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主に映画の感想文を書いています

2021年の鑑賞記録

映画「子供はわかってあげない(2021)」感想|あんまりわかってあげられなかった感想

『横道世之介』『おらおらでひとりいぐも』などの沖田修一監督作品ということで、この2作がとても気に入ったわたしとしては期待値をかなり上げていたのですが、ツボとか好みってなかなかシビアだなあと思ったりした次第。つまり、ちょっと合わなかったな〜寄…

映画「鳩の撃退法(2021)」感想|2時間たっぷり「分からない」を楽しめる至福のミステリー

(多分ネタバレなし)『鳩の撃退法』を観てきました。佐藤正午さんによる同名小説が原作とのことですが、文学に疎すぎるわたしは本作の予告編で初めてそのタイトルと対面。なんだ鳩の撃退法って、えらくかっこいいタイトルだな! KIRINJIのこれまたかっこい…

映画「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(2021)」感想|極上密度でひたすら幸せなB級スプラッターコメディ

新作洋画渋滞中の8月、ようやく『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を観ました。最低&最高でした。ネズミNGな人以外には全力でお勧めしたい、この夏のNo.1です。 ただし念のため補足しておきますと、言うてもこの映画スプラッターコメディなので…

映画「きまじめ楽隊のぼんやり戦争(2020)」感想|作り込まれた非現実的世界で起こるミスマッチな現実がつらい

棒読み、無表情、曲がり角は直角に。「かなり変な映画」だという評判は聞いていたので楽しみにしていたのですが、これが想像以上に曲者でした。 シュールにシニカルに「戦争」を想起させるような内容の作品なのかなと思っていたのですけど、蓋を開けてみれば…

映画「フリー・ガイ(2021)」感想|しっかりアップデートされた2020年代基準の爽快コメディ

現在公開中の映画『フリー・ガイ』を観てきました。昨年、最初の緊急事態宣言で映画館が営業休止になる直前あたりに友人と「あれ面白そうだよね」なんて話をした記憶があります。丸一年の延期を経て、やっと会えたねブルー・シャツ・ガイ。 まず最初に書いち…

内田吐夢監督の映画「宮本武蔵」シリーズ全5作を観た/入江若葉さん演じる「お通」のこと

1961年から1965年にかけて「1年1作」で作られた、内田吐夢監督の映画『宮本武蔵』シリーズ全5作を一気見しました。最初の3作は短めでサクサクいけるのと、毎回あからさまな「続く!」で終わるため、ドラマ感覚であっという間に完走。 ちなみに「わりと夢中で…

映画「サマーフィルムにのって(2020)」感想|チャンバラもラブコメだ! 誰も貶さない映画讃歌

先に総括しておきます。まず単純に青春群像劇としてめちゃめちゃ楽しい! 97分という短い尺でありながら登場人物全員が輝いてます。そして前述の説明だと誤解されそうですが本作はキラキラ恋愛映画もチャンバラ時代劇も等しく称える映画讃歌です! ぜひスク…

映画「ワイルド・スピード/ジェットブレイク(2021)」感想|荒唐無稽で結構だが麺は食え

盆明け、免許更新の足で『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』を観てきました。「もしも道路交通法がなくなったら……」をテーマにした優良者用講習ビデオです。ちょっと長かったです。 そんな(?)本作は『ワイルド・スピード』シリーズ9作目。じつはわ…

映画「イン・ザ・ハイツ(2021)」感想|ひたすら完璧で心地良いラテン音楽ミュージカル

いやはや……めっちゃ良かった……。素晴らしかった。尺は143分、結構長いんです。しかし一瞬の隙もない。ひたすら完璧。え、ちょっと、「この密度の完璧」でどこまでいくつもり??と心配にすらなる完璧。そしてそれが最後まで続く。一切の妥協なく作り込まれた…

映画「裏窓(1954)」感想|眼福のステイホーム・スリラー〈いいかげんヒッチコックを観よう③〉

以前から一番興味があったタイトルは本作かもしれません。なんか面白そうじゃないですか、「裏窓」って響き。そんな予感は的中し、かなり好きなタイプの作品でした。2021年の今観ると「ステイホーム映画の最高峰」などと言いたくなってしまう内容でもあり。…

映画「ある日どこかで(1980)」感想|強い気持ちで時空を超える、衝撃のトラウマ恋愛物語

かなり異色のタイムトラベル恋愛映画『ある日どこかで』を観ました。すごく……すごく良かったけど強烈なトラウマ映画にもなった感。寝る直前に観るもんじゃなかったな。 観たきっかけは、大林宣彦監督の『時をかける少女(1983)』。こちらの劇伴は松任谷正隆…

映画「めまい(1958)」感想と、併せて再見した大林版「時をかける少女」のこと〈いいかげんヒッチコックを観よう②〉

じつは観たことがないだなんて口が裂けても言えないのでこっそりヒッチコックを初見していこう週間、2本目は『めまい』です。はい、こちら前回の『サイコ(1960)』以上に100%初見です。逆にすごいと思うんです。 例によってネタバレ気にせず書いていきます…

映画「サイコ(1960)」感想|いいかげんヒッチコックを観よう①

大きな声では言えないのですが、ヒッチコックの『サイコ』を初めて観ました。どういうわけか縁がなく、これまでヒッチコックは『北北西に進路を取れ(1959)』しか観たことがなかったのです(それすらも観た理由が思い出せぬ)。 スリラー好きなのにこれは流…

映画「キネマの神様(2021)」感想|対になるような作品「海辺の映画館」との共通点を掘ってみる

山田洋次監督の最新作『キネマの神様』を観てきました。ちなみにわたし、山田洋次監督の作品はずばり『幸福の黄色いハンカチ(1977)』しか観たことがないという、「寅さん」すら全く観たことがないという、そんな超門外漢でございます。それがなぜ今回は観…

映画「サイダーのように言葉が湧き上がる(2021)」感想|不器用に溜めたその先カタルシス

アニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』を観てきました。本来は2020年5月公開予定だったとのことで、だいぶ延期になりましたね。 ちなみにこれアニメ音楽レーベル「フライングドッグ」の10周年記念作品だということを、所属アーティスト坂…

「海辺の映画館」は交響曲なのかもしれない 〜何度も繰り返し観て気付いたシンプルなこと〜

この映画を、初見から「すごくいい映画だった!感動した!」と絶賛できる強者はなかなかいないのではないかと思います。それよりもまずは圧倒されたとか、よく分からんけどすごかったとか、そのあたりが大多数でしょう。 わたしもガイド制作作業を始めるまで…

2021年7月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

新旧織り交ぜて16本、いい感じです。長らく未使用の固定費と化していたDisney+も『ファルコン〜』『ロキ』で一気に取り戻しました。噂に違わず『ロキ』おもしろかったなあ。「自分と向き合う」ことをこんなふうに描けるなんて、MCU恐るべし。 さて、新作粒揃…

映画「竜とそばかすの姫(2021)」感想|ミュージックビデオとしては、かなりいい。

『サマーウォーズ』で舞台となっていた「インターネット上の仮想空間」がどうやら再び登場するらしいことにとても驚きました。それも「二番煎じ」と揶揄できないくらい大胆なセルフオマージュもしくは連作、言ってしまえば『サマーウォーズ2』くらいの開き直…

映画「ブラック・ウィドウ(2021)」ほか「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」「シビル・ウォー」などの話

MCU最新作『ブラック・ウィドウ』を観ました。感想は「面白かったけど、忘れていることが多すぎた」。 てなことで、関連作をいろいろ観ていたここ一週間でした。まずはDisney +で配信中のドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』全6話。『ブラ…

映画「愛・アマチュア(1994)」感想|ハル・ハートリーを観る② 記憶喪失の男と魅力的な女性たち

先日『トラスト・ミー(1990)』で初ハートリーしたばかりのハル・ハートリー監督作品、続けて『愛・アマチュア』を観てみました。なんやねんって感じの邦題ではありますが、30年近く経てばまあこれくらいキャッチーなほうが残りやすいのかもしれません。『…

映画「SEOBOK/ソボク(2021)」感想|不老不死SFとしては弱いが、サイコキネシスものとしては大満足。

韓国映画『SEOBOK/ソボク』を観ました。主演はコン・ユとパク・ボゴム。大好きなんですわたし、コン・ユ。『トガニ』『新感染』『82年生まれ、キム・ジヨン』どれも絶品のコン・ユでしたが今回も最高にコン・ユしてました。 本作、「永遠の命を持つ生命体」…

映画「プロミシング・ヤング・ウーマン(2020)」ネタバレ控えめ感想|食らってしまってしばらく言葉が出てこない。

これまず、変な邦題をつけずにそのまま公開してくれたのが嬉しい! 配給会社様、ありがとうございます。 さてこの作品、そのポップなキービジュアルから『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』みたいな映画を想像する方も多いことでしょう。マーゴット・ロビー…

映画「カタブイ 沖縄に生きる」「返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す」シネマチュプキ7月前半鑑賞メモ

田端のユニバーサル・シアター「シネマ・チュプキ・タバタ」7月前半のプログラムで鑑賞した沖縄関連の映画を2本、まとめて書きます。書いてたら長くなったのでまとめなくてもよかったかもしれない(いつものこと)。 『カタブイ 沖縄に生きる(2016)』 『返…

映画「トラスト・ミー(1990)」感想|86年生まれ、初めてのハル・ハートリーにわりと驚く。

ハル・ハートリー監督、どうやらミニシアターブーム世代の方々には超懐かしい!!って感じみたいなんですが1986年生まれのわたし的には馴染みがなくてですね。せっかくの機会なので初ハートリー、観てみることにしました。 で、確かにこれ、30年前の映画とは…

至高の音楽映画「アメリカン・ユートピア(2020)」感想|めちゃくちゃ良かったとしか言えない

…というのもわたし、これまでトーキング・ヘッズもデイヴィッド・バーンも全く聴いたことがなかった上に、スパイク・リー作品と言われると一瞬身構えてしまうような感じだったので。では何を特筆すべきかといえば、繰り返しになりますが「めちゃくちゃ良かっ…

大林宣彦監督作品「可愛い悪魔(1982)」感想|これで人生狂わされたかった! トラウマ必至の「火サス」用作品

大林宣彦監督による『火曜サスペンス劇場』用作品『可愛い悪魔』を観ました。これはですね、かなり「いい」です。限りなく自主映画時代の、『いつか見たドラキュラ(1966)』的な雰囲気で作られた一本で、こんなのをテレビでやっていたのかと思うとニヤけて…

台湾映画「1秒先の彼女(2020)」感想|ただのラブコメでは全くない、超映画的バスロマンス・ファンタジー

現在公開中の台湾映画『1秒先の彼女』を観ました。とてもおもしろい映画だったので気になっている方はぜひこの記事なぞ読まずに観に行っていただければと思います。何をするにもワンテンポ早い彼女とワンテンポ遅い彼のラブコメ、といった感じで宣伝されてい…

大林宣彦監督作品「あの、夏の日 〜とんでろ じいちゃん〜(1999)」感想|要素てんこ盛りの尾道ファンタジー

大林宣彦監督1999年の作品『あの、夏の日 〜とんでろ じいちゃん〜』を観ました。 この作品は『ふたり(1991)』『あした(1995)』に続く「新・尾道三部作」の三作目となっています。もとの「尾道三部作」は言わずもがな『転校生(1982)』『時をかける少女…

映画「横道世之介(2013)」感想|これは吉高由里子ベストアクトである、と断言

吉田修一さんの同名小説を原作とした映画『横道世之介』を観ました。監督は『おらおらでひとりいぐも』の沖田修一さん、だったのか、と今知る。 横道世之介、「よこみち・よのすけ」と読みますが、これライムスター宇多丸さんの映画評や映画話に頻出するタイ…

2021年6月に観た映画を振り返る〈感想記事の一覧〉

新作9本、旧作12本。今月は久々にしっかり観れました。また、上半期終了のタイミングでちょうど「劇場鑑賞50本、総鑑賞本数100本」とぴったり辿り着けたのも気分がいいです。