなど、じつは結構違いが見られます。そして映画のつくりとしても大きく違いのある2本でした。


※以下の感想は各校そのものや子供たちに対するものではなく「映画としてのつくり」についてのものです。


先に観たのは『屋根の上に吹く風を』。さまざまなことに「大丈夫かいな」と怪訝な気持ちになりつつ、いや、でもこれは理想のかたちなのかもしれないなあと思ったり、じんわり感動したり。しかし終盤、とある「民主主義」の顛末にかなり衝撃。こ、これはエグすぎないか。「葛藤」ってこれか。もっとほっこりするドキュメンタリーを観てたつもりだったのに。自由って、せつなくないですか?(by坂本真綾、いや岩里祐穂か)。


そして翌週『夢みる小学校』を鑑賞。ポップだよ、と聞いてはいましたがなるほど確かに『屋根の上に吹く風を』のあとだとものすごくキラキラして見える。あっちのようなエグみもない。ただ、観たかったのはこれではないような気もする。むしろ今となっては『屋根の上に〜』のほうがどこか健全にすら思える。

『屋根の上に〜』のほうはあくまで「答え」を出さない、モヤモヤも含めてひとつのドキュメンタリー作品としてパッケージングされているのに対して、『夢みる小学校』は「NO」と言わせてくれない圧みたいなものを感じる。吉岡秀隆さんの温かいナレーション、頻繁に挿入される茂木健一郎さんや尾木ママの肯定的なコメント。一つ一つは別にたぶん悪いものじゃない。でもなんだろう、この「ありがたいお話」感は。

もし『夢みる小学校』だけを観ていたらこんな斜に構えたことは言わなかっただろうなとも思うんです。だけど『屋根の上に〜』であらわになっている問題、疑問、課題。それが『夢みる〜』の学校たちに無いとは考えにくい。と、したときに、疑問を提示させてくれない『夢みる〜』の映画のつくりには怖さと不信感が勝ってしまって。

機会がありましたらぜひ見比べてみていただきたい2本でした。

(2022年62・71本目/劇場鑑賞)