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映画「メランコリア(2011)」雑感|巨大惑星が地球に衝突するだけの話

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ラース・フォン・トリアー監督のメランコリアを観ました。ラース・フォン・トリアーといえば鬱映画の代名詞『ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000)』。名前からすでに不穏な空気の漂ってしまう監督、というイメージがあります。いまいち有意義に過ごせなかった日曜日の夜、いっそ〆に絶望的な映画が観たい気分だったのでこれを選んでみました。結果、大当たり。これ、好き〜〜〜。

雑感

簡単に言えば「135分かけて巨大惑星が地球に衝突するだけの話」です。冒頭で早くも飲み込まれる地球のビジュアル出てきますし、バッドエンドが約束されている映画ということでございますね。

ただおもしろいのは、視点がマクロかミクロしかないこと。「宇宙」か「個人」か、描かれるのはそのどちらかだけで、大都市や群衆は出てこない。つまり典型的なパニック映画にはならないわけです。静かに取り乱して、なすすべなく終わっていく。この地味な感じが、とてもいい!!

構成は大きく3つに分かれていて、まずアバンタイトルワーグナーの『トリスタンとイゾルデ前奏曲、これ実質「メランコリアのテーマ」として最後までずっと繰り返されるんですけど、この曲を丸々流しながらスーパースローの美麗な映像でさながら「終末のイメージビデオ」が10分くらい続きます。大いに眠気を誘います。

続いて第1章。ここではキルスティン・ダンスト演じる主人公の結婚式が延々映し出されるんですが、これがもう悪夢みたいな結婚式で。本編の半分くらい尺を消費して見せられたってのに、お開きの頃には人間関係すべて終わっているという。後から思うとなんだったんだよ!っていう第1章です。

そして後半第2章。ようやく「巨大惑星が地球すれすれを“通過”するらしい」ことが台詞に登場。ここからの地味SF感がたまらなくて、しれっと「月がふたつ」状態になってたりとか、次に写ったときはかなり近くまで来てたりとか、普段のシーンではあまりフレームインしてこないだけに「今度写るときはどのサイズなんだ……??」とハラハラさせられるのです。一大イベントに心踊る無邪気な子供が手作りした「大きさチェッカー」が非常にスリリングでサスペンスフルな小道具になったりとか、いちいちうまい。

キルスティン・ダンスト演じる主人公はいわゆるうつ病という設定になっていて、その不安定さのせいで自らの結婚式も台無しにしてしまいます。そんな彼女をときには疎みつつも親身に案ずる健常な姉。しかし後半、予期せぬ終末の事態に取り乱す姉に対し、不安定なはずの主人公はいたって冷静に姉をフォローしていきます。じつはこの「姉妹」の物語だったんだ、と最後のほうで気づくのでした。

ラストシーンはもちろん、惑星が地球にぶつかって終わりです。うーん、これは劇場で絶句してみたかった! ちなみに「メランコリア」というのはこの惑星の名前。憂鬱に飲み込まれる地球。なんていやなお話なんでしょう、と思いつつわたしはこの映画すごく好きです。鬱映画だとは思わないしなんならちょっとしたハッピーエンドですね。地味で静かな終末系SFがお好きな方はぜひお試しください。

(2020年203本目/U-NEXT)

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