353log

主に映画の感想文を書いています

「映画 ◯月◯日、区長になる女。」ほか「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」「廃市」のはなし。

ポレポレ東中野にて『映画 ◯月◯日、区長になる女。』。ドキュメンタリー界隈にてかなりヒットしているという噂を聞きつつ、なかなか観れていなかった一本。ようやく観ました(わたし映画館の人なので、ここにはあまり書いていませんがドキュメンタリーは日頃結構な本数観ています)。

杉並区の区長選を追った選挙ドキュメンタリーなのですけども、制作の経緯がとてもおもしろくてですね。20年来の杉並区民である監督ペヤンヌマキさんは、「自分の住むアパートが道路拡張計画で取り壊されるエリアにある」ことを急に知ります。寝耳に水です。で、どういうこっちゃと調べていくうちにこれまで気にしたこともなかった杉並区の区政に「自分ごと」として関心を持ち、あれよあれよと区長選の女性候補者を追うようになるのです。

大島新さん監督・プロデュースの作品群などを筆頭に、選挙ドキュメンタリーというのは基本面白いんですが、本作もまた非常に魅力あふれる作品でございました。かつ、なるほど納得なヒット要素満載の作品でございました。

まず、猫映画」である。猫でインタビューが見えないとか画期的すぎる! 監督が毛を吐き出す絵面が見れる! これはヒットするわ。それから、超キャッチーなテーマソングがある。「ミュニシパリズム」っていう耳馴染みのないワードが登場するんですけど、それを逆手に取った楽曲が、それも超ハイセンスでシュペリエルな楽曲が登場し、さらに超ビッグネームによるカヴァーがエンドロールで流れる。こんなんずるいでしょー。そして何より、杉並区民たちが、杉並区政がアツい。今わたし比較的近いエリアに住んでるので、引っ越したくなってしまいました。

東京ではポレポレ東中野、ほか全国へ拡大上映もどんどん決まっておりますゆえ、お近くで上映の際はぜひご覧くださいませ。



新宿ピカデリーにて機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。テレビシリーズは一切履修していないのですがやたらと評判がいいので、いけるかな?と。ちょっとね、いけませんでした。いや、話はざっくり分かるんですけど、これまでの積み重ねを持っていないので想定された楽しみ方はできていないと思います。必要だから愛するのではない、愛しているから必要なのだ、ということは分かりました。

あとはまあ、坂本真綾×鈴村健一カップルをようやくチェックできたのも収穫でした。本当はSEED DESTINYを観るべきなんでしょうけど、とりあえず満足です。『傷物語』といい、声優・坂本真綾ワークスを遅ればせながら追いかけていく2024年となっております。『空の境界』は観れなかったな。

2月16日(金)から音声ガイドが対応するようなので、音声ガイドを使用するともしかすると門外漢でももう少し把握しやすいかもですね。

▼国立映画アーカイブで始まった企画上映「日本の女性映画人(2)――1970-1980年代」にて、大林宣彦監督の1984年作品『廃市』(女性映画人としては、プロデューサー大林恭子さんほか)。『時をかける少女』撮影直後、奇跡的に取れた2週間の休みを利用して撮った映画として有名です(休みとは)。限りなく自主制作映画なわけですがキャストは『転校生』コンビの小林聡美×尾美としのりを筆頭に大林オールスターズが出演しています。日本のヴェニスこと柳川を舞台にした、いわゆる「大林映画のクセ」がまるでない非常に静かな映画です。

フィルム上映どころか映画館での鑑賞は初。だいぶ久しぶりに観たのですけども、記憶以上に水音が印象的な、つくづく不思議な作品でした。初見時は「根岸季衣さんがこんなおしとやかな役を」と少し可笑しく思ってしまったりもしたものですが、今回はただただ美しいなと。特に通夜のシーン、一人だけ青白い光に照らされた根岸さんが、見惚れるほど強く儚く美しく、という感じでした。うん、観れてよかった。16mm上映は、明日10日(土)にもう一回だけあります。お見逃しなきよう。