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主に映画の感想文を書いています

2022年の鑑賞記録

2022年3月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

24本。うち19本を映画館で観ています。ぎょ、そんなに行ったのか。ただ今回はBunkamuraル・シネマの濱口竜介監督特集上映で丸2日こもる(一気に7本鑑賞)、みたいなこともやっているのでイコール足を運んだ回数ではないんですけども。しかしこの調子だと今年…

映画「ひまわり(1970)」感想|ウクライナで撮影された、図らずも再び厭戦を伝える名作。

風にそよぐ一面のひまわり畑から始まりそして終わるこの映画、2020年には公開50周年を記念したHDレストア版が公開されています。しかし今再び注目を集めているそうで、その理由は、この印象的な「ひまわり畑」がウクライナで撮影されているということ。ひま…

映画「ベルファスト(2021)」感想|ポップで温かい、血が通った“最新型”の白黒映画。

先日のアカデミー賞(では7部門ノミネート、うち脚本賞を監督のケネス・ブラナーが受賞した映画『ベルファスト』を観てきました。なんか地味な白黒映画っぽいなーといまひとつ食指が動かなかったのですが、いざ観てみたらすっごいよかったです。はい、まあ大…

映画「春原さんのうた(2021)」感想|たった一首の短歌が原作! 風通しのいい映画

シネマ・チュプキにて『春原さんのうた』を観てきました。この映画、たった一首の「短歌」が原作になっています。エンドロールで「原作短歌」とクレジットされるまで知らなくてびっくりしたのですけど、でもなるほど短歌という31文字の宇宙を広げた映画と言…

映画「14歳の栞(2021)」感想|とある中学校の「2年6組」35人全員に密着したドキュメンタリー

「とある中学校の3学期、『2年6組』35人全員に密着」という公式の謳い文句だけで、とてつもないドキュメンタリーであることが伝わると思います。この時代にそんなことが可能なのか?? 実際問題、可能にしてしまったのですからすごいです。なお本作、その性…

濱口竜介監督作品「親密さ(2012)」と中編3本の感想|“言葉と乗り物”にますます浸る

先週に引き続き、Bunkamuraル・シネマの企画上映「濱口竜介監督特集上映《言葉と乗り物》+『寝ても覚めても』特別上映」に昼から籠ってきました。今回観たのは『親密さ』『永遠に君を愛す』『不気味なものの肌に触れる』『天国はまだ遠い』の4本です。日本…

映画「ナイトメア・アリー(2021)」感想|好きな監督×好きな俳優=好きとは限らない

観たい新作映画が大渋滞を起こすなか、ギレルモ・デル・トロ監督の最新作『ナイトメア・アリー』を観てきました。ルーニー・マーラとケイト・ブランシェットの『キャロル』コンビがデルトロ映画に出演!という超ビッグニュースに湧き立って以来楽しみにして…

「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜(2011)」感想|完全に大人向けのアニメと言っていい

先日『のび太の宇宙小戦争 2021』で四半世紀ぶりにドラ映画を観たことによりわたしのドラ好きがほのかに再燃してきたため(あと「わさびドラ」の食わず嫌いをあっさり克服したため)、おすすめしてもらった『映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団』を観まし…

映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川1区」感想|このタイトルで、じつは家族の物語。

大島新監督の連作ドキュメンタリー『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』を観てきました。これが、まいった。勝手に想像していた「政治ドキュメンタリー」とは全然違って、まずとにかく「面白い」し、どういうわけかめちゃくちゃ「泣ける」し、なん…

濱口竜介監督作品「ハッピーアワー」「PASSION」「何食わぬ顔」感想|渦巻く本音の会話劇たち

日本映画初となるアカデミー賞作品賞ノミネートにより近作『ドライブ・マイ・カー』が世界的に注目を集めている濱口竜介監督。その初期作品『PASSION』『何食わぬ顔』と、317分尺のミニマムな超大作『ハッピーアワー』の感想について、鑑賞順に書いていきま…

映画「SING/シング:ネクストステージ(2021)」吹替版感想|坂本真綾と稲葉浩志の世界線が交わっただけで満足

前作に引き続きマイスイート坂本真綾さんがメインキャラクター・ロジータの吹き替えをしておりますが、彼女の声優仕事を追っているわけではないわたしとしては(少なくとも吹き替え版は)スルーの可能性も高い作品でした。ただ、事件が起きます。「稲葉浩志…

映画「ウェディング・ハイ(2022)」感想|1時間押しの披露宴を取り戻せ! プランナーさんの苦悩を描くコメディ

脚本バカリズム×監督大九​明子というドリームプロジェクトみたいな映画『ウェディング・ハイ』を観てきました。バカリズムさんは『架空OL日記』『地獄の花園』その他テレビドラマなど数々の脚本を手掛けている、非常にわたしのツボなコメディアンです。大九​…

映画「浜の朝日の嘘つきどもと(2021)」感想|ドラマ版から観るのがおすすめ。あって当然ではない、映画館へのラブレター。

3月11日、何を観ようかと悩んだ末に『浜の朝日の嘘つきどもと』を選びました。「東日本大震災 映画」で検索したら出てきて、あ、これ観そびれてたけどそうだったんだ、って感じでした。福島県南相馬市に実在する映画館「朝日座」を舞台にしたフィクションで…

映画「ナイト・オン・ザ・プラネット(1992)」感想|世界5都市、同じ瞬間に客を拾ったタクシー車内の一期一会な物語。

本作は、松居大悟監督による映画『ちょっと思い出しただけ』に深く関わりのある作品です。主題歌をつとめたロックバンド・クリープハイプの尾崎世界観さんは、かつて本作に触発されバンドを始めたのだそう。そしてそんな大切な映画体験を『ナイトオンザプラ…

「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」感想|図らずも世界情勢を反映してしまった数奇な作品

『宇宙小戦争』と書いて『リトルスターウォーズ』と読みます。リメイクである本作のオリジナルは1985年発表のコミックおよび映画。わたしにとってはSF的メカニックデザインや特撮の原体験となった作品かもしれません(おそらく『宇宙開拓史』や『鉄人兵団』…

2022年2月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

11本。2月は映画を観る余裕がなくて寂しい本数となってはいるものの、粒揃いではありました。まずは! 何といってもこれですね。予告編で流れるたびなんか気まずい、という自意識過剰な数ヶ月間を経てついに公開となった、他人とは思えない作品『355』です。…

3.11関連ドキュメンタリー「きこえなかったあの日」「二重のまち/交代地のうたを編む」感想

東京・田端のユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」3月前半プログラムから、いずれも東日本大震災に関連するドキュメンタリー『きこえなかったあの日』『二重のまち/交代地のうたを編む』の2本を観てきました。

映画「海辺の彼女たち(2021)」感想|日本で不法就労するベトナム人技能実習生たちの境遇に絶句

本作が扱うのは「日本で働くベトナム人技能実習生たち」の実状。それも「失踪して不法就労に従事する実習生」たちの実状です。非常にドキュメンタリー的な質感とテーマの作品であるため、最初のうちは「ドキュメンタリーなのかな?」と思いながら観ていたの…

映画「さがす(2022)」感想|ちょっと尋常でなく面白い映画

衝撃の前作『岬の兄妹』が記憶に残り続ける片山慎三監督の最新作かつ商業映画デビュー作『さがす』を観てきました。「あの」片山監督が今度は佐藤二朗さんを主演に撮るらしいぞ、と早い段階から気にはなりまくっていた作品だったのですが、ようやっと観れま…

映画「愛なのに(2022)」感想|今泉力哉×城定秀夫コンビによる、倫理観ぐちゃぐちゃ群像劇。

『愛がなんだ』『街の上で』などの今泉力哉さんが脚本を書き、『アルプススタンドのはしの方』などの城定秀夫さんが監督を務めた映画『愛なのに』を観てきました。「今泉力哉×城定秀夫によるR15+のラブストーリー」というこの激アツなコラボは「L/R15」と銘…

映画「ウエスト・サイド・ストーリー(2021)」感想|ニューヨーク再開発という時代背景に注目する

観てから2週間ぐらい経ってしまいました。何が。スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』が。やっぱりなんか、ビッグタイトルすぎて億劫になりますね。もちろんいろいろ思ったこと書きたいことはあるんですが、ここはちょっとピンポイントに、や…

映画「Ribbon(2022)」感想|コロナ禍の美大生と無意義な日々を描く、しかし前向きな作品。

“のん”さんが監督・脚本・主演etc...を務めた映画『Ribbon』を観てきました。かの朝ドラ『あまちゃん』以降、のんさんのことは活動を熱心に追うわけではないものの常に身近な感覚で気にしていました。そんなのんさんが映画監督デビューということでそれは当…

映画「ちょっと思い出しただけ(2022)」感想|映画館で飛び交う感想に聞き耳。ちょっと思い出して帰ろう。

『くれなずめ』などの松居大悟監督最新作『ちょっと思い出しただけ』を観てきました。主演は伊藤沙莉さんと池松壮亮さん。気になる新作の多いなか、宇多丸さんのムービーウォッチメンに当たっていたので優先順位上げめで行ってきました。本作はロックバンド…

映画「ジョゼと虎と魚たち(2020)」感想|口の悪い清原果耶さんは声優でも絶品

長編アニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』をシネマ・チュプキにて日本語字幕・音声ガイド付きで観てきました。『ジョゼ虎』のタイトルは知っているも、観るのは関連作含め今回が初めて。なんなら「仲間たち」だと思ってたくらいです(今でも打ち間違え…

映画「帆花(2021)」感想|生後すぐ“脳死に近い状態”と宣告された少女が小学校に上がるまでのドキュメンタリー

このドキュメンタリーは、生後すぐに「脳死に近い状態」と宣告された西村帆花さんと、彼女と共に暮らしてきた家族や周囲の人たちなどを捉えたものです。監督・國友勇吾さんは、密着取材を終えてから7年近い歳月をかけて本作を完成させたといいます。まず最初…

映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021)」感想|2回観てもなお戸惑う、怖い映画。

Netflix製作の映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を観ました。この映画、かなり地味なうえに、かなり先の読めない映画となっておりまして。仕事終わりの眠たい頭で、小さな画面で観るもんじゃなかった。映画館で観るべきだこれは。あまりの展開に困惑したので…

2022年1月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

映画は23本。まあその3分の1はスパイダーマンなんですけども。というわけで1月は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を楽しむために新旧スパイディの総履修をがんばりました。がむしゃらに課題をこなす!みたいな一気見ってすごく好きなんですよね。本…

映画「355(2022)」感想|353による最速でもない355レビュー

こんにちは、353です。『355』を観ました。私事ではございますが生誕35周年のスペシャル353イヤーにこの作品が公開されたこと、たいへん光栄に思います。っていうか宣伝を見るようになって以降「もしも愛せない作品だったらどうしよう」とかなり不安だったん…

「まちの本屋」「ようこそ革命シネマへ」ほか、22年1月後半シネマチュプキ鑑賞メモ

東京・田端のシネマ・チュプキ・タバタにて、1月後半のプログラムを滑り込みで4本ハシゴしてきました。『まちの本屋(2020)』『ようこそ革命シネマへ(2019)』『サマーフィルムにのって〈音声ガイド付〉(2020)』『映画大好きポンポさん〈音声ガイド付〉…

映画「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021)」感想|処理しきれない快感

タイトル、長っ。ということでわたしは「フレンチ指パッチン」と脳内で呼んでいた映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』を観てきました。公開日のレイトショーに行ったのですが、ウェス・アンダーソン監督の最新作と…