353log

主に映画の感想文を書いています

アジアンドキュメンタリーズのパレスチナ関連作品とか、「ほつれる」「さよなら ほやマン」などのはなし。

▼アジアンドキュメンタリーズにて配信中の、パレスチナ関連のドキュメンタリーオスロ・ダイアリー』『医学生 ガザへ行く』を観ました。宇多丸さんとアジアンドキュメンタリーズ代表の伴野さんが春に対談本『ドキュメンタリーで知るせかい』を出版予定とのことで、これはその先行公開分にて紹介されていた作品です。

オスロ・ダイアリー』は「オスロ合意」の貴重な記録映像を使った内幕もの。宇多丸さんは「とにかく無類に『面白い』」と言っていたけれど、恥ずかしながらわたしはそもそも「オスロ合意」をよく知らなかったし、パレスチナ問題についてもしっかり知ろうとしてこなかったので、最初に観るものではなかった、というのが感想。ここで紹介されているような作品を何本か観た後で観た方が絶対に面白いのだろうと思いました。とはいえラビン首相の最期はあまりにも劇的だったし、どことなく『アイリッシュマン』みたいなスコセッシ映画みも感じたりはした。悲哀。

対する医学生 ガザへ行く』は、入門編としてものすごく、いい。イタリア人の医大生リカルドくんが、卒論に向けた留学先としてガザを選ぶ。ホームシックになりつつも、数ヶ月の滞在を終える頃には「ここが居場所だ!」くらいに馴染む。そんなある夜、ステイ先のすぐ近くに空爆があり——。これまず、ガザでの「日常」がとても生き生きと記録されていて、そこから地続きで起こる「空爆」の怖さがそのぶん非常に際立つ。「定点カメラ」が捉えたとある映像には思わず「あっ」と声が。あくまで我々と同じ「部外者」がガザを知っていく構成は、大変入りやすかったです。なお、登場する大学病院は、今はもう瓦礫と化しているそう。

いま『ガザ 素顔の日常』というドキュメンタリーが劇場公開されていますが、あちらは宣伝などから想像するよりもだいぶ凄惨な状況を伝えている作品で、単純に結構しんどいです。入口ということでは、この『医学生 ガザへ行く』、だいぶおすすめです。


▼一昨年のアトロクで散々話題になっていた、IMAXレーザーGT版の『NOPE/ノープ』をグランドシネマサンシャイン池袋で観ました。チェックしていたわけではなく、あれ?やってんじゃん!っていうラッキーな遭遇。グラシネのIMAX、実は一度も入ったことなかったためダブルで嬉しい。

感想としては、いやもう、すんませんでした、確かにおっしゃる通りこれが真のNOPEだと思います。映画を、まるで空を見るように、あんなにも「見上げる」体験ができるとは。見上げずともあの巨大な正方形が視界を埋め尽くす体験は、いわゆる「映画体験」の域を超えていた気がする。あとチンパンジー怖すぎて笑うしかなかった。機会があれば、ぜひお試しください。

それと、彼らが「一番搾り」飲んでることに気付きました。これもIMAXの大きな画面のおかげか。多分違う。


▼最近観たあれこれ。横浜シネマ・ジャック&ベティにて、なんでもいいから観よう〜って感じでゴーストワールド初鑑賞。スカヨハ若いなあ。お話は、わたしにはあまり刺さりませんでした。「場末の名画座で観る」感は、とてもフィットしてた。

配信で『#ミトヤマネ』。んー、これはちょっと、好きではない類のチープ。あんま映画観ない人が玉城ティナさん目当てで映画館来て、これに当たったら可哀想だなと思ってしまった。いや、なんだろう、冒頭の街頭インタビュー風映像で萎えてしまったところが大きいかも。テロップとか、もっと本物のテレビ研究して付けてはいかがですか…。これは違うけど、テレビから聞こえてくるアナウンサー(風)の声があまりにもアナウンサーとかけ離れてるやつとかも、わたし憎んでる。映画はこだわって作るくせに、テレビ舐めてるのはどうなのよ。

ディープフェイクの話なので、直前に観た『NOPE』のジョーダン・ピールが奇しくも重なってきたのは面白かった(劇中で言及されるオバマのフェイク動画はジョーダン・ピールが作ったもの)。あと、やはり直近に観ていた『春画先生』からの「安達祐実無双」も面白かった。謎の車描写とかも、好きではあった。大林宣彦ですよ、と言われて観ていたら楽しく笑っていたのかもしれない。インディーズみの強い作品に対する、わたしの偏見が強く出た。


▼配信で『ほつれる』。つい最近ムービーウォッチメンでやっていたような気がしたけど、もう配信で観れるんだなあ。こちらは映画としてとても好きな類でした。何より、こんなにもロマンスカーをしっかり登場させてくれた映画をわたしは知らない。

序盤、あれ、これは小田急新宿駅ロマンスカー乗り場では?という改札を門脇麦さん演じるヒロインが通過する。おお、よくこんなとこでロケできたな。するとそのまま青色のロマンスカーMSEに乗車する。スマホを見て指定席に向かうヒロイン、ニヤッとして逢瀬のお相手と合流する。そのまま箱根へ向かい、グランピング施設で一夜を過ごし、またMSEで新宿まで帰ってくる。んにゃー、ロマンスカーが美しい! 美しいよお! 半年ほど前まで町田に住み、ロマンスカーのヘビーユーザーかつ愛好家だったわたし的にはたまらん導入だったのでした。アナウンスで町田も聞こえるしね。


▼オンライン試写にて、遅ればせながら『さよなら ほやマン』。予告で「なんじゃこりゃ」と心がいきなり離れていた作品なのだけど、気付けばなんだか評判もいいし、思っていたような話ではないらしい(というか、別に何も想像はしていなかった。なんじゃこりゃ、と思っただけだ)。で、ようやく拝見したわけですがなるほどこれは、評判を呼ぶわけです。

ざっくり言ってしまえば東日本大震災ものであり、それ以上の前情報はいらないのかもしれません。一見好きになれなさそうな登場人物たちもみんなちょっとずつ好きになり、とあるお色気未満シーンの「失礼だろ!」にじーんときたり、一番ぐっときたのは「ババアだって、云々!(一応、伏せる)」のところかな。松金よね子さん、すばらしかった。あと、呉城久美さん(も、超すてき)がずっと食べてる「ほや」が美味そうなの。ほやってあんな大福みたいな食べ方するもんなの? 好きか苦手かわかんないけど、食べてみたいなあ。