映画「ファースト・マン(2018)」雑感|月はいいぞ
そこは元日に観ろよ、って感じの『ファースト・マン』を観ました。デイミアン・チャゼル監督の最新作です。
デイミアン・チャゼル監督といえばレンタルで観た『セッション(2014)』がまず面白くて、その監督の次作だというので今度は劇場公開時に『ラ・ラ・ランド(2016)』を観たらこれがまた個人的クリーンヒットで、作中でオマージュされている往年のミュージカル映画たちを観漁っていくなかで「映画鑑賞を趣味にしよう」と思い立ち今に至る、みたいなエピソードがございまして、話せば長くなりますが自分を形作るうえでの重要人物だったりします。
そんな監督の新作なのに、これは観ていなかったんですよね。音楽映画のイメージがあったもんで「え、宇宙?」っていう。「宇宙服姿のライアン・ゴズリング」というキービジュアルを見て「なんとなく」興味ないスイッチが入ってしまったまま公開から2年弱、ようやく観る気になりました。そういえば『ライトスタッフ(1983)』も観よう観ようと(『ドリーム(2016)』の頃から)思い続けて未見のままだったり、宇宙ものには腰が重くなるところがあるようです。
本作はその『ドリーム』や『ライトスタッフ』が扱った「マーキュリー計画」に続く「ジェミニ計画」そして「アポロ計画」を描く映画で、主演ライアン・ゴズリングが演じるのはかの有名な“ファースト・マン”ことニール・アームストロング船長。宇宙開発の物語というよりはあくまで彼のパーソナルに焦点を当てた作品であることが特徴らしいです。ただ前述のとおりわたし的には明るくないジャンルなので、ここでは単なる感想のみをいくつか書いて終わろうと思います。
「怖い」
宇宙行くのめちゃくちゃ怖いな、っていうのが本作で一番感じたことでした。なにぶん未知で確立されていない「実験」の先頭に生身の人間が立つんですよ。とんでもないことやってるよな、って。
何回か登場するロケット打ち上げシーンのなかで特に怖いのは最初のジェミニ8号。俯瞰を見せず、船内しか映さないカメラ。小窓ひとつしかない船内。逆立ち状態の身体(富士急ハイランドのええじゃないかを連想し、よりリアルな怖さに)。いざ打ち上がってもこれが成功なのか失敗なのか素人目には全くわからない生き地獄が延々続き、気絶寸前のところで無音と漆黒が、蒼い地球がお目見えする。いやはや、宇宙飛行士のメンタルたるや。わたしならカウントダウン前に吐いてます。
それからアポロ1号の事故シーン。ここは何が怖いって、爆発の衝撃で外扉がボコンッと静かに膨れて終わるという演出でしょう。客観的怖さのジェミニ8号、俯瞰的怖さのアポロ1号。いずれにせよ、恐ろしや。
月のロマン
月って、他の天体の比じゃなくロマンがあります。ひときわ身近な存在なのに容易く近づけないからだと思います。宇宙ものには腰が重くなると書きましたが興味がないわけではなくて、むしろ日頃から月を見るたびにめちゃくちゃロマン感じてます。あれ星なんだよなあ。そこにあるんだよなあ。不思議だなあ。と。
本作でもニールは地上からいつも月を見ていて、アポロ11号の打ち上げ時も小窓から月をガン見。あそこに行ってやるぞという強い気持ちが溢れているシーンですが、ミッションが進行しいざ小窓から月面が間近に見えたときの「来ちゃった」感はいかほどか、想像しても想像しきれません。月面から見た「いつもの月のサイズ」の地球というのも、間違いなく人生観を覆すようなものでしょう。
それにしても、ううむ、月。いつも光っていてあまり天体とは思えない太陽や、小さすぎて空の一部としか認識できない数多の星たちとは違い、肉眼でもその地表を感じられる特異な天体。こんなに毎日見ているのに、世界中どこへ行っても同じ顔で出迎えてくれる存在。時々『トゥルーマン・ショー(1998)』的な「覗き穴」に思えちゃうきれいな円形。あれがなくなっちゃったら仕事帰りに見上げるものがなくなって寂しいな。などと妙なところに飛んでいく思考。月はいいですね。以上です。
(2020年214本目/PrimeVideo)
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