ここ最近の鑑賞映画まとめて感想②|「ペトルーニャに祝福を」「ものすごくうるさくて〜」ほか
前回に引き続き、溜めてた感想を一気に供養していく回です。
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011)』
- 『THE END(2011)』
- 『ペトルーニャに祝福を(2019)』
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011)」
タイトルだけ見るとデスメタルみたいな顔面の映画を想像してしまうのですが、じつは9.11を背景にした喪失と再生の物語。12〜3歳くらいの少年が主人公で、脇をトム・ハンクスとサンドラ・ブロックが固めます。
9.11を直接的に扱った映画はこれまでに何本か観ているものの、「背景」となると意外とメジャーどころでは思い当たらなくて。本作は2011年公開ということで、10年を機に作られた作品なのでしょう。日本でも3.11を背景にした作品が今とても多いことを考えると、近いポジションの出来事なのかなと思います。
あどけない子供が主人公であるためか、シリアスよりはハートフルな印象のほうが強かった本作。なんとなくタイトルで敬遠している方がいたら、いや案外普通のヒューマンドラマでしたよとお知らせしておきたいです。
「THE END(2011)」
アトロクの「映画で学ぶろう文化」特集で紹介されていた短編。海外サイトから動画配信で視聴できます(日本語字幕選択可)。医療が進歩して「ろう者」を「聴者」に変えることができるようになった時代を描くディストピアSFです。
SFとはいえこれは結構「現実」であるらしく、手話でなくとも世界中の音声言語は日々どんどん消滅しているそう。アトロク同週の振り返りコーナーでは渡辺範明さんが本作の怖さを分かりやすく言い換えていて、地球上みんなが英語を喋れば効率がいいんだから他の言語は捨てて英語に統一しましょうってお達しが来たらどうします?っていう話、だと。
手話は代替言語などではなく非常に豊かなひとつの言語。でもそのことを聴者が正しく知れる機会は現在あまりにも少ない。実際わたしは興味を持っているつもりだったけれど、今回のアトロクの特集で話された『ドライブ・マイ・カー』の話などはかなりショックで。ぜひ聴いていただきたい特集です。
「ペトルーニャに祝福を(2019)」
これも以前アトロクで宇多丸さんが評して以来気になっていた、「北マケドニア映画」です。女人禁制とされる儀式で、主人公の女性ペトルーニャが十字架を「獲ってしまった」ことから始まる疑問提起の物語。公開当時は都内だと岩波ホール単館だったんですかね、今はU-NEXTほか配信で観れます。
遠い国の物語ではありつつも、女人禁制「とされる」何かと、それに反した際の「伝統の咎め」というのは万国に通じてしまうであろうことで。具体的なことでいえば宇多丸さんが評で言及している「相撲の土俵」問題は直近のまさにそのものな例だし、広くは社会全体が男性優位の仕組みで成っている。なんで?おかしくない? 疑問を呈すれば冷ややかな目で見られることも多々。なので全然これは「遠い国の物語」ではない。
で、さらにもっと宇宙レベルにまで視点を引いたのが原題『God Exists, Her Name Is Petrunya.』。ああ、そういえば、神は男だと信じ切っていた。これ結構、衝撃でしたね。
といったヒリつく話でありながら、じつはわりとコメディ要素も強くて。主人公ペトルーニャがとにかくかっこいいんです。顔面が強い。モヤつき苛つきも多いけれど、ふふっと笑えて最後には胸がすく作品でもありました。
今回はここまで。