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映画感想「山歌」「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ」「アイヌモシㇼ」|涼みがてらのチュプキ7月前半鑑賞メモ

だるい。ねむい。クーラーでよく冷えた布団と枕の間に腕を突っ込みながらうだうだしていた日曜日。こんなことではいけないと思い直し、用もなくチュプキへ。結局3本観て帰ってきました。ざっくりと、超ざっくりとメモ書き。文体もメモ風にしよう(楽だから)。


映画「山歌」「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ」「アイヌモシㇼ」ポスター
映画「山歌」「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ」「アイヌモシㇼ」ポスター


1本目は笹谷遼平監督の『山歌(2022)。「かつて日本の山々に実在した流浪の民山窩(サンカ)」を題材にした劇映画。いち早く他の劇場でご覧になった視覚障碍のある方が、チュプキでの音声ガイド付き上映をTwitterで希望されていたことから実現したのだそう。そのあたりのことは、こちらのnoteに詳しい(そういえば「唇を引き結ぶ」は音声ガイドですごくよく使われる表現だなあと思った)。

わたしはと言えば、なんとなく森林浴っぽい映画だし、ただでさえ慢性的に眠いので寝てしまうのではと思いながらも「クーラーの効いたシアター内で涼みたい」という超絶不純な動機によりふらふらと席についた。結果、森林浴っぽい映画なのは間違いないのだが意外と眠気に襲われることはなく、緑深くて川せせらいでいて、最高の避暑映画だった。

特にたまらなかったのが、川辺で魚を焼いて食べるシーン。スクリーンから塩味が伝わってきた。身体が塩を求めている。そう、これは熱中症。たまらん。

あいにくチュプキ周辺で手っ取り早く焼き魚を食べられる店は思い当たらなかったため、弁当屋白身魚のフライ)と焼き鳥屋(串焼き)を天秤にかけた末、チュプキ隣の焼き鳥屋で焼き鳥丼を食べた。待望のステーキをほおばりながらおれは泣いた。



突然『ミノタウロスの皿』になったのは一応わけがあって、次に観た『チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ(2021)はちょっとそんな、ぎょっとする儀式のお話。北村皆雄監督が、1986年に撮影していたアイヌの「イオマンテ」記録映像を35年越しでドキュメンタリー映画化したという代物。

そもそも「イオマンテ」を知っている人なら心の準備があってそこまでぎょっとしないのかもしれないが、それでいうと『ゴールデンカムイ』読者の方はおそらくよくご存知なのだと思うが、わたしはなんとなくその響き聴いたことあるな〜くらいの、アイヌの話であろうことくらいしか察せないリテラシーでの鑑賞だった。しかも5分ほど遅刻して冒頭を観れていない(焼き鳥丼をほおばっていたので)。

まあしばらくは、とにかくよく祈っているなと。しかもアイヌ語でおこなわれるその祈りの和訳(ちなみに「ゴールデンカムイアイヌ語監修の中川裕さんが全訳・監修とのこと)がなかなかどうも、言い訳がましく見えるのが可笑しくて。「これこれこういうわけなもんで神様ちょっとそのへん察していただいて」みたいな文言、それ、要る?!とか思いながら、かつ少しうとうとしながら観ていて。

で、だいぶ終盤になってから「あれ、このナレーション、キツネ視点だ」と気付いて、気付いた頃には遅かった。つまり、待望のステーキをほおばりながらおれは泣いた。えっ、これはだめだろう、と非常に戸惑った。


そしてそのまま続けた福永壮志監督作品アイヌモシㇼ(2020)。今月のチュプキはちょっとしたアイヌ特集になっている。なお本作はもう何度目かになるアンコール上映だが、わたしは初見。前々から観たくはあったので、観れてよかった。というか、この『チロンヌㇷ゚〜』からの流れで観れたのが本当によかった。なぜなら『アイヌモシㇼ』はアイヌに生まれた新世代の若者が「イオマンテ」にドン引きする話だからだ。

このドン引き感、わたしのアイヌリテラシーで『アイヌモシㇼ』だけを観たらそこまで衝撃は強くなかったかもしれない。「イオマンテって、聞いたことあるだろ?」と訊かれた主人公の少年カンタはぎょっとする。彼がイオマンテを知っている前提で物語は進む。しかしわたしは2時間くらい前まで知らなかった。『チロンヌㇷ゚〜』を観たおかげでカンタと同じくぎょっとできたが、もしいきなり『アイヌモシㇼ』だったらぽかんとしたはず。

再現映像的な意味でのおもしろさも、断然この『チロンヌㇷ゚〜』→『アイヌモシㇼ』の順番でこそ得られるものがある。クリアファイルの中、カタカナで書かれた祈祷文の皮肉もよい。

わたくし基本スタンスとしては「ドン引き派」ではあるのだが、スーパーで買った肉をろくに感謝もなく食べることと、めいっぱい感謝して儀式的に動物を殺すこと、どっちのほうが、なあ、どうよ?? と問われると……。なんとも言えない気持ちになる。確かにな。待望のステーキ問題よ。

余談。伝統に抗う少年カントが序盤、アンプに繋いだZO-3ギターで「Johnny B. Goode」をバンド演奏するシーンがある。かつてZO-3専門サイトを運営し、無類の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』好きであるわたし的に、この掴みは最強であった。

以上、チュプキ2022年7月前半プログラム(3/5本)鑑賞メモ、これにて終了。

(2022年114〜116本目/劇場鑑賞)

はい、ということでこれにて終了いたします。メモ垂れ流しにお付き合いいただきありがとうございました。7/15(金)までこのラインナップで上映しておりますので、ぜひ涼みに行ってみてください。

また、わたしも週末スタッフくらいの感じでお手伝いしているシネマ・チュプキ・タバタでは現在クラウドファンディングを実施中です。今の時代これがないと上映できない作品ばっかりなんです……という国際規格の高額映写システム「DCP」の導入と、チュプキ製作のドキュメンタリー映画こころの通訳者たち』公開拡大のため、目標額600万円でスタートしました。 様々なリターン(吹き替え声優チャレンジコースなんていうものまで)ご用意しておりますので、ご一読・ご協力いただければ幸いです。

2022年6月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

2022年6月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

2022年6月に観た映画やいろんなことを振り返ります。リンク先は感想記事、並びは鑑賞順です。公開から3ヶ月くらいまでのタイミングで鑑賞したものを新作、それ以外を準新作/旧作としています。先月分の振り返りはこちら。



今月は結構新作を観ているのと、劇場鑑賞も何気に15本と多めです。本当にもう新作の絶えない日々と言いますか、観るもの観るもの一定水準以上に良くて、だけど端からどんどん忘れていって、もっと一作にじっくり向き合いたい気もしてしまいますが仕方ないのでしょうね。

そんななか、今月ひときわ大きい存在だったのは『マイスモールランド』かなと思います。

映画でこんなに自分が動かされたことってないかもしれなくて、自分ですらこんなに動かされるんだったら、けっこう真面目な話、映画で世界は変わるぞと。そんな作品でした。未見の方は、これはどうかぜひ、できれば『FLEE フリー』とあわせてご覧ください。日本人にマストな映画です。

映画以外の部分も含めて『春原さんのうた(2021)』と同じようなベクトルで入れ込んでしまったのは『まっぱだか』。チュプキでの舞台挨拶2days、楽しかったです、すごく。神戸・元町映画館に行きたい!

『春原さんのうた』といえば昨晩「キノコヤ」さんへ久しぶりに行ってきました。キノコヤさん製作・黒川幸則監督作品『にわのすなば GARDEN SANDBOX』がマルセイユ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門にノミネートされたとのことで、渡仏のためお店は今日から2週間お休み! すごいなあ。ポレポレさんでの上映楽しみにしています。

そのほか、新作はどれもその時々で夢中になりました。良作傑作名作だらけでした。準新作のほうに入ってしまった『誰かの花』もめちゃくちゃ面白かった。細田守監督の作品をあらためて総ざらいできたのもいい機会でした。

さて、そんなわけで2022年上半期が終了。鑑賞総数は、やや曖昧なカウントですが112本、うち劇場鑑賞が74本。下半期もうれしい悲鳴を上げ続けられますように!