先日『トラスト・ミー(1990)』で初ハートリーしたばかりのハル・ハートリー監督作品、続けて『愛・アマチュア』を観てみました。なんやねんって感じの邦題ではありますが、30年近く経てばまあこれくらいキャッチーなほうが残りやすいのかもしれません。『神(帰ってきたフライング・アロウ)』的なことよ(突然のマイケル・シェンカー)。
さてこの作品、カフェで原稿を書いている女性のシーンから始まります。タバコを咥え、文章を音読しながらタイプする女性。しかしどうも様子がおかしい。というか、内容がわいせつ。他のお客様に迷惑なのでは……と思った瞬間「ちょっといい加減にしてよ!!!」。ナイス・クレーム。
これ真っ先に連想したのが大林宣彦監督の『女ざかり(1994)』という(偶然にも同じ1994年の!)作品の冒頭です。主演の吉永小百合さんが黙々と朝食をかっ込んでいる後ろで、庭先の娘が檀一雄『花筐』の一節をうっとりと朗読している。微妙な空気感がしばし続いたのち我慢しきれなくなった吉永小百合さん、「何それ気持ち悪い!」と一刀両断。そこだけめちゃくちゃ似てるので是非あわせてご覧ください(本作と同じくU-NEXTで観れます)。
『愛・アマチュア』のほうに戻りまして、わいせつな文章をタイプしていた女性はフランス映画界の至宝イザベル・ユペールさん。本作のヒロインその1であり、U-NEXTの作品ページに書かれている表現を拝借すると「尼僧からポルノ小説家に転身した女性」の役を演じます。なんだその掴みの良さは。
ヒロインその2は、ハル・ハートリー作品の常連であるらしいエリナ・レーヴェンソンさん。彼女が演じるコケティッシュかつ裏社会のにおいがする前髪パッツン女はもう一見して魅力たっぷりで、第一印象は「『パルプ・フィクション(1994)』っぽい」でした。ってあれ、こっちも1994年?! 連想する作品すべて同じ年じゃないか。どういうこっちゃ。
この二人に加えて、『トラスト・ミー』の主人公でもあったマーティン・ドノヴァンさんが本作でも主人公「記憶喪失の男」を演じます。記憶喪失の男を拾った元尼僧のポルノ小説家、その男と何か因縁がありそうな前髪パッツン女。さあ一体どんな物語が展開していくのでしょうか。
ってなところでそれ以上内容には触れませんが、とにかくメインキャラの女性二人が魅力的! 女の人が魅力的な映画はもうそれだけで満足、というわたし的には大満足の一本でございました。程よいコメディ感も好きな塩梅。終盤の脚本は雑かなあと思いましたけど、まあ、よい、まあよい。普通に面白いです、おすすめです。
(2021年112本目/U-NEXT)
観る③「シンプルメン(1992)」
後日さらに観たけど記事ひとつ書くほどの気力はない『シンプルメン』について追記。超ざっくり言うとロードムービーで、いろんな人たちが交差したりしなかったりする群像劇です。こちらも前髪パッツン女ことエリナ・レーヴェンソンさんがメインキャストに入ってます。
これまでに観た2本よりもオフビートやらシニカルやらシュールやらそのへんの色が強く、自分のツボに入る瞬間が時々ある、みたいな作品でしたね。女を惚れさすことしか頭にない傷心男とか、ガソリンスタンドのギター男とか、ところどころ好きでした。観るタイミングによってはもしかしたらかなり刺さる類の映画かも、と思ったりもしました。
(2021年118本目/U-NEXT)