「傷物語 -こよみヴァンプ-」「ミツバチと私」のはなし。
まるでジャンル違うけど、どちらも「序盤30分くらい寝たけどすごいよかった」シリーズです。
▼TOHOシネマズ池袋にて『傷物語 -こよみヴァンプ-』。物語シリーズは『化物語』だけ観ていて、それ以降の展開は全く観ておらず。ただ、なんか気合いの入った劇場版っぽいし、何よりマイスイート坂本真綾さんが主演だし、かなり変な映画っぽいし、ということで導かれるように観てきました。
いやあ、まさかこんな、躊躇なく人体破壊の限りを尽くしたバトルシーンがハイライトの映画とは思わないじゃん。アニメの可能性ってすげえな。笑っちゃったよ。それでいてメロメロメロドラマなんだよ。坂本さん演じるキスショット、いいっすね。「形態」に応じた4オクターブの坂本真綾聴き比べコーナーも新鮮だった。坂本さんってあんまりテクニカルなタイプの声優じゃないと思っているから、ああいうの聴くとプロなんだなあと。
あと、わたしかつて戦場ヶ原さんに一目惚れして『化物語』観てたので羽川さんはアウトオブ眼中だったんですけど、そもそも自分の好みが変わったのかもしれないけど、今回はメガネの委員長、なんかグッときちゃった。母性に飛び込む阿良々木暦の気持ちがわかる。そのぶん「携帯食」のショックよ。
そのほか、最初から最後まで音楽がとてもよかったです。神前暁さんって名前はよく見るけどどれほどの方なのか存じ上げず、えっ、「もってけ!セーラーふく」と「God knows...」作った人なの?! リビングレジェンドじゃん…。ちなみにそう書くとなんかそういうゴリゴリのアニソンが出てくるのかと思われるかもですが、わたしが言う本作の「よかった」音楽は、どちらかというと鷺巣詩郎ラインのやつです。弱いんです、ああいうの。
めちゃめちゃアートなアニメなので、わけわかんねえのがお好きと自負されている方は是非ご覧ください。
▼新宿武蔵野館にて『ミツバチと私』。スペイン映画でミツバチで、となれば『ミツバチのささやき』を連想しないわけにはいかないやつですが、まあ遠くもないです。
主人公は、性自認に悩む8歳の子ども。「アイトール」という、その地域ではゴリゴリに男性的だという名前を与えられているけれど、自分は女の子だと思うし、絶対その名前では呼んでほしくない。妥協して「ココ」、本当は「ルシア」と呼んでほしい。性別なんて関係ないのよと「多様性」には寛容な思想の母親も、我が子の性自認にまでは気持ちの整理が追いつかず、周囲の目も気になるし……、とかそんな感じのお話。
なんかねえ、観ていて、本当のところ自分はどうだろうと考えさせられる映画でした。親の立場じゃなくて、主人公の立場で。わたしはシス男性でありそこに違和感はないのだけれど、男性ばかりの中にいるとあまり居心地が良くなく(特に、スーツを着たごく一般的な社会人男性が第一印象として「苦手」)、女性だらけの中に放り込まれているほうが遥かに気楽だったり。男物の服には全くときめかない(おしゃれにも興味が湧かない)けど、女物の服や素材には幼少期からものすごくときめきがあったり。多分、細かく分類していけば、各ツマミのパラメーターは全然フラットじゃないんだろうなと思うんすよね。観終わって最初に調べたのが「100均 ネイル」だったしさ。
そんなことが、どばっと溢れてくるような、性自認のみならず「本当の自分」についていろんな蓋を開けてみたくなるような映画でございました。序盤30分寝てたけど多分感じるべきことは感じられたはず。