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主に映画の感想文を書いています

2021年の鑑賞記録

映画「うたのはじまり 絵字幕版(2020)」感想|歌ってしまうんだ どうしても

ドキュメンタリー映画『うたのはじまり』を観ました。ろう者であるカメラマンの齋藤陽道さんは幼い頃から「音楽」という表現手段に隔たりを感じていたといいます。「うた」って何? わからない。好きじゃない。 やがて彼は結婚し、子供を授かりました。妻も…

映画「世界一と言われた映画館(2017)」感想|かつて山形県酒田市に存在した豊かな文化発信地、その消失と継承

山形県酒田市にかつて存在した映画館「グリーン・ハウス」のドキュメンタリー作品。かの淀川長治氏はこのグリーン・ハウスをなんと「世界一の映画館」と評したそうだ。 そんな大袈裟な、たかが街の映画館でしょ。そう舐めてかかっていたら度肝を抜かれた。回…

映画「ベイビーわるきゅーれ(2021)」感想|最高に愛おしい本格ほのぼの殺し屋アクション

ああもう、こういう「知る人ぞ知る、超最高な映画」の紹介も兼ねた感想記事みたいなの、もどかしくて一番書きづらいんです。というわけで、はい、1996年生まれの超新鋭・阪元裕吾監督による最新作『ベイビーわるきゅーれ』を観てきました。最高でした。最高…

映画「シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021)」感想|(面白いけど)そろそろついていけなくなってきた

MCU25作目『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を観ました。前作『ブラック・ウィドウ』が公開規模小さかったので今回も面倒だな〜なんて思っていたら、今はもう普通にどこでもかかってるんですね。事情はよく知らないけれど『ブラック・ウィドウ』の不遇…

映画「太陽の塔(2018)」感想|くらくらしちゃう脳内麻薬分泌系ドキュメンタリー

ドキュメンタリー映画『太陽の塔』を観ました。そのものずばり岡本太郎の代表作「太陽の塔」について扱った作品ですが、大阪万博当時の回想のみならず2010年代の原発問題に至るまでかなり広く枝を伸ばしていく内容となっています。わたしは生まれも育ちも東…

映画「ニーゼと光のアトリエ(2015)」感想|芸術療法の先駆者、ニーゼ・ダ・シルヴェイラ医師を描いた実話

実在の精神科医ニーゼ・ダ・シルヴェイラとその功績を描いた映画『ニーゼと光のアトリエ』を観ました。時は1944年、ブラジル。ロボトミー手術や電気ショック療法などが最先端とされていた時代に、そういった荒療治とは対極にある芸術療法のパイオニアとして…

映画「行き止まりの世界に生まれて(2018)」感想|冒頭、上りかけた鉄階段を引き返す意味

ドキュメンタリー映画『行き止まりの世界に生まれて』を観ました。 イリノイ州の過疎化した町に生まれ育ったスケボー少年たちを、自身もそのコミュニティ出身である映像クリエイターのビン・リュー監督が「スケートビデオ」の延長として撮り続けていった作品…

映画「プリズン・サークル(2019)」感想|日本初、刑務所内の更生プログラムに密着したドキュメンタリー

「刑務所」は、どこかファンタジーですらある場所だと思います。「日本の刑務所」であればなおのこと。映画やドラマではよく見るけれど、実際の刑務所がどんなところなのかは全く知らない。それもそのはずで、原則カメラが入ることは許されない場所だから。…

映画「オールド(2021)」感想|秒で過ぎ去る一生、老後悔いなく往生(韻を踏みたく候)

M・ナイト・シャマラン監督の新作『オールド』を観てきました。と言いつつシャマラン作品は全く観たことがなかったんですけども(かすりもしていないことに驚き)、こういう感じなら好きかもしれない。つまり好きでした。以下、ネタバレ控え目です。「そのビ…

映画「白い肌の異常な夜」とそのリメイク版「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」を見比べる

ソフィア・コッポラ監督の『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ(2017)』を観ました。あれ?なんかこのお話、うっすら知ってるな。イーストウッドの初期作品あたりで似たやつなかったっけ? と思っていたら、本作は1961年のドン・シーゲル監督×クリント…

映画「鳥(1963)」感想|元祖・生物パニック映画の潔さ〈いいかげんヒッチコックを観よう④〉

のちの『JAWS/ジョーズ(1975)』などに繋がっていく「元祖・生物パニック映画」であり、文字通り「鳥に襲われる映画」であることはなんとなく知っていましたが、思いのほか鳥に襲われるだけの映画でびっくりしました。【鳥ショップで出会った男女→→お近づ…

映画「ナイスガイズ!(2016)」感想|ライアン・ゴズリングの情けなさが光る「低み」コメディ

ラッセル・クロウとライアン・ゴズリングのバディムービー『ナイスガイズ!』を観ました。2016年の作品ということで、ライアン・ゴズリングはこの年『ラ・ラ・ランド』と2本出てたんですね。 ちなみに何故いきなりこれを観たかというと、愛聴しているラジオ…

2021年8月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

30本、あれまあ。よく観ましたね。とにかく8月は新作が豊富でした。かなり気合を入れていないとあっという間に乗り遅れてしまうので、必死でした。そして傑作・良作だらけで感想を書くのも大変……。嬉しい悲鳴です。

「新生スースク」のルーツにあるトロマ映画「悪魔の毒々モンスター」「トロメオ&ジュリエット」を観た

「トロマ映画」をご存知でしょうか。わたしはご存知じゃなくて、てっきりトンマ映画とかマヌケ映画みたいな蔑称かと思っていたのですが、正しくは映画会社「トロマ・エンターテインメント」の作品を指す言葉、つまり「マーベル映画」みたいなもんだったので…

映画「白頭山大噴火(2019)」感想|必見! 確実に頭ひとつ抜けた超大作エンタメ韓国映画

「白頭山(ペクトゥ-サン)」とは北朝鮮と中国の国境付近に位置する火山の名前。この映画何がすごいって、開始早々に大地震で朝鮮半島が壊滅します。エンタメのためなら自国をも躊躇なく破壊する、これぞ韓国映画の強みよ……。しかもハリウッド映画級のクライ…

映画「子供はわかってあげない(2021)」感想|あんまりわかってあげられなかった感想

『横道世之介』『おらおらでひとりいぐも』などの沖田修一監督作品ということで、この2作がとても気に入ったわたしとしては期待値をかなり上げていたのですが、ツボとか好みってなかなかシビアだなあと思ったりした次第。つまり、ちょっと合わなかったな〜寄…

映画「鳩の撃退法(2021)」感想|2時間たっぷり「分からない」を楽しめる至福のミステリー

(多分ネタバレなし)『鳩の撃退法』を観てきました。佐藤正午さんによる同名小説が原作とのことですが、文学に疎すぎるわたしは本作の予告編で初めてそのタイトルと対面。なんだ鳩の撃退法って、えらくかっこいいタイトルだな! KIRINJIのこれまたかっこい…

映画「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(2021)」感想|極上密度でひたすら幸せなB級スプラッターコメディ

新作洋画渋滞中の8月、ようやく『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を観ました。最低&最高でした。ネズミNGな人以外には全力でお勧めしたい、この夏のNo.1です。 ただし念のため補足しておきますと、言うてもこの映画スプラッターコメディなので…

映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争(2020)」感想|作り込まれた非現実的世界で起こるミスマッチな現実がつらい

棒読み、無表情、曲がり角は直角に。「かなり変な映画」だという評判は聞いていたので楽しみにしていたのですが、これが想像以上に曲者でした。 シュールにシニカルに「戦争」を想起させるような内容の作品なのかなと思っていたのですけど、蓋を開けてみれば…

映画「フリー・ガイ(2021)」感想|しっかりアップデートされた2020年代基準の爽快コメディ

現在公開中の映画『フリー・ガイ』を観てきました。昨年、最初の緊急事態宣言で映画館が営業休止になる直前あたりに友人と「あれ面白そうだよね」なんて話をした記憶があります。丸一年の延期を経て、やっと会えたねブルー・シャツ・ガイ。 まず最初に書いち…

内田吐夢監督の映画「宮本武蔵」シリーズ全5作を観た/入江若葉さん演じる「お通」のこと

1961年から1965年にかけて「1年1作」で作られた、内田吐夢監督の映画『宮本武蔵』シリーズ全5作を一気見しました。最初の3作は短めでサクサクいけるのと、毎回あからさまな「続く!」で終わるため、ドラマ感覚であっという間に完走。 ちなみに「わりと夢中で…

映画「サマーフィルムにのって(2020)」感想|チャンバラもラブコメだ! 誰も貶さない映画讃歌

先に総括しておきます。まず単純に青春群像劇としてめちゃめちゃ楽しい! 97分という短い尺でありながら登場人物全員が輝いてます。そして前述の説明だと誤解されそうですが本作はキラキラ恋愛映画もチャンバラ時代劇も等しく称える映画讃歌です! ぜひスク…

映画「ワイルド・スピード/ジェットブレイク(2021)」感想|荒唐無稽で結構だが麺は食え

盆明け、免許更新の足で『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』を観てきました。「もしも道路交通法がなくなったら……」をテーマにした優良者用講習ビデオです。ちょっと長かったです。 そんな(?)本作は『ワイルド・スピード』シリーズ9作目。じつはわ…

映画「イン・ザ・ハイツ(2021)」感想|ひたすら完璧で心地良いラテン音楽ミュージカル

いやはや……めっちゃ良かった……。素晴らしかった。尺は143分、結構長いんです。しかし一瞬の隙もない。ひたすら完璧。え、ちょっと、「この密度の完璧」でどこまでいくつもり??と心配にすらなる完璧。そしてそれが最後まで続く。一切の妥協なく作り込まれた…

映画「裏窓(1954)」感想|眼福のステイホーム・スリラー〈いいかげんヒッチコックを観よう③〉

以前から一番興味があったタイトルは本作かもしれません。なんか面白そうじゃないですか、「裏窓」って響き。そんな予感は的中し、かなり好きなタイプの作品でした。2021年の今観ると「ステイホーム映画の最高峰」などと言いたくなってしまう内容でもあり。…

映画「ある日どこかで(1980)」感想|強い気持ちで時空を超える、衝撃のトラウマ恋愛物語

かなり異色のタイムトラベル恋愛映画『ある日どこかで』を観ました。すごく……すごく良かったけど強烈なトラウマ映画にもなった感。寝る直前に観るもんじゃなかったな。 観たきっかけは、大林宣彦監督の『時をかける少女(1983)』。こちらの劇伴は松任谷正隆…

映画「めまい(1958)」感想と、併せて再見した大林版「時をかける少女」のこと〈いいかげんヒッチコックを観よう②〉

じつは観たことがないだなんて口が裂けても言えないのでこっそりヒッチコックを初見していこう週間、2本目は『めまい』です。はい、こちら前回の『サイコ(1960)』以上に100%初見です。逆にすごいと思うんです。 例によってネタバレ気にせず書いていきます…

映画「サイコ(1960)」感想|いいかげんヒッチコックを観よう①

大きな声では言えないのですが、ヒッチコックの『サイコ』を初めて観ました。どういうわけか縁がなく、これまでヒッチコックは『北北西に進路を取れ(1959)』しか観たことがなかったのです(それすらも観た理由が思い出せぬ)。 スリラー好きなのにこれは流…

映画「キネマの神様(2021)」感想|対になるような作品「海辺の映画館」との共通点を掘ってみる

山田洋次監督の最新作『キネマの神様』を観てきました。ちなみにわたし、山田洋次監督の作品はずばり『幸福の黄色いハンカチ(1977)』しか観たことがないという、「寅さん」すら全く観たことがないという、そんな超門外漢でございます。それがなぜ今回は観…

映画「サイダーのように言葉が湧き上がる(2021)」感想|不器用に溜めたその先カタルシス

アニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』を観てきました。本来は2020年5月公開予定だったとのことで、だいぶ延期になりましたね。 ちなみにこれアニメ音楽レーベル「フライングドッグ」の10周年記念作品だということを、所属アーティスト坂…