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映画「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ(2020)」感想|この話は“きれいごと”じゃない

シネマ・チュプキ・タバタウクライナ難民支援上映で、ドキュメンタリー映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』を観ました。経費を引いたチケット売上利益全額がUNHCRに寄付されます。


映画「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」ポスター
映画「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」ポスター


2010年から2015年までウルグアイの大統領を務めたホセ・ムヒカ。在任中も公邸ではなく農場の自宅に住み、給料の9割を寄付に回したという彼は、その金銭的な無欲さから「世界一貧しい大統領」の異名を持ちます。2012年「国連持続可能な開発会議」でのスピーチで彼の存在はより広く知れ渡り、日本では絵本にもなりました。

……ということを例によって不勉強なわたしは全然知らなかったのですが、このムヒカさんのこと、写真やイラストから「物腰柔らかそうなおじいさん」と思っていたのがまず大間違い。じつはムヒカさん、かつてはゲリラ組織で活動し、軍事政権下には十数年間収監された経験もあったりと、かなりハードな背景を持つお方。

国連でのスピーチや学生に向けた日本でのスピーチなどは、抜き出してみればただの「いい話」とも取れる内容です。しかし彼の背景、過去を知った上で聴くと、全く「きれいごと」ではない、ずしりとした重さがある。また、一見優しげに思える表情の奥から覗く鋭い眼光。上っ面の会話など全て見透かされてしまいそうな「眼」に何度もどきっとしました。

ウクライナ難民支援上映のプログラムということで、今の情勢に重なる部分、はっとさせられる部分も多々ある作品です。シネマ・チュプキにて5月31日まで上映しています(19日から時間が変わります)。お近くの方はぜひ映画館でどうぞ。

(2022年90本目/劇場鑑賞)