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主に映画のあらすじと(まとまりのない)感想文

桐島、部活やめるってよ(2012)

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

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タイトル自体はずっと知っていたものの、ずっと観る機会のなかった作品です。って書くとまさに本作における「桐島」的存在とも言えるわけですが(笑) 先日鑑賞した「カメラを止めるな!(2017)」の感想などにたびたび名前が出てきていたこともあり、そろそろ観るかーと手に取りました。

あらすじ

おい、桐島が部活をやめるらしいぜ?
桐島が? マジ?
あたし何も聞いてないんだけど。
俺も何も聞いてないんだ。
桐島明日学校来るらしいぜ!
それどこ情報?
桐島が屋上に上がっていくのを見た!
なんだよ、いねーじゃん。
桐島! 出てこいよ桐島!

突如姿を消した人気者「桐島」と、それによって巻き起こる小さな世界の大騒動。

※桐島は登場しません

ポスター等のビジュアル的にも主演の神木くんが「桐島」かと思いがちですが(すごい「桐島」って顔してるし)(と思ったのはもしかすると「3月のライオン」の「桐山」のせいかも…)、桐島は最初から最後まで出てきません。あとから思えば小さな世界、しかし渦中では大きく唯一の世界である学校という舞台で「桐島」の消失をきっかけに巻き起こるある種の「パニックもの」とも感じました。

「金曜日」という題字から始まる本作。そのまま曜日が進んでいくのかと思えば、次に出る題字もまた「金曜日」。桐島の「部活やめるってよ」情報が広まったこの日をマルチアングルで繰り返す手法がまず最初に取られています。スクールカーストの上層に位置し、桐島の消失に振り回されている体育会系少年少女の視点。下層に位置し、桐島の影響が及んでいない文化系少年少女の視点。普段ならそう頻繁に関わり合わないはずのお互いが「桐島事変」により接触事故を起こし、ある生徒にとってはそのことがターニングポイントとなる、一言ではまとめられませんがそんなお話です。

月並みな青春群像劇寄りのものを想像していたら、構成的にもすごく独特な、非常におもしろい作品でした。これは確かに名作の域に入る作品だと思います。だいぶ舐めてました。

魅力的な若手俳優たち

本作、ものすごい豪華キャストです。名前だけ連ねてみると、神木隆之介東出昌大松岡茉優橋本愛山本美月、などなど。すげえ!ってなりますよね。ただ当時はまだ駆け出しだった人も多く、「いま見ると」豪華キャスト、つまり製作陣の先見の明みたいなところも大いにあるのでしょう。

主要キャストのなかで芸歴が長いのは、まず神木くん。なんせ2歳から芸歴スタートなのでもはや大ベテラン、わたしは「サマーウォーズ(2009)」の声優として初めて知った記憶があります。それから松岡茉優さんも結構長め、吹奏楽部部長役の大後寿々花さんも子役スタートなので長め、意外なところでは「おっまた〜」の前野朋哉さんもまず年齢からしてキャスト内最年長の86年生まれでベテランでした。

対して本作が映画デビューとなる人も複数いますが、なかでも今をときめく東出くんと山本美月さん、意外にデビュー作です。年齢的には90年代前半組が多いなか、前野さんに続いて東出くんが88年生まれと、キャスト内年長組に入ります。まあ年齢関係なく非常に大人びた人なので、初登場シーンでは制服姿の東出くんを見て「ファッ?」となってしまいましたけど(笑)、じつにいいキャラクターでした。同じクラスにいたら依存してしまいそうな落ち着きが魅力です。

ひとつ個人的に特筆したいのは朝ドラ「あまちゃん」チームの多さ。まずはなんといっても橋本愛さん。この翌年に「あまちゃん」で能年玲奈さんとともに一気にブレイクすることになります。松岡茉優さんも主要キャストのひとり(ブレイクはもう少し後かと思いますが)。次クール「ごちそうさん」で主役に抜擢される東出くんもじつはさりげなく回想パートに出ています(それでいうと有村架純さんも回想パートのメインキャストなので、「あまちゃん」ほんとすごいんですよね〜)。調べてみたところ「パーマ」こと落合モトキさんや、最年長の前野さんも端役で出演していました。朝ドラファン的な楽しみ方もできる映画です。

ちなみにわたしこのなかではずば抜けて松岡茉優さんが好きなんですけど、本作の彼女は「松岡茉優みたいなこの子好きだわ〜」と見ていて、いや本当に松岡茉優じゃんと知ったのはエンドロールでした(笑) 好きっぷりが(ある意味)裏付けされた瞬間です。同じ顔なのになにかちょっと「別人」と思わされてしまうのは、見事に憑依する彼女の役者スキル的なところにもあるのかもしれません。こーいうイヤミのある役、うまいっすなあ。

書きたいことはいっぱいあるのですが

鑑賞ノートも真っ黒になってしまいまして。しかしそれを全部書いていくのも少々アレなので抜粋して(散々語り尽くされてるあたりは省き気味で)いくつか…!

前田×かすみ(神木隆之介×橋本愛

このふたりよかったですねー。「鉄男(1989/もちろん未見…笑)リバイバル上映でのまさかの遭遇と、束の間のときめき、精一杯の会話を終えて別れてから飲み物をゴキュゴキュと飲み干す前田の愛らしさ。かすみもただでさえ美少女なのに、これ休日の私服姿として罪深い完璧さですよね(笑) まあ、のちの衝撃パーマ事件でデート着だとわかっちゃうわけですけど。

深読みをひとつ。パーマ事件のシーンで「ケンカして飛び込むように映画館へ入った。観た映画のことはよく覚えてない」とかすみが供述しますが、最近観たということもあって「十二人の怒れる男(1957)」に出てくるのと全く同じエピソードだな、オマージュなんじゃないかな?なんて思いました。少年の身に起きたことをいろんな視点から考える、という意味でも通じるところが。

ただ、インタビューによると吉田大八監督はあまり「映画マニア兼監督」的な作り方はしていないようなので、深読みに過ぎない可能性大。

エルザの大聖堂への行列

クライマックスの屋上シーンにおける、ワーグナーの「エルザの大聖堂への行列」。正直(現役の吹奏楽人として)吹奏楽部描写に関しては特に注目も期待もせず観ていただけに、こう繋がってくるか!とたいそう驚きました。これなかなかシブい選曲だと思いますし、名曲「エルザ」をバックにした名シーンの誕生というのは純粋に嬉しいものがありました。演奏がさほど上手くない(並の高校生レベル)のもまたよいのです。最後のロングトーンでピッチが上ずっちゃう感じとか超リアル。上手な演奏が聴きたい方はこちらなどをどうぞ。

ブラスの祭典2

ブラスの祭典2

これに関しても歌劇「ローエングリン」と照らし合わせて深読みのしがいがある系なのですけど、やはり監督的には単純に曲が好きだったというだけだそうで。インタビューによるとテレビで吹奏楽部の演奏を観たのがきっかけらしく、「笑ってコラえて!」の「吹奏楽の旅」シリーズかな?と調べてみたら2010年の同シリーズで「エルザ」を取り上げている学校が出ていたので恐らくこれを観たのでしょうね。えーと、鹿児島情報高校吹奏楽部さんですね、こちらが「桐島」の名作たる所以を決定づけた!といっても過言ではありません、ありがとう!

にしても、大後寿々花さん演じる吹奏楽部部長、すごい、すごいリアルな気がする…。中学のときの同学年の部長もサックスであんな感じだったな…。「響け!ユーフォニアム」一期でも部長はサックスだったし、サックス女子にはなぜか部長感があります。そういえば「ユーフォ」、台詞に登場しますね(そのあと出てくる音はどう聴いてもユーフォじゃないけど)。「スウィングガールズ(2004)」ではゲロ吐かれたりして、不遇ながら何気に登場頻度は高い楽器なんだよな…笑

ヒロキ×前田(東出昌大×神木隆之介

先にも書いたとおりこの東出くんがほんと好きなキャラなんですけども。いますよね、こういう、カースト上位なのに人当たりのいい、つい好きになっちゃう系同性。レンズフードを渡しに戻ってからの一連の会話、夕暮れ時が綺麗だとされる屋上でのまさにクライマックス級に美しい夕暮れ、ものすごい綺麗に描かれた「レンズ」、穏やかな前田と、崩れていくヒロキ。いいなあ。ただ、8ミリのファインダーを覗いて「ほんとだ、汚い」っていうのはそりゃ勘違いだよヒロキ(笑)

ふと思ったことですが、邦画洋画問わず青春群像劇には「進路調査の紙」がアイテムとして頻用されますね。「ちはやふる -結び-(2018)」にも出てきたし、あれは「アメリカン・ティーン(2008)」だったか、そのへんにも出てきました。人生の岐路に立たされた高校生、というのはつくづく映画にうってつけの題材なんですね。

聴くと楽しいリンク集

結局だいぶ黒くなりました。ついついいくらでも書いてしまうなあ。さて、いつも通り今回もフェイバリット評論家ライムスター宇多丸さんや町山智浩さんの評を、いつもよりだいぶ多く聴きました(だって、なんかいっぱいあるから…)。どれもめちゃくちゃ面白かったのでぜひご一緒にお楽しみください。特に宇多丸さんと町山さんらがお酒飲みながら語らってるやつ、ヒートアップ感がたいそう楽しくて聴きながらげらげら笑ってしまいました。「映画秘宝をトモヒロが落とす」のくだりとか最高(笑)


というわけで、きわめて遅まきながら「桐島旋風」に乗り、非常に楽しかったです。

(2018年155本目)

アラビアのロレンス(1962)

職場の人に「映像が綺麗だよ」とおすすめされたので、意を決して名作&大作チャレンジ。休憩があるのをいいことに、2日に分けて鑑賞しました。「おしゃれ泥棒(1966)」にも出ていたピーター・オトゥールが主演。実在のイギリス陸軍将校トマス・エドワード・ロレンスを題材にした作品。

プロローグ

1935年、イギリス。バイクに乗った男がおもむろに走り出すも、人を避けようとして転倒、死亡する。葬儀には大勢の人が参列し、銅像も作られた。しかし皆一様に「彼のことはよく知らない」と言う。彼の名はT・E・ロレンス。遡ること20年、イギリス軍のエジプト基地から物語は始まる。

いきなりアラビアじゃない意外性

砂漠でラクダでターバン、みたいなものを想像していたら、どう見てもアラビアじゃなさそうなところで男がバイク走らせてて、しかもすぐ死ぬ、っていう。えええ〜。いわば「市民ケーン(1941)」的なオープニングですね。ていうかなるほど、ロレンスってイギリス人なんだ…。どういう話なんだ…?

先入観からなんとなーく本作に抵抗があるっていう人でも、この意外な始まり方で逆に入り込みやすいかもしれません。アラビアのロレンスというより「アラビアでのロレンス」的な物語です。

ざっくりあらすじ&感想

所属しているイギリス陸軍ではなんかどうも収まりどころのない変人ロレンス。いやいや、なんかおかしな男だけどじつは学もあるし、ここはいっちょ異国にでも送り込んでみたらいい働きするかもしれませんよ!ということでアラビアの砂漠に放り出されます。すると上司の読み通り、いやむしろそれ以上に〝しっくり〟きてしまうロレンス。ラクダも上手に乗れたし、暑さにも強いし、アラブの人たちともウマが合う気がするし、ここが私のアナザースカイなのでは!!と俄然大活躍。アラブ人からもイギリス軍からも一目置かれる功績をあげます。休憩!

一旦エジプトの基地へ戻って装備を強化してから、また後半も大活躍予定のロレンス。が、上り詰めた人間には堕落がつきもの。一躍ヒーローになった金髪のイギリス人がいつまでもその座にとどまるというのは簡単なことではなく、ロレンスの場合もやはり次第にほつれが生じ、闇堕ちしていきます。そして最終的にはアラビアからもイギリス軍からも居場所を失い、憔悴しきった顔でアラビアを後にするのでした。THE END。

ざっくり書くとこんな感じ、でしょうか。ロレンスが関わってるのは「オスマン帝国からのアラブ独立闘争」ということになるのですけど、とにかくわたし世界情勢とかそういったものに学生時代からこのかたとことん興味がなかった人なので、映画を観て初めて関心を持ちつつも理解はまったく追いついていないという状態です。でもとてもおもしろく鑑賞しました。

完全版227分ということで、長いのは間違いないです。んでもって前述の通り予備知識も何もないのでしばらくは何がどうなるのか全然わからないのですが、そのうちなんとなくわかってきて「ロレンス、こいつスゲーんだな?!」ってなります。序盤、ハウェイタットと合流するところで「さっき仲間が増えるって言ってたのこれのことか!すげえな!」みたいになります。

白い肌の英雄エル・オレンスに黒い肌の魅力的な戦友アリ、壮大な砂漠の映像美、砂漠を制するものがアラビアを制す!という命がけの砂漠横断、圧倒的な数のラクダや馬、などなど見どころ沢山の前半。わかってくるととても痛快で楽しいです。寝るつもりだったけど休憩またいで後半も観ちゃおうかな?と意志がゆらぐ程度には楽しいです。

しかし後半。これまで「この人は何かやってくれそう」「この人は英雄だ」と思って見ていたロレンスの優しい顔が、徐々に情けない泣き顔に見えてきてしまいます。英雄として見ていたいのに! 英雄として見れなくなってくる! きわめつけは例の「暴行」シーンと、そのあと陸軍基地に帰ってきたときの佇まいですね。なかなか戸惑う光景です。この戸惑い案件に関しては、何も知らずに観た方が物語に集中できて、かつ後から「ああ!」となれていいかなと思います。

わりと胸糞エンドではあるんですが、急降下ではなく長尺でしっかり描いていること、「バイク」をうまく使って作品をきれいにパッケージングしていること、非常にスケールの大きな話であることなどから(ロレンスなど点である)、そこまで胸糞ッ!という感じではなかったです。「ほう…!」ぐらいの感じ。ただし無茶を言うならロレンスはせっかく巡り逢えたアナザースカイでそのまま幸せに暮らしてほしかったなあと思っちゃうのでそっちの世界線で誰か何か作ってほしいです(笑)

意を決して鑑賞した感想としては、難しい部分も多かったけれど徐々にのめり込んでいけるような面白さがあり、ロレンスに良くも悪くも主人公としての魅力があり、どこでもドアでアラビアの砂漠に放り出されたような映画体験ができ、砂漠の恐ろしさと美しさがこれでもかというほど表現されており、などなど、つまりとてもよかったです。だいぶ変わった味わいの作品ではありましたが、観てよかったと思えました。また再上映してくれたら、ぜひとも映画館での前方で観てみたいです。

加えて、お馴染み町山さんの映画塾宇多丸さんのシネマハスラーなど(いずれもYouTubeへのリンク)を聴くと、観て感じた以上にすごい作品なのだな〜〜という学びがあるので併せておすすめです。このおふたりの映画解説はわたしのなかで非常に大切な副読本的存在となっております。

(2018年154本目)