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映画「すずめの戸締まり(2022)」ネタバレ感想|よくぞ新海監督、これを。

新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』を観てきました。

なかなか新作映画を観に行けない日々で、本作も人が落ち着いてから行こうかなと思っていたのですが、どうも評判がいいらしい。これは気になっちゃうな〜ということで、公開3日目に行ってまいりました。いや、よかった。本当にすごくよかった。

前作『天気の子(2019)』がバランス的にう〜〜んな作品だったので、まあ『君の名は。(2016)』超えは難しいよねと、期待は全然していなかったのです。それが、再びこのバランス感の映画を作れるのかと、すげえ!と、感動しちゃいました。

ただ一点、鑑賞に際しての注意事項を先に書き添えておきますね。ネタバレとも言える要素なので、一応ポスター画像を挟みます。そのあと感想をつらつらと書いていきます。


映画「すずめの戸締まり」ポスター
映画「すずめの戸締まり」ポスター


はい、では注意事項ですが、本作は「3.11」が大きく関わってくる物語です。映画の冒頭から地震にまつわる具体的な描写がわりと出てきます。直接の被災者でなくとも少なからず心がざわつく描写です。ご鑑賞の際はその旨ご留意いただいたほうがよいかと思います(公式サイトのトップページ上部でもアナウンス有)。ということで以下感想。

大いなる力には大いなる責任が伴う

いちばんの感想は「よくぞ新海監督、これを」でした。今の「新海誠」のネームバリューと資金力と技術力をふんだんに使って、かつ作風はそのままに、「忘れないで」「こんなことがあったんだよ」を広く伝える。プロモーション面で表向き「震災」を伏せていることに対する懸念はあるものの、いやしかし、力を持つ者の責任を全うした作品だと感じました。

最近だと『やがて海へと届く(2022)』なども「岸井ゆきの×浜辺美波」タッグ見たさに観てみたら結構ダイレクトな震災ものだった作品ですけども、あれは「日本中が観る!」というような規模の映画ではありません。その点、今の新海作品は文字通り「大ヒット」がほぼ約束されていますから、巨大なネームバリューを持ってしてこの題材を選ぶのは決心の要ることだったはず。

ちなみに、劇場でもらえる小冊子「新海誠本」のインタビューでは、新海監督このように語っています。

『すずめの戸締まり』は、震災文学の流れの中の、数ある作品のうちの一つに過ぎません。きっと珍しくも特別でもない。でもそれをオリジナルのアニメーション映画として、メジャーな規模で公開されるエンタメの枠組みで作ったということに、今回の僕たちの仕事の意味があるはずだと考えています。(「新海誠本」p13より)

作品を評価するために他の作品を落とすのは良くないとわかってはいますが、どうしても頭をよぎり、比べてしまったのが近年の細田守作品。『竜とそばかすの姫(2021)』の感想で書いた苦言は、つまりそういうこと。

この先も超メジャー監督としてシネコンを占有できる影響力の映画を作り続けるのであれば、もうちょっとノイズの少ない脚本にして欲しいなと思っちゃいます。映画「竜とそばかすの姫(2021)」感想|ミュージックビデオとしては、かなりいい。 - 353log

別に「こういう題材」を扱ってほしいという意味ではありません。が、いろいろと、期待しています、細田さん。


そのほか「新海誠本」のインタビューでハッとしたのは、「観客の中にも、この映画を観ても震災を連想しない方が1/3から半分くらいはいるんじゃないでしょうか」という言葉(p10)。確かに、わたしは1986年生まれですけど、東京で迎えた95年の阪神淡路大震災のことは「新聞の一面の、見たこともないような巨大な見出し」ぐらいでしか記憶がありません。思っている以上に、「知らない世代」はすぐに現れるんですよね……。

エンタメとしてめっちゃよくできてる

もうひとつの感想はこれ。特に前半部、エンタメとしての完成度がめちゃめちゃ高くて(というかまあ、好みで)、惚れ惚れしました。

まずはなんといってもアバンタイトルでしょう。想像を絶するもののけ的スペクタクルにエクソシストLOVE PHANTOMみたいな劇伴が乗ってきて脳汁ドバドバなところでドォォン!すずめの戸締まりィ!!スタンディングオベーション!!!……な、あの切れ味マジやばい。IMAX料金2,400円、ここでもうペイですわ。『RRR』にも勝てるかもしらんぞ。

超絶かっこいい曲はこれ。とあるかしこみルーティンで使われる。1分半あたりからのが好きすぎる。ただ、ブチ上がっていいシーンかと問われるとそうでもない気がするのでやや複雑ですが。

今回の劇伴はRADWIMPSだけではなく陣内一真さんという方も参加していて、これは陣内さんの担当っぽいですね。この方の参加が全体のクオリティに与えている影響、かなり大きそう。あ、あと、なんかSOILっぽいなと思ったやつがタブゾンビさんと丈青さんのSOILメンツでしたね。

あそこは一瞬『天気の子』の謎バイクチェイスシーンなぞを連想して悪寒が走ったものの、いや、楽しかった。すずめの巻き込まれヒロインっぷりがお見事だったし、細かいギャグも冴え渡ってたし、ダイジンの猫ならざるウルトラ跳躍とかがケレン味たっぷりでよかったなあ。

ちょっと、どうやってもまとまらなくなってきたので箇条書き発動します。

  • 松村北斗さん、えがったですねい。ロン毛の君とのお付き合いが短いまま椅子化するので、すずめはロン毛の君を思い描きながら接しているのだろうけど、わたし的には松村北斗さんを想像しながら椅子を見ておりましたゆえ、終盤戻ってきたときの「ロン毛お前じゃねえよ!」感が強かったです。

  • 最新AIなの!ってかましたらアレクサ扱いされて無能な椅子くんのくだり好きです。

  • オムニバス映画『TOKYO!』よりミシェル・ゴンドリー監督の『インテリア・デザイン』を連想されたお客様はいらっしゃいますか?

  • まさか猫があんなヒールとは思わなかった前半、なんだ結局ただのジブリっぽい猫じゃんとなった後半。「ジブリっぽい猫」のノイズを「リアル耳すま」で先に潰しておくメタ作戦うまい! 「ルージュの伝言」でもう一回それやんのもうまい!

  • 細田守新海誠クラスじゃないと白々しくなりかねないジブリのメタ利用、やはりそれなりにハードルが高いのか、ありそうでなかなか見ないのでは?と思った。『星を追う子ども』のことを考えると感慨が深い。あれはジブリというより世界名作劇場らしいですが。

  • ダイジンの「今からいっぱい人が死ぬヨ」のやつ、今から晴れるよ!じゃねえんだからさと苦笑しつつも、いい意味でサブイボ立っていました。好きです。あんなのを好きと言っていいのかわかりませんがやむなく好きです。

  • すずめの巻き込まれリアクション(打倒!鬼頭はるか)で特に好きなのは、序盤でダイジン目覚めさせちゃったあとの「えっ怖!」です。近寄らんとこ感が好きです。グッとくるほうで好きなのは「怖くない!!」です。

  • 家出少女モードのすずめが、お世話になる先々でどんどんキャラクターデザインを壊されていくところ、好きじゃないけど好きです。なんやかんや最終的にまた制服に着替え直すの、ありがたいです。助かります。最後の冬服もありがとうございます。

  • 原菜乃華さん、お名前存じ上げなくて完全なる新人さんなのかなと思ったら結構芸歴長い方だったんですね。新海監督は、ああいうキャラクターのディレクションがうまいなあ。最高に魅力的なヒロインでした。

  • 細か〜い部分でいうと、おばさんがすずめと電話し終えた直後、スマホの画面がLINEのトーク画面に戻ってるのがリアルで高得点です。電話じゃなくてLINE通話、確かにそうだよね!


ひとまずこんなところでアウトプットは終了といたします。デリケートなところの感想は省いてしまったけれど、本当にすごくよかったです。そういえば今回は「新海誠の映像美」を全然意識せずに観てた。それだけのめりこめたのかな。映像より音に圧倒されてたところもあったかも。ぜひ映画館で、できればIMAXで前の方で、「体感」してください。

(2022年204本目/劇場鑑賞)

(全然更新してないくせに鑑賞本数のカウントやたら進んでない?と気付かれた方、そうです。書いてないけどめっちゃ観てます。何かを書くために、めっちゃ観てます。またいずれ……)

あ、そういえば! 以前まっぷるさんで書かせていただいた新海誠監督作品全7作の紹介&聖地ガイド記事、あれ一応『すずめの戸締まり』公開に向けてのものでした。過去作観てみようかなという方の参考になりましたら!

2022年9〜10月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

2022年9〜10月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

やってしまった。ついに溜めて溜めて合併号。2022年9〜10月に観た映画やいろんなことを振り返ります。リンク先は感想記事、並びは鑑賞順です。公開から3ヶ月くらいまでのタイミングで鑑賞したものを新作、それ以外を準新作/旧作としています。8月分の振り返りはこちら。



はい、というわけで、ずるずる先延ばしにしていたら2ヶ月分合併号になってしまいました。こうやって見るとそれなりに新作も観れているのかな。体感としては全然観れてない気分なんですが。

新作では、すでにだいぶ遠い記憶の『NOPE/ノープ』。最ッ高のSFでした。ジョーダン・ピール作品のなかでいちばんストライクです。『さかなのこ』もめちゃくちゃ良かった。ただ、後日宇多丸さんの映画評で知った、共同脚本・前田司郎氏のハラスメントや性加害等の告発の件が、残念ながらとても引っかかります。

10月に入ってからも『四畳半タイムマシンブルース』『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』といった「時間もの」の傑作や、1,900円じゃ安すぎる超大作インド映画『RRR』等々、興奮!な作品が多数ございました。嬉しい限り。

『LOVE LIFE』は後日シネマ・チュプキにて深田晃司監督の舞台挨拶を拝見し、記事の中で書いた「当事者キャスティングについて思うこと」のモヤモヤ感がだいぶ晴れました。というか、来ていたお客さんが質疑応答で真っ先にそこを質問してくださったんですよね。かなり勇気のいる質問だったろうに、すごい、痺れる。帰り際、その方と長めに立ち話してしまいました。

旧作のほうは、ほとんど「まっぷる」さん関連の作品です。9〜10月は「6選」の記事をいくつか書かせていただきましたが、紹介する本数が少ないぶん文字数は多く、ちゃんと書くためにじっくり観ております。エリザベス女王が亡くなられたことで初めて観た『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』、とても素敵な映画でした。

アメリは先々月あたりにも観てますけども、チュプキでも先月まで上映しておりまして、イヤホン音声ガイドのほうでチュプキ録り下ろしの吹替が聴けました。あらためてじっくり向き合った『アメリ』は「殻を破れない人のための応援歌」だったのだなと気付き、最後にはだいぶグッときてしまいました。ただのおしゃれ映画じゃなかった。

あと、ドラマのほう、美容師さんにおすすめされて、2日で一気見した坂元裕二脚本の『初恋の悪魔』。そういうかたちの三角関係?四角関係?があるのか!という役どころの松岡茉優さんを筆頭に、演技力おばけの皆様が本気出しまくりの、すごい作品でございました。なんか、今の『ドンブラザーズ』も同じような展開になってるよね。なつみミーツミー。

そして最後に、『こころの通訳者たち』。こちらぜひ観ていただきたいです。

新宿K's cinemaさんは昨日で終了しましたが、この週末からは東京・青梅のシネマネコさん、千葉のキネマ旬報シアターさんで上映が始まりました。来週にはいよいよ関西方面へも進出です。

といったところで、9〜10月に観たあれこれでした。年内は省エネモードになります!(予告)