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主に映画の感想文を書いています

2010年代の作品

映画「ファースト・マン(2018)」雑感|月はいいぞ

そこは元日に観ろよ、って感じの『ファースト・マン』を観ました。デイミアン・チャゼル監督の最新作です。 デイミアン・チャゼル監督といえばレンタルで観た『セッション(2014)』がまず面白くて、その監督の次作だというので今度は劇場公開時に『ラ・ラ・…

映画「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来(2019)」雑感|ちょっとこれは、感想を書くのも野暮な面白さです。

『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』を観ました。中国のアニメーション映画で、非常にクオリティが高いとだいぶ前から話題になっていた作品です。 日本では2019年9月から字幕版が小規模上映されていたようですが、好評を受けて2020年11月よ…

映画「悪人伝(2019)」雑感|ヤクザと刑事が手を組んで殺人鬼を追う、異色のバディもの

マブリーことマ・ドンソク主演の『悪人伝』を観ました。劇場公開時にはタイミングが合わず行けなかったのですが、最近はすぐ配信に入ってくれるので助かります。 さて、タイトルこそ物々しいものの、この作品は軽いエンタメ映画です。ヤクザのボスと正義感の…

映画「哭声/コクソン(2016)」雑感|怪演・國村隼。韓国で大ヒットしたオカルトホラー

ナ・ホンジン監督の『哭声/コクソン』を観ました。「裸の國村隼が四つん這いで迫ってくる韓国映画」とかいう偏りまくった情報だけ知っている作品だったのですが、やっと全貌が明らかに。またひとつお気に入りのトラウマ映画が増えました。 本作、トータルの…

映画「メランコリア(2011)」雑感|巨大惑星が地球に衝突するだけの話

ラース・フォン・トリアー監督の『メランコリア』を観ました。ラース・フォン・トリアーといえば鬱映画の代名詞『ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000)』。名前からすでに不穏な空気の漂ってしまう監督、というイメージがあります。いまいち有意義に過ごせな…

映画「あなた、そこにいてくれますか(2016)」雑感|感覚的に楽しめる、良質なタイムトラベル・ラブストーリー

韓国映画にハマってるんだったら観てみて、と教えてもらった『あなた、そこにいてくれますか』を観ました。コテコテのメロドラマみたいなタイトルですが(原題も同じ)、その内容は意外にファンタジーなタイムトラベル系ラブストーリー。フランスのベストセ…

映画「CLIMAX クライマックス(2018)」雑感|二日酔いの朝みたいな気持ちになれる作品

ギャスパー・ノエ監督の『CLIMAX クライマックス』を観ました。これはですね、ふと「ライムスター宇多丸のシネマランキング2019」のトップ10で未見なの『CLIMAX』だけじゃん、と気付いての鑑賞でございます。ちなみにそのトップ10はこちら。リンク先はわたし…

イ・チャンドン監督作品「バーニング 劇場版(2018)」雑感|原作は村上春樹。何が起きるか読めない地味サスペンス、最高。

『バーニング 劇場版』を観ました。昨年あたりライムスター宇多丸さんがよく挙げていたタイトルというイメージがあって、韓国映画に疎い頃からなんとなく馴染みのある作品でしたが、なるほど去年のシネマランキング3位でしたか(このトップ10中だと『CLIMAX …

韓国映画「スウィング・キッズ(2018)」not for meな雑感|好きじゃない映画表現の話

『サニー 永遠の仲間たち(2011)』を観た流れで、同じ監督の最新作『スウィング・キッズ』も観ました。日本では今年のコロナ禍突入直前あたりに公開された作品で、気にはなっていたものの映画館で観るタイミングを逃していたやつです。 ただ、久しぶりに相…

韓国映画「サニー 永遠の仲間たち(2011)」雑感|韓国版の時代背景とか、数珠繋ぎ的な余談あれこれとか。

日本でも2018年に『SUNNY 強い気持ち・強い愛』としてリメイクされた大ヒット韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』を観ました。日本版のほうはめちゃくちゃエモくて最の高なボロ泣き映画だったんですけど、当時まだ韓国映画にミリも興味のなかったわたしはオリ…

韓国映画「工作 黒金星と呼ばれた男(2018)」雑感|諜報サスペンスと南北分断ものの魅力を併せ持った傑作

先日、BSプレミアムのドキュメンタリー番組「アナザーストーリーズ」にて「初の南北首脳会談 〜知られざる舞台裏〜」の回を観たのですが、そのなかで紹介されていたのが『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』という韓国映画でした。番組がと…

パク・チャヌク監督作品「イノセント・ガーデン(2013)」雑感|フェティッシュと暴力性は健在の(でもちょっと物足りない)ハリウッド進出作

ニコール・キッドマンらが出演している、パク・チャヌク監督のハリウッド進出作『イノセント・ガーデン』を観ました。『スノーピアサー(2013)』からポン・ジュノ監督に入ったわたしが言うのもなんですが、韓国の映画監督は韓国で韓国の映画を撮ってくれた…

韓国映画「ハウスメイド(2010)」雑感|「パラサイト」にも影響を与えた古典映画のリメイク版

『パラサイト 半地下の家族(2019)』公開時、たびたび映画評などで見かけた『下女』という1960年の韓国映画があります。ポン・ジュノ監督自身もこの作品から大いにインスパイアを受けたと語っていました。そんな古典的作品『下女』をリメイクしたのが、今回…

韓国映画「悪女/AKUJO(2017)」雑感|前半アクション、後半メロドラマという不思議な作品

パク・チャヌク監督の『渇き(2009)』にて先日わたしのハートをぶち抜いてくれたキム・オクビンさん。彼女が主演する、ずばり『悪女/AKUJO』という映画があるらしいぞってことですかさず観ました。が、結論としてはあんまりピンとこず。まあそういうもんで…

パク・チャヌク監督作品「お嬢さん(2016)」雑感|開けてびっくりなハードコア百合映画

韓国映画のことを調べているとよく出くわす『お嬢さん』という作品。なんだかほのぼのしたタイトルで、なんかまあ魅力的なお嬢さんが堪能できるのかな?とふんわり期待値を上げておりましたが、ようやくご対面と相成りました。ところが開けてびっくり玉手箱…

韓国映画「エクストリーム・ジョブ(2019)」雑感|麻薬捜査班がチキン屋を経営したら繁盛しちゃった話

観よう観ようと思いつつ、だった韓国映画『エクストリーム・ジョブ』をようやく観ました。韓国ではなんと同年公開の『パラサイト』超えをしているというマグナムヒット作。スクリーン独占が問題になったりもしたそうで、今の日本でいう『鬼滅の刃』くらいヒ…

「愛の不時着」第10話に登場する韓国映画「シークレット・ミッション(2013)」

韓国ドラマ『愛の不時着』をご覧になった方であれば、第10話でいきなり「緑のスウェット男」がさも重要人物かのように登場したのを覚えていることでしょう。 『愛の不時着』10話より そう、この人ですね。じつは「この人」、2013年に韓国で大ヒットした映画…

映画「異端の鳥(2019)」雑感|第二次大戦下東欧の市井を舞台にした「1917」的“地獄めぐりライド”映画

映画『異端の鳥』をTOHOシネマズ日比谷シャンテで観てきました。以前シャンテで予告を目にし、おもしろそうだなと思っていた作品。とはいえ3時間弱の長尺だし重そうだし、「途中退場者続出!」なんていう触れ込みにも怖気付いていたのですが、ライムスター宇…

京都国際映画祭2020の大林宣彦監督特集を観た③【「この空の花」「野のなななのか」メイキングと、特別対談】

この記事の続きです。 京都国際映画祭2020の特集『大林宣彦の玉手箱─ワンダーランドな空想映画館─』では、メイキング・ドキュメンタリー作品も上映(配信)されていました。ここではメイキング2作品と、映画祭の特別対談について書きます。 目次 映画の根「…

映画「82年生まれ、キム・ジヨン(2019)」雑感|読書体験と映画体験の違い(主に原作からの変更点について)

映画版『82年生まれ、キム・ジヨン』を劇場鑑賞しました。日本でも大きく話題を集めた韓国の同名小説が原作となっています。この本に関しては別途記事を書いていますので合わせてお読みください。 原作はフェミニズム文学と呼ばれるものですが、フェミニズム…

映画「フェアウェル(2019)」雑感|異文化に溢れたシュールなホームコメディ

映画『フェアウェル』を劇場鑑賞しました。「実際にあったウソに基づく」という小粋な一文から始まるこの作品は、監督ルル・ワンさんの実体験をもとにしているそうで、監督自身を投影した役どころは『オーシャンズ8(2018)』『ジュマンジ/ネクスト・レベル…

韓国映画「The Witch/魔女(2018)」ネタバレ雑感|「魔女宅」を期待すると、トラウマを背負う

Netflixがやたらとおすすめしてくるので『The Witch/魔女』という映画を観ました。韓国映画だというのは再生する直前に知りました(なんならドラマだと思ってた)(最近多いパターン)。なお前後編の前編らしく、正確には『−第1部 転覆−』の副題が付きます。…

映画「ミッドウェイ(2019)」雑感|真珠湾攻撃〜ミッドウェイ海戦を中立視点から描いたローランド・エメリッヒ最新作(しかし居心地が悪い)

ローランド・エメリッヒ監督の新作『ミッドウェイ』を劇場鑑賞しました。太平洋戦争における真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦までの戦局を、日米双方の視点で描く作品です。日本からは山本五十六役の豊川悦二さんをはじめ、國村隼さん、浅野忠信さんらが海軍…

映画「レディ・バード(2017)」雑感|グレタ・ガーヴィグ監督×シアーシャ・ローナンの第一弾作品

グレタ・ガーヴィグ監督の『レディ・バード』を観ました。監督&主要キャストが共通している『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019)』の公開タイミングで観ようと思っていたのですがずるずる後回しになっておりましたよ。あるある。 物語…

映画「コレット(2018)」雑感|“奔放”な女流作家、という印象を持つこと自体間違っているのかもしれない。

先日ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』を観劇したとき、カンカン帽をかぶった文筆家のヒロインを見て「あ、そういえば観なきゃ」と頭をよぎった映画がありました。それが『コレット』です。 主演はキーラ・ナイトレイ。とても好きなお顔立ちの女優さ…

深田晃司監督作品「よこがお(2019)」雑感|血の気が引く、背筋が凍る、胸糞悪い、でもめちゃくちゃ面白い

深田晃司監督の『よこがお』を観ました。WOWOWでなんとなく録画しておいた一本だったのですが、これが非常に面白かった。監督、かなりの変態ですね……。 本作はまず何より主演・筒井真理子さんの怪演を愉しむ映画であり、あらすじを書いてしまうと楽しみが削…

映画「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019)」雑感|スカッと笑いたい全ての人へ

女優としても活躍するオリヴィア・ワイルドの長編初監督作品『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』を劇場鑑賞しました。 「ブックスマート=book-smart」とは「(学歴や教養はあるが)世間知らず」な人のことを形容する言葉だそうです。つまりこ…

ドキュメンタリー「ようこそ映画音響の世界へ(2019)」雑感|映画体験の半分は、音だ。

現在公開中のドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』を観てきました。映画音楽ではなく、映画「音響」。もちろん音楽もその一部ですが、それ以外にも効果音や環境音、演者が発する声の扱いまで、「映画音響」の仕事は多岐に渡ります。しかし作品…

終戦から75年の日、池袋・新文芸坐で大林宣彦監督の戦争三部作「この空の花」「野のなななのか」「花筐」を観た

池袋の名画座・新文芸坐さんにて、「追悼・大林宣彦 〜永遠の魔法〜④ 戦後75回目の夏に…」と題された『この空の花 長岡花火物語('12)』『野のなななのか('14)』『花筐/HANAGATAMI('17)』の3本立てを観てきました。新文芸坐さん、企画ありがとうござい…

塚本晋也監督版「野火(2015)」雑感|非常にハイクオリティな戦争疑似体験映画

大岡昇平さんの同名小説を原作とした映画『野火』を観ました(1959年の市川崑監督版ではなく2015年の塚本晋也監督版)。 この映画、タイトルは知っていましたがあまりいいイメージを持っていなかったというか、趣味の悪い映画かなと勝手に遠ざけていました。…