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主に映画の感想文を書いています

映画「コレット(2018)」雑感|“奔放”な女流作家、という印象を持つこと自体間違っているのかもしれない。

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先日ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』を観劇したとき、カンカン帽をかぶった文筆家のヒロインを見て「あ、そういえば観なきゃ」と頭をよぎった映画がありました。それがコレットです。

主演はキーラ・ナイトレイ。とても好きなお顔立ちの女優さんで、加えてこのファッション(『ダディ〜』しかり、わたしはこういうのが非常に好きです)。これは絶対観ないと!!と公開当時思ったものの、公開規模が小さくて結局観そびれていました。

本編の感想が意外と長くなったので先に差し込んでおくと、キーラ・ナイトレイの眼福っぷりは期待以上でした! 時代時代に変化していくファッションがもうどれも最高に素敵、似合ってる。学生風の装いも、上流階級風の装いも、ビシッと決まった男装も、また髪型の変化も。キービジュアルにピンと来た方は観たほうがいいと思います。

さて、タイトルの「コレット」とは、フランスの女性作家コレットのこと。恥ずかしながら全く存じ上げなかったのですが、代表作らしい『ジジ』というタイトルを見て、ああ!ヘプバーンの!と連想する程度にはつながりのある作家さんでした(オードリー・ヘプバーンは壁に写真を飾るくらい好きです)。そんな彼女の生涯、というよりも人生のほんの一部分を描いたのがこの作品。

あらすじをちらっと見ると「夫のゴーストライターになった妻」の話らしく、ううむ、これは月並みな展開をするやつなのかなと若干気を重くしながら鑑賞開始(余談:いきなりフィオナ・ショウが出てきて、『キリング・イヴ』最新シーズンを観終えたばかりの身としてはお茶を噴きそうになった)。するとキーラ・ナイトレイ演じる素朴な少女時代のコレットが、納屋で、男にまたがってる、おいおい。ちょっと思ってるようなお話じゃないかもな、という斜め上?下?のオープニングでした。

時代は進み、コレットは先程またがっていた作家の男ウィリーと結婚。夫の本が売れず窮地に立たされた折、もとより文才のあった彼女は自身の少女時代の記憶をもとに小説を執筆、ウィリー名義で出版し大ヒットをおさめます。当然ながらこのヒットは夫の名声となり、複雑な気持ちを隠せないコレット。ここまでは「月並みな展開」だと思うのですが、その後また意外な展開を見せていきます。

オープニングで示されていたとおり、彼女は奔放な人でした。適当に折り合いをつけ、しかし強気の態度は貫き、同性の愛人(演じるエレノア・トムリンソンさんの魔性なお顔がまたいいのだな……)を作ったりしながらその体験を新作に盛り込む。自分の大切なゴーストライターである以上、夫ウィリーも彼女を無下には扱えず、ふたりは共犯関係を結婚生活そのものとしていきます。中指おっ立てるような罵倒合戦を挟みながら次のシーンでは並んでデスクに座り「共作」をしている、この不思議な、複雑な関係。一筋縄ではいかなくてなんとも好きでした。

こうして生まれ育っていった「クロディーヌ」というシリーズ小説は、舞台化され、ブランド化され、社会現象として当時の世間を大いに賑わせていくのですが、そのあたりのサクセスストーリー的な描き方も楽しかった。「プレイボーイ」誌の創刊者ヒュー・ヘフナーを描いたドキュメンタリー作品をふと思い出しました(すごくおすすめです)。

一時は「もうこれでいいか」と落ち着いたように見えるコレットですが、まだまだ若いし時代も変わりゆく。そしてこれほど成功して表舞台に出てもなお、自分の名は本当の意味ではクレジットされていない。いろいろありつつ彼女は夫の元をついに去り、新たな人生を切り開きに行きます。そこでこの映画はおしまい。

共犯関係の描き方がなかなか痛快なため単純な黒と白の話にはなっておらず、ていうかまあそうなんですよね、どうしてもフェミニズムを感じさせる作品って男目線からすると「観ながら平謝り」みたいな姿勢になりがちなんですけど、本来は平等を目指すものなはずで、明らかに白黒ついていたらちょっと違うのかもしれない。それでいうと、コレットに「奔放」な印象を持ったこと自体が要意識改善ポイントなのかも。「男の性(さが)」って言えば許されると思ってるんでしょ、と彼女が言うように、ウィリーだって奔放なのに、コレットだけそれを特筆するのはおかしいか。なるほど。

ぶつくさ独り言モードに入って、ここで感想文は途切れている。

(2020年156本目/PrimeVideo内スターチャンネルEX)

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