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主に映画の感想文を書いています

韓国映画「スウィング・キッズ(2018)」not for meな雑感|好きじゃない映画表現の話

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サニー 永遠の仲間たち(2011)』を観た流れで、同じ監督の最新作『スウィング・キッズ』も観ました。日本では今年のコロナ禍突入直前あたりに公開された作品で、気にはなっていたものの映画館で観るタイミングを逃していたやつです。

ただ、久しぶりに相性のよくない映画に当たってしまった〜〜という感じで。映画館に行けなかったのはそういう逆の導きだったのか、それとも映画館の環境で観たらもう少し良く思えたのか、わかりませんが。ともかく、苦手なタイプの作品でございました。なので感想もあっさりめに。嘘、長くなった。

時代背景とあらすじ

時代は1951年。朝鮮戦争下の朝鮮半島南端、巨済島にある捕虜収容所が舞台です。映画冒頭、ニュース映画みたいな感じで朝鮮戦争の簡単な経緯が紹介されるのですごくわかりやすいです。この収容所では北朝鮮および中国の捕虜に快適な環境を提供していたため、そのまま南に残りたがる者も多かったそう。当然、捕虜の中でも「南側の思想=資本主義」と「北側の思想=共産主義=アカ」とで分裂が生じ、死者をも出す暴動へ繋がります。

といった状況で、捕虜に許された娯楽の一環として、元ブロードウェイダンサーの米軍下士官監修のもとダンスチームが結成されます。ただしこの下士官は黒人であり(ついでに沖縄に日本人の家族がおり)、白人の同僚たちから侮蔑されたりしている微妙な立場の人。チームを構成するのも、あらゆる犠牲者・弱者の縮図のようなメンバーたち。そんなダンスチームが感動のステージを踏む、というフィナーレへ向かっていく、はずの、お話です。超ざっくり。

ダンスチーム結成のきっかけとして、仮面をかぶった三人衆が滑稽なダンスを踊るシーンが出てくるのですが、実際にこの情景が当時の記録写真として残されており、そこから着想したミュージカル作品があったと。そしてそれを原作として映画が作られたのだとか。一枚の写真にインスピレーションを受けて創作された物語、おもしろいですね。

わたしの苦手な映画表現

では何が苦手だったのか、相性が悪かったのかという個人的な話。何度か書いていると思うのですが、わたしは「大して練習も準備も打ち合わせもできてないだろうに総合芸術として最高のパフォーマンスができてしまう系の(そしてそれが山場となる)音楽映画」がすっごく苦手なのです*1

まあ一応理由がありまして、わたし自身がアマチュア吹奏楽団体に長年所属してステージ造りに携わっているからなんですけども。演者たちだけのパフォーマンスならまだ才能や素質、努力で説明がつく。タップダンスにはアカペラという靴音だけのパフォーマンスがあるのでそういう魅せ方もできます。しかし、そこに照明や舞台美術、音響などが加わったときに、それはそんな簡単に仕上がるものではなかろう、綿密な準備があったとするならそれを数コマでも入れてくれ、とどうしても思ってしまうのですね。

演者がステージに立つ。タイミングに合わせて照明が点く。誰が点けた? 位置合わせはいつやった? 幕が開いてバンドが登場! いつ搬入していつサウンドチェックをした? もいっちょ幕が開いて巨大なネオンサインが登場! いつどうやってそんな大掛かりなものを作り、セッティングした? ライブハウスならともかく、平時ならともかく、収容所の体育館だぞ、そこ。……といった具合に、極端に冷めた目で見てしまうのです。つまらない人間になってしまったものです。

これがね、ミュージカル作品なら話は全く変わってくるんですよ。あれはファンタジーみたいなもんですからね、いつどこで音楽が鳴って豪華絢爛なセットが登場して完璧なパフォーマンスを披露できたとしても、リアリティラインなんて存在しないのだから何も気にならないんです*2。本作でいえば、あのラストステージでカーネギーホールの客席が見える、あれはそういう映画的表現ですから全然いい。ただ、あのラストステージの体裁自体は「リアル」だろう、と。そう思うと一転、受け入れられなくなってしまうわけですね。

最後にフォローしておくと本作は一般的にはとても高評価を得ている映画で、とにかくわたしと相性が悪かっただけというお話でございます。not for meをぐだぐだ書いてしまっただけでございます。お気になさらず、ご覧ください。なおダンス映画と見せかけて後半はかなり人が死ぬ映画なのでその点ご留意ください(本当はそういうところに視点を置きたかったのですが、なかなかどうして気が逸れてしまって)。

(2020年199本目/U-NEXT)

スウィング・キッズ(字幕版)

スウィング・キッズ(字幕版)

  • 発売日: 2020/06/03
  • メディア: Prime Video
「ファッキン・イデオロギー」とか、すごく考えさせられる映画だったんですけどね。確かにそうだ、自国の思想ではない。他国の冷戦が生んだ代理戦争。悲しすぎる歴史。ダンス映画、音楽映画としてではなく出会いたかった。

*1:近作では例えば『アリー/スター誕生(2018)』『イエスタデイ(2018)』など。

*2:ちなみにわたし、最初に心酔した映画スターがフレッド・アステアである、という程度にはタップダンス好きミュージカル好きでございます。アステアの作品はほとんど観てます。