韓国映画「The Witch/魔女(2018)」ネタバレ雑感|「魔女宅」を期待すると、トラウマを背負う
Netflixがやたらとおすすめしてくるので『The Witch/魔女』という映画を観ました。韓国映画だというのは再生する直前に知りました(なんならドラマだと思ってた)(最近多いパターン)。なお前後編の前編らしく、正確には『−第1部 転覆−』の副題が付きます。Netflixだけでなく主要な配信サイトでおおむね観れるようです。
主演はキム・ダミ。本作でデビューと同時に大ブレイクし、タイトルはよく目にする人気ドラマ『梨泰院クラス』でも主演を獲得(追記:早速観て、ハマってしまいました)。韓国で今とても旬な女優さんのようです。そのほか『パラサイト 半地下の家族(2019)』のお兄ちゃん役チェ・ウシクなどが出演しております。
この映画、Twitterにファンアート的なものが時々流れてきていて、それがすごく可愛い女の子二人組のイラストだったもんで、てっきり現代版『魔女宅』みたいなものが見れるのかな〜〜可愛い女の子見たいな〜〜と不純な気持ち100%でポチッと再生しましたところ、思ってたのとは違うやつでした。展開のネタバレをするのでご注意くださいね(次の次の次の見出しからネタバレ強めです)。
思ってたのと違うオープニング
へえワーナーなんだ、などと思ったのも束の間、『魔女宅』にしてはめちゃくちゃ悪趣味な(魔女宅じゃないから)、デヴィッド・フィンチャーが『魔女宅』リメイクしてもここまでのことにはならないだろうという(魔女宅じゃないから)刺激的なオープニングに早くも引き返したくなりました。実験施設、大虐殺、実験体の脱走。え、怖くない?? ガチのやつじゃない?? 映画間違えた?? わりと本気でそんなことを思うR15+アピールの胸糞系プロローグです。
酪農少女のシンデレラストーリー
どす黒いオープニングでげっそりしたのち、画面は一転のどかに。キム・ダミ演じる主人公は、幼いころ行き倒れていたところを農場の夫婦に助けてもらい、牛の世話などをしながら家族の一員として育ってきました。ただ、ここのところ農場の経営は思わしくない様子。「お金がいるんでしょ」ということで、親友の強引なプロデュースのもと彼女はオーディション番組へ出演することになり、なんとどんどん勝ち進んでいくのです。
飾り気のない素朴な「酪農少女」のシンデレラストーリーに韓国中が注目するなか、彼女が「特技」として披露したとある能力が黒い組織の目にとまります。この組織はどうやら冒頭で悪趣味に登場した実験施設と関係がありそう。あのとき脱走した実験体こそが「酪農少女」なのでしょうか。彼女は記憶をなくしたまま成長し、一般的な高校生活を送り、しかしその内には本人も知らない恐ろしいパワーを秘めているのでしょうか。──ってことはこれからどっかで覚醒して組織に復讐するわけね! 楽しみ!
──というわけではなかった
のです。いや復讐するってのは合ってるんだけど、彼女は記憶をなくしていなかった。覚醒どころか、ずっと目覚めてた。え、怖。
彼女は並外れた知能を持っているめちゃくちゃ頭のいい子として序盤から説明・描写されているわけですが、その「頭の良さ」は常人が考える「頭の良さ」より数段上をいっていた、というシンプルな種明かしを経て思い返すあれこれの恐ろしさ、背筋がざわつきます。
つまり、わざとあの場所に行き倒れ、わざと「お母さん」の指を握った。無免許にして親よりもうまくトラックを運転し、英語のウェブサイトで調べ物をする。あえて人目に触れるテレビ番組へ出演し、わざと「能力」を披露し、わざと記憶をなくしたふりを貫き、あえて実験施設へ連れ帰される。うわ。頭がいいって、怖っ。
さらにはその「いわゆる覚醒モード」の彼女が超ホラー。くりくりっとまん丸おめめを見開いて見下ろしてくるあのお顔はトラウマ級の怖さ。酪農少女のかけらもない。キム・ダミさんすげえ。からのバイオレンスサイキックバトル。所詮はザコに過ぎなかった『パラサイト』のお兄ちゃん、南無。
やってること自体は、いたって王道だと思うんですよ。絵面的には「覚醒して殺人マシーンと化す少女」ですから。ただ設定を「ずっと目覚めてはいたんだけど、ね」にすることによって新たに生まれる文学的な怖さみたいなものがとても斬新でした。
全然これで終わってくれていいんですが、ああいう終わり方好きじゃないし続編とか別に欲してないんですが、しいて言うなら親友ちゃん(ももクロれにちゃん似)があまりに寂しいクランクアップだったのであの二人をもう一度見せてくれ、元気に見せてくれ、という意味で続編『−第2部 衝突−』期待してます。
あ、ちなみに上に貼った覚醒(風)モードのお顔はだいぶソフトなセレクトで、すごいやつはもっとすごい。夢に出てくる感じ。っていうかわりと本当にトラウマでスクショも撮れない。目が丸いのって怖い。
(2020年169本目/Netflix)
- 発売日: 2019/03/08
- メディア: Blu-ray