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映画「サマーフィルムにのって(2020)」感想|チャンバラもラブコメだ! 誰も貶さない映画讃歌

現在公開中の映画『サマーフィルムにのって』を観てきました。評判がいいのは知っていたんですが、最近こういう雰囲気を打ち出してる映画多いじゃないですか、『アルプススタンドのはしの方(2020)』とか。

「アルプススタンドのはしの方」ポスター「サマーフィルムにのって」ポスター
言わんとしていることは分かってもらえると思う

そんなことも作用してか危うく優先順位低めになっていたところを引き上げてくれたのはリアルなクチコミでした。やっぱり最終的には何よりも誰かの「良かったよ」が効くよなあと思う今日この頃です。んでもって、観れてよかった!! すっごくいい映画でした。

高校生たちが映画作りをする話

ざっくり言うと、そういうお話です。映画部に所属するヒロイン「ハダシ伊藤万理華」は時代劇が大好き。勝新マイラブ。でも部活で撮っているのはキラキラ恋愛映画。さっきから「好き」しか言ってないじゃん! こんなラブコメ、私の映画じゃない!

かねてから時代劇の青春映画を作りたいと構想していたハダシ。別に部活以外で撮ったっていい。金はバイトでどうにかする。ただ、脚本のイメージに合う主役がいなくてさあ。そんな時、ハダシの前に理想の主役「凛太郎(金子大地)」が突如降臨! ビビッときた彼女は学年のはみ出し者たちを適材適所かき集め、自主映画チームで念願の作品を撮り始めるのでした。

この先ちょっとネタバレ要素も入ってくるので先に総括しておきます。まず単純に青春群像劇としてめちゃめちゃ楽しい! 97分という短い尺でありながら登場人物全員が輝いてます。そして前述の説明だと誤解されそうですが本作はキラキラ恋愛映画もチャンバラ時代劇も等しく称える映画讃歌です! ぜひスクリーンでどうぞ!



というわけで以下、少々のネタバレは含みつつのだらだら魅力語りをば。

もれなく愛せる登場人物

本作のポイント、まずはキャラクターの魅力! 伊藤万理華さん演じる「ハダシ」の、映画というよりは漫画から飛び出て来たような表情の豊かさ、はちきれんばかりのエネルギー、小動物的な愛くるしさ。あっという間に惹き込まれてしまうこと間違いなし。乃木坂一期生の方だったんですなあ、全然知らなかった。

そして彼女の親友たち、河合優実さん演じる「ビート板」と祷キララさん演じる「ブルーハワイ」。ハダシが文系だとするならば、天文学部と剣道部の彼女たちは理系と体育会系。バランスよく揃ってます。ところで「黒髪ボブにおしゃれ丸眼鏡」タイプのメガネ女子キャラ、最近よく見ますね。朝ドラ『ひよっこ』の松本穂香さんあたりがわたしは最初だったかなあ。

金子大地さん演じる運命の主人公「凛太郎」はいわゆるアオハル系イケメンで、「打倒ラブコメ」側の主演俳優としてはいいアンバランス。最近まで大河ドラマ『青天を衝け』にも出ておられたぶっちぎりの年長者・板橋駿谷さん演じる「ダディボーイ」も初登場の瞬間から愛おしくてたまらない俺物語系男子。そのほか周到なプチ伏線回収の適材適所ヘッドハンティング、文句なし。

以上を自主映画チームとするならば、もう一方「大手映画会社=映画部」側のボス、甲田まひるさん演じるスーパーキラキラガール「花鈴」も最高の役どころ。監督兼主演、おそらくは脚本編集もつとめているであろう彼女、相容れない敵かと思いきや……??


映画「サマーフィルムにのって」より
映画「サマーフィルムにのって」より


脚本の巧さも相まって、97分尺にしては比較的多めの登場人物たちがそれぞれ個性的に、かつ好印象を与えるかたちでキャラ立ちしているのは見事です。SF要素を軸にし過ぎないのもいいですね。やけに事情の飲み込み早いしね。まあ謎の球体からホログラム出たら信じるよね、くらいの。

またおそらくCMやMVなどを中心にキャリアを積まれた監督であるからでしょう、映像のみで物語世界を広げていくのがめちゃくちゃ巧いなと感じました。「定点で捉えた部室」で楽しくつつましく描かれる起承転結(このシーン大好き!)、「文化祭の校内」のただただ楽しいワンカット群像劇etc...作品の軽量化をしつつ旨味はたっぷり。長編映画デビュー作とは到底思えない手腕です。

きわめてフェアな映画讃歌

この映画、非常に感動したのが「ライバルは作っても敵は作らない」こと。時代劇でラブコメを蹴散らしていく構図になるのかと思いきや「方向性こそ違えど映画への本気度は同じ」という着地になっていくのがとても好きです。剣を交わすか言葉を交わすか、決闘か愛の告白か、時代劇もラブコメも同じなのだ、チャンバラもラブコメだ!!

文化祭前夜、ハダシと花鈴の休戦タイムも印象的。本気で恋愛映画を愛し、作ろうとしている花鈴。最後まで気持ちを伝えないタイプの作品もいいよねと涙を拭いつつ、でも監督である彼女自身のこだわりとしては「私の映画では絶対言うけどね」と揺るぎない作風を強調する。かっこいい。ああ、本当に同じ情熱なんだなあ。

時代劇の見え方が変わる作品であるのはもちろんとして、本作を観たあとはアオハル系ラブコメ映画の見え方も変わると思いました。そもそも松本壮史監督も、これまでのお仕事を見るにアオハル系の作品で多く実績を残されているはず。もしかすると揶揄されるようなこともあったかも。「全然眼中になかったや」と歯を食いしばったこともあるかも。そんな目線も入っているのかも、しれません。


未来にはもう、映画なんてないんだ。5秒がいいとこ、1分なら長編。他人の物語に使う時間はないんだよ──。これ、割とあり得るなと思って。劇中で最もサイエンス・フィクションみが強い設定とも言えます。ただ、この設定は劇中のリアルというより、映画讃歌へと繋がる大きなテーマ「それでも映画を作る意味」を深く考えさせるための仕掛けなのでしょうね。

時をかけるフィロソフィー

文化祭での上映も終盤に差し掛かった頃、ハダシは映画をストップし、ラストシーンを撮り直す!とその場で立ち回りを始めます。ここまでいい調子だったのに最後の最後で映画じゃなくなっちゃうの??と最初やや萎えたのですけど、よくよく考えれば今観ているのは映画だ、とも気付いて不思議な気持ちになりました。映画を語る映画は映画で終わってほしいのか、それとも映画が現実に作用する様を見せてほしいのか。うーむ(答:作品による)。

さておき、この終わり方から連想したのが(当ブログ的には毎度お馴染み)大林宣彦監督の遺作『海辺の映画館─キネマの玉手箱(2020)』のラスト、「エンドマークではなく、ここで映画は突然中断いたしますが…」とぶった切るようにエンドロールへと突入するくだりでした。

「映画で過去は変えられないが、過去から学んで未来を変えることはできる」というのが『海辺の映画館』の、そして劇中に原作が登場する『時をかける少女(1983)』にまで遡っても通じる大林作品共通の語り口。『サマーフィルムにのって』もじつは全く同じ構造なんですよね。

こちらのインタビューによれば監督・脚本のおふたりも確実に大林作品を意識はされていた様子。大林監督の「フィロソフィー」が受け継がれているなあと嬉しくなったのでありました。いかんまたつい、全ての話を大林宣彦に着地させる癖が。でもね、わたしなどは「グレーの制服」な時点で目配せだと思ってしまうわけ!(参考:映画「めまい(1958)」感想と、併せて再見した大林版「時をかける少女」のこと|いいかげんヒッチコックを観よう② - 353log


以上、めちゃくちゃいい映画だったのでぜひスクリーンでご覧ください! Cody・Lee(李)さんによるED曲『異星人と熱帯夜』も最高です。最後の最後まで完璧!


(2021年137本目/劇場鑑賞)

あと、今すぐにでもジンバル買ってスマホで映画撮りたくなる映画でした(なのでジンバル貼っときます)。