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主に映画の感想文を書いています

アリ・アスター「ボーはおそれている」アトロク2緊急試写会のはなし。

先週、1月31日。ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催された「『ボーはおそれている』×TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』/公開直前!アフタートーク付き緊急試写会」へ参加してきました。キャパ約200のところ、800以上の応募があったと放送内で聞いたような気がするので、結構な倍率をかいくぐった感じかと思います。というかこれは心底当たりたかったので心底嬉しかった! ハピネットファントム・スタジオ様、ありがとうございました。

アフタートーク宇多丸さんと、長い映画史に間違いなく名を連ねることとなろうスーパーデザイナー大島依提亜さん! 宇垣美里さんも登壇予定だったのですが体調不良で欠席に。さぞご本人が悔しかったことでしょう。ちなみに客席には宇内梨沙さん、さらに日比麻音子さんも来てらしたとのこと、あとから知って驚きました(しかも宇内さんのツイートにはわたしの後ろ姿が写っているのだ)。

後日アトロクのポッドキャストトーク部分は配信予定とのことでそちらを聴いていただければと思いますけれども、なんといっても「大島依提亜さんがすぐそこに!」の感動が大きかったですね。イケてるパンフ、大抵が依提亜さんですからね。話題になった前作『ミッドサマー』のパンフももちろんそうですし(宇多丸さんも絶賛していた「絵巻物」の掲載が、じつはあとでちょっと怒られてた、っていう裏話おもしろかった)、これまで常にあった「日本版のポスターはダサい」というのが、大島依提亜さん以降どんどん変わってきていると思うんですよね、詳しくないのであれですが、少なくともメジャー作品に関しては。


満席の客席から、たくさんのスマホが上がっている。
トーク後のフォトセッションにて、宇多丸さんと大島依提亜さん。


さて、映画の話に入りましょう(コインランドリーが終わるまでに書き上げたいので)。上映前には宇多丸さんによる簡単な前説が。いち早く試写を観て、前々から「とにかく変な映画!」「ホップステップジャンプのジャンプがとんでもない方へ行った」みたいな表現をしていた宇多丸さん。この日はそれに加えて、「とても一人じゃ耐えられない」「みんなで苦笑しながら観ないと無理」とコメント。どんなかねー、と3時間耐久のアリ・アスター世界へ飛び込みました。結論、全くおっしゃる通り!

まず、ジャンルで言うと今回は9割コメディだと感じました。『ヘレディタリー/継承』が世界一怖いホラーだとして、『ミッドサマー』はご存知の無印良品ホラーじゃないですか。『ボー』は本当に、いわゆるホラー的な演出はほぼほぼないので、ホラーが苦手な人でも全然観れるアリ・アスターだと思います。ただ、とにかく苦笑失笑の「醒めない悪夢コメディ」なので、3時間ずっと「なんだこりゃ」っていう引き攣りを顔面筋に強いれない方にはあまりおすすめしません。「なんだこりゃ」を観たい方には全面的におすすめです。昔風の邦題をつけるなら『ホアキン・フェニックスの踏んだり蹴ったり』もしくは『ホアキン・フェニックスの泣きっ面に蜂』かな、って感じです。

この日とにかく良かったのは、宇多丸さんの前説のおかげで「笑っていい」モードで観れたことですね。結構早い段階から「ふは」っていう笑いがそこらから漏れていたし、大爆笑くらいに沸いたところもありました。どこだったかなあ、コンビニで水買ってるくだりとか、お風呂とか、まあそのへんずっと笑ってたかな。「あ、こりゃ一人じゃ耐えられませんね、納得」って思いながら肩を震わせていた記憶があります。あとは何より最後ですね。長い沈黙からの、クレジット一発目で大苦笑するっていう、あれは素晴らしい映画体験でした。一般公開後の劇場で同じ体験ができればいいのだけど、果たして。いや、3時間あの世界を共にしたらきっとみんな同じ大苦笑するだろ。してほしい。

なお3時間ずっと踏んだり蹴ったりのつるべ打ちかというとそうでもなくて、明確にダレる部分もあります。「いや、マジで何」っていうパートがあります。でも、どの「いや、マジで何」にも共通するのは、ダレてきたなー思っているとその空気が急速冷凍されるようなことが起きることですね。これ結構クセになります。実家かなー、実家のアレが一番かなー。乞うご期待かつ、この空気を味わうことになる皆様ご愁傷様ですという気持ち。

宇多丸さんもアフタートークで言ってましたけど、序盤のとある描写が結末につながっていく流れなどは非常にわかりやすく(そういうの鈍いわたしでも初見でわかった程度に)できているので、2回目以降の鑑賞はまた違った楽しみ方もできそうです。過去2作のプチセルフオマージュも楽しい(屋根裏はトラウマよ)。興収に貢献するべくもう一度観に行きたいと思っております。

あとはなんだろうな、気を失って知らないベッドと母性のもとで目覚める展開とか、特殊メイク感抜群の「老いた母」とか、実家のデザインとか、なんかいちいち個人的には『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのあれこれが頭をよぎってですね。「安心して、ここは1955年よ」「…1955年?!(ダーン)」みたいなテイストの詰まった映画だったなと思ったんですけど、もし同じようなことを感じる方がいたらご一報ください(嬉しいから)。あ、そうだ! 当ブログ的には寝坊の時刻にも要注目です!(寝坊もBTTFっぽいね!)

そんなところでコインランドリーも運転終了いたしますので、アリ・アスター監督最新作『ボーはおそれている』、もうまもなく2月16日の公開です。どうぞお楽しみに!

追記:トークの模様はこちらから!