現在公開中の映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観ました。これまず、変な邦題をつけずにそのまま公開してくれたのが嬉しい! 配給会社様、ありがとうございます。
監督はエメラルド・フェネルさんという、名前だけだとピンと来ませんでしたが『ザ・クラウン』のカミラ役の方なんですね。さらに『キリング・イヴ』シーズン2では殆どの脚本を手掛け、製作総指揮も務めておられたとのこと。わたしとってもお世話になってるわ。本作が映画監督デビューだそうです。
主演はキャリー・マリガン。『ドライヴ(2011)』や『華麗なるギャツビー(2013)』で見れるブロンドのショートヘアがたまらなく魅力的だった彼女ですが、今作ではウェービーなロングヘアが基本スタイルで、だいぶ違う雰囲気に。でもファニーフェイスな魅力は変わらず、さらにいい味出してます。次々変わっていく衣装やヘアスタイルも眼福です。それこそ『キリング・イヴ』のヴィラネル的な七変化ですよ、合点。
さてこの作品、そのポップなキービジュアルから『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒(2020)』みたいな映画を想像する方も多いことでしょう。マーゴット・ロビーが製作に入っているのも余計その先入観を生む要素です。しかしそう思い込んでいると、つまり新時代の痛快ヒロイン大活躍系を期待していると、これは食らいます。わたしは食らってしまってしばらく言葉が出てこなかった。
以下ネタバレ控え目でいきますが、まず序盤、『ハーレイ・クイン』を期待しているものですから「テンポ悪いな」とか思わなくもないわけです。ハーレイならここで背景ドッカーーーンだぞ、ってね。おまけにちょっと露悪的すぎやしないかと若干モヤつきながら観てたわけですよ。でもまあ、掴みづらい全体像が少しずつ姿を見せてくる展開はそれなりにサスペンスフルで、いきなりダーンッと巨大テロップが出るあたりなど大興奮だし、想像してたのとは少し違ったけどこれはこれで面白いなと。
で、お話の着地点も徐々に見えてきて「なるほどそういう話か」ってなるんですけど、それはすぐに覆されて「なるほど…そういう話か…」ってなるんですけどそれもすぐに覆されて「なるほど………そういう話か………」ってなるんですけどそれも──
ええもう、確実に3回は結論を取り下げる羽目になりましたね。悪い意味でもいい意味でもないけど113分が長かった。最初の「なるほどそういう話か」で、もう終わる頃合いだと思ってましたから。その後あんなに続くと思ってなかった。実際どんな時間配分だったのか、配信開始されたら確認してみたい。
とにかく、公式には「復讐エンターテインメント」と謳われてますけどこれ、面白かったー!っていう映画じゃないですよ。なんならトラウマ映画の類だと思う。それも観客自身へ「自問」が突き付けられてエンドロールという。終わって早々「あそこ誰々が出てたよね〜!」と盛り上がっていた男性客二人組、君たち大丈夫か? あの問いかけを理解したか? いや別にどう観ようが勝手なのだが、心配になってしまう切り替えの早さだった。
filmarksのレビューをちらっと見たら「悔しい」というレビューを書いている方がいて、ああ確かに、悔しい、その感情もあるな。思えば序盤からずっと、決定的なカタルシスはないのだ。
ううん、これは、つい文体も変わってしまうほど、衝撃的な作品でした。何かと無自覚で都合よく解釈しがちな我々男性は、特に観るべきです。
(2021年123本目/劇場鑑賞) 追記: 女性目線での感想について、アトロクで宇垣美里さんが話していたものを一部書き起こしました(こちら)。