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映画「355(2022)」感想|353による最速でもない355レビュー

こんにちは、353です。『355』を観ました。私事ではございますが生誕35周年のスペシャル353イヤーにこの作品が公開されたこと、たいへん光栄に思います。っていうか宣伝を見るようになって以来「もしも愛せない作品だったらどうしよう」とかなり不安だったんですけども、結論としては満足の一本でした。愛せる映画でした。よかった!


映画「355」ポスター
映画「355」ポスター


ジェシカ・チャステイン牽引のもと製作された本作、メガホンを取るのは『X-MEN』シリーズなどを多く手掛けるサイモン・キンバーグ、出演はジェシカ・チャステインダイアン・クルーガーペネロペ・クルスルピタ・ニョンゴ、ビンビン・ファン、セバスチャン・スタン、といったところでございます。わたし普段あまりこういうクレジット部分に触れないタイプなのですが、今回わざわざ名前を書き連ねておこうと思ったのはタイトル『355』にも関係しています。

『355』とは何か。これ劇中ではラストでようやく出てくるのですけど別にサプライズ的要素でもないので説明しておくと、アメリカ独立戦争において初代大統領ジョージ・ワシントン諜報機関で中枢的役割を果たした実在する女性スパイのコードネームなのだそう。ただし、この女性について歴史が知っているのは「エージェント355」という呼び名だけ。かのディープ・スロートのように明かされることもなく現在に至るのです。つまるところ本作のタイトルは、宇宙開発競争を大きく支えたNASAの女性計算手たちを描いた映画『ドリーム(2016)』の原題『Hidden Figures』と同義なのかもしれません。*1

さて本作、大筋としては「第三次世界大戦誘発必至な超ヤバいデバイス」を巡ったシンプルなマクガフィンものなのですが、しかしなかなか導入からわりとエグい。あの飛行機のね、なすすべもなく引きの画で見せられる大惨事、とてもよかったですね。中盤でもニュース映像で淡々と墜落シーンを見せられるんですけど、映画表現としてはわたしああいうのが非常に好きらしく、たいへんゾクゾクいたしました。何より「悪の手に渡ったらヤバい」という説得力がありました。

またこの映画、予告編から受ける印象はどうしても「ジェネリックオーシャンズ8』」だもんで、そういうチームが組まれるものと思って観ているも、どうも手を組みそうにない。ダイアン・クルーガーなんて完全に敵なんだもん。でも、キャッチコピーにもなっている「敵の敵は味方」を合言葉に、徐々にシスターフッドが生じてくる。まあ地下鉄シーンの投げキッスからいい予感はしてましたけどね、なかなか簡単には共闘してくれない感じがよかったです。

アクションもバリエーション豊かに工夫されていて、アクションあんま興味ないわたしでも楽しめました。特に序盤、(沼津っぽい)港での、漁港にある物を存分に生かした一連のシーンはかなり面白い。クレーンでニョキニョキ上がってくるダイアン・クルーガー、いつかのトム・クルーズばりに激突するジェシカ・チャステイン等々。スタントを使わずに撮影したシーンも多いそうで、このあたりのシーンで垣間見れる「それなりに怖そう」な様がむしろリアリティを増しています。

さらに、ファッション映画としても良くないはずがありません。筆頭はパリのハネムーン・チャステイン。花柄ドレスと銃のコーデが最高(『裏窓』終盤で花柄スカートひるがえしながらアクロバティックに家宅侵入するグレース・ケリーを連想)。からの、男役トップスターばりの輝きチャステイン@モロッコ。目立ちすぎでしょ。でも卒倒しちゃいたいほどイケてる。オークションでのダイアン・クルーガーなんかもセレブすぎる仕上がりで、もはや誰だかわからない。あえて女優と呼びますけど、女優さんはすごい。わたしは映画にこういうのを求めているのだ。

あとはなんでしょうね、展開上「殺されがち」なキャラクターが軒並み男になっていたのも印象的ですね。男は銃後を守り、儚く死んでいく。男女逆転の世界を描いたナオミ・オルダーマン著『パワー』を思い出したりしました。かといって軽んじられているわけでもなく、ルピタ・ニョンゴの涙であるとか、ペネロペの覚醒であるとか、そういったところで丁寧に描かれていて。細部の描きといえば、ジェシカ・チャステインが液晶ガシガシ触ってくるのとかも、ガサツなところが出てていいですね〜〜(実際にいたら嫌だけど)。

とある因縁のラスボスを安直に殺さないのもよかったです。生きてて欲しかったからとかではなく、むしろ逆ね。てめーなんぞにかっこいいラストシーンは与えねーよ、っていう。これは『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(2020)』のユアン・マクレガーに与えられた処遇と同じやつです。悪役の最期が見せ場になっちゃいけないわけ。まあ「またの機会」に派手な最期を与えてやっても、いいっちゃいいですが。

あそうそう、リズムが印象的なテーマ曲、ちゃんと解明はできませんでしたけど、3と5を想起させる変拍子使いなのは確実だと思います。序盤、拍を数えすぎてややストーリーに置いていかれたわたしです。そんなわけで『355』、思いのほかたっぷり楽しませていただきました。同じ35のよしみとして強く推しておきます。ぜひご覧ください!

(2022年24本目/劇場鑑賞)

海外版予告だと「エージェント355」の件が最初に出てくるんですね。

*1:ちなみにわたしこと「353とは何か」というどうでもいい件についてはこちらで書いています。また分かる人にはとても自慢になるエピソードとして、グラミー賞ギタリストMr.335ことラリー・カールトン氏のサイン会でご本人から「353はだめだ、335にしなさい」と改名を迫られたことがあります。