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主に映画の感想文を書いています/NY旅ブログも連載中

素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店(2015)|生涯一度の旅をご提案

f:id:threefivethree:20190116184507p:plain マイスイート坂本真綾さんのFC会報で最近始まった、自身が声をあてた映画のレコメンドコーナー。「ラブストーリーが苦手でも」というテーマのもとに少しファンタジー要素を含んだラブストーリーが三本ピックアップされていて、二本の韓国映画ビューティー・インサイド」「初恋のアルバム 〜人魚姫のいた島〜」に続いての三本目が、オランダ映画の本作でした。

この映画はざっくり言うと、自殺手助けサービスに登録して近日中に死ぬ予定の男女がうっかり恋に落ちる物語。やけに長い邦題のせいもあってそんなに期待してなかったんですが、すごくおもしろかったです。

あらすじ

人生もう未練ないわ〜さっさと死にたいわ〜とかねてから思っていた大富豪のヤーコブが、唯一の身寄りである母の死を機に「よっしゃ気兼ねなく死んだるで!」とルンルンで首吊りセットを持ち出すところから始まります。しかし使用人だらけの大邸宅ではそう簡単に死ねません。

なかなか死ねず辟易とするヤーコブでしたが、ひょんなことから『自死の手助けをしてくれる代理店』の存在を知り、早速出向いて「死にたいんだ!今すぐ!」と目を輝かせます。ヤーコブが選んだのは、いつ死が訪れるかわからない『サプライズ』のプラン。

わくわくしながらオプションの棺を選んでいると、同じくサプライズで契約したという若い女性客に出会います。わずかな談笑ののち「良い旅を」と言って別れたふたりはそれっきり、のはずでしたが…。ってなお話。

読めない展開、サプライズ。

普通に考えて、死のうと思ってたけど運命の人に出会っちゃって光が射して、みたいな話だと思うじゃないですか。まあ実際そうなんですけどこれが非常に侮れなくて、100分ちょいのコンパクトな尺に何度もサプライズを盛り込んできやがるのでした。

別にそんな手の込んだ展開じゃないんですよ。そういえば確かに言ってたわ…くらいの、むしろ最初からなにも隠してないんですが、でも「えーーっ!」てなっちゃう気持ちよさがあって、それをぜひ味わっていただきたいなあという感じの映画です。

ネタバレない範囲で言うと、近日中に死ぬ=サプライズが実行されるということを知った上で過ごす数日間の輝きと謎の高揚感がすごくて。これも別にさほど特別な演出はなくて、ただ代理店の人に「計画には入ってるので近日中にちゃんと旅立てますよ」って言われてるだけなのになんだろうこの地に足つかない感覚…!っていう。「今日が人生最後の日だったら何をしたい?」なんていうベタベタな台詞がしっかり響いてくる不思議。

それから、ヤーコブが出会った運命の人アンネの魅力! 最初はそんな華があるわけでもなさそうだったのに、どんどん(あらゆるベクトルに)魅力全開放していく感じが痛快で、映画のエンタメ度を俄然上げてくれています。こんな人に出会ってしまったらそりゃ生きたくもなるだろう。

ちょっと奇遇だなと思ったこととして、このあいだ鑑賞した「チャンス」のことをどことなく連想(大富豪、大邸宅、上品な主人公、庭師etc...)しながら観ていたんですけど、こちらの記事によれば監督はまさに「チャンス」のピーター・セラーズなどをイメージしてこの脚本を書いたのだそうです。 履修してよかった午前十時。

そんなわけでとてもよい映画でした。万人におすすめできます。

(2019年5本目)

今回はTSUTAYA DISCASでレンタルしましたが、PrimeVideo等でも手軽に観れます。日本版のポスタービジュアルはだいぶ雰囲気が違いますね。

悪い種子(1956)|その少女、サイコパスにつき

f:id:threefivethree:20190115185005j:plain 久々に痛快な胸糞映画を観ました。「悪い種子(たね)」、原題は「THE BAD SEED」。

職場の人が「そんなに古い映画は観ないけどひとつ印象深い白黒映画がある」とおすすめしてくれた作品。最高の映画と出会わせてくれたことに感謝ですが、なんだってこんなブッ飛んだ作品を観たのでしょうあの人。

あらすじ

クリスティーンは悩んでいた。8歳の愛娘ローダはとてもいい子に育っているが、いまひとつ子供らしい純朴さが足りないように思うのだ。

ある日、学校の遠足でローダのクラスメイトが事故死したというショッキングなニュースが入る。クリスティーンの心配に反し、遠足から帰ってきたローダはあっけらかんとしていた。しかし徐々に、事故とローダとの関係性が明らかになっていく。

この映画、ネタバレ禁止につき

ざっくり言うと、サイコパス少女のお話

一家の主人が一ヶ月の出張に出るところから物語は始まり、留守を預かった妻クリスティーンと娘ローダの女二人、彼女らを取り巻く近隣の人たちによって話は進んでいきます。8歳のローダはおさげが可愛い活発な少女。この子がまあとんでもねえサイコパスだったっていう映画なんですけども。やーもう、ほんと怖い。原作小説の作者が出版一ヶ月後に死んでるのもめっちゃ怖い。

スリラーやサスペンスへの耐性は比較的ついてきた気でいたんですが、これは久々に背筋が凍り、指の間から画面を見ました。といっても何か心臓に悪い映像が出てくるわけではないのです。徐々に見えてくる真相、回収される伏線、直接見せられることはなく想像力に委ねられた衝撃的展開の数々、最後まで天真爛漫な少女、そして“悪い種子”とは?? いろんな要素に追い詰められてただただ怖くなってきちゃうのです。

主人公一家のリビングを中心に展開していくワンシチュエーションものな本作。いちばん動きがあるのはドアでしょうか。次から次へといろんな人が出入りするこの感じがすごく舞台作品的だなと思ったら、もともとブロードウェイで上演されていた舞台を同じキャストで映画化したものなんだそうで、大いに納得。ヘイズコード対策で付け加えられたというラストの妙なカーテンコールも、舞台と思えばありかな。

伏線回収と書きましたが、130分と比較的長尺なわりに無駄なシーンのない映画です。例えば冒頭、いつもよくしてくれる大家のおばちゃんの前でタップを踊ってみせたローダは、「アステアみたい」と褒められます。もう伏線は張り始められています。「ジンジャーじゃないんだ」なんて思っている場合ではないのです。よくできてます。

「情婦(1957)」よろしく最後に「ネタバレ配慮してくださいね」のテロップが出るので(情婦のほうが一年後ですけどね。この頃こういうの流行ってたんでしょうか)あまり内容には触れないこととして…、気になりましたらぜひご覧くださいませ。とんでもねえ映画だな?!となること必至でございます。

(2019年4本目)

悪い種子 [DVD]

悪い種子 [DVD]

TSUTAYA DISCASでレンタルしました。これは買ってもいいかも…。胸糞映画、好き…。

そういえば同年公開の胸糞映画で、石原裕次郎デビュー作の「狂った果実」なんてのがありますが。狂った果実、悪い種子。めっちゃ語呂よくないですか。