映画「フリー・ガイ(2021)」感想|しっかりアップデートされた2020年代基準の爽快コメディ
現在公開中の映画『フリー・ガイ』を観てきました。昨年、最初の緊急事態宣言で映画館が営業休止になる直前あたりに友人と「あれ面白そうだよね」なんて話をした記憶があります。丸一年の延期を経て、やっと会えたねブルー・シャツ・ガイ。
まず最初に書いちゃいますけど、あのサプライズはすごい。大人の事情を逆手に取ったものらしいですが、それにしても意外と寛容! 下がりかけてた某社の好感度ちょい上がりました。公開延期であれをずっと黙ってなきゃいけないのは関係者の皆様さぞかし辛かったでしょう。…ぼかしたまま書いてますが、なんじゃらほいという方はぜひ観てくださいね(笑)
さてこの映画、ライアン・レイノルズ演じる「ゲーム内のモブキャラ」が自我に目覚めていくというAIものでございます。最近の作品だとHBOドラマ『ウエストワールド』的でもありますし、実在する様々なゲームへのオマージュが色濃い(らしい)なんでもありのデジタルな世界観は『レディ・プレイヤー1(2018)』的。バーチャル世界と現実世界が並行して描かれるのも同じくです。
わたしはゲームを全くやらない人なので、映画ネタが中心にあった『レディ・プレイヤー1』と比べて「隅々まで楽しみきれた」かといえば否なのですが、ゲーム門外漢であろうと単純に楽しい映画であることは間違いないのでどなた様も観て損はないと思います。
出演者もライアン“デップー”レイノルズを筆頭に、『キリング・イヴ』のヴィラネル様ことジョディ・カマー、『ストレンジャー・シングス』のスティーブことジョー・キーリー、監督業も役者業もキレッキレのタイカ・ワイティティ等々たいへん「嬉しい」キャスティングです。
また「観て損はない」もうひとつの理由として、なんでもありの仮想世界を通じて語られる内容が思いのほか大真面目な、時代性を大いに反映したものであることも挙げられます。
「フリー・シティ」というゲームの中で「モブキャラ」として生を受けた人たちは、ごく限られた生活・仕事を日々繰り返し、何も悪いことをしているわけではないのに襲われ撃たれ殺される、そんな毎日を送っている。それが当たり前だと思っていないか? 抗えないと思っていないか? 見えない壁を取り払って、視野を、世界を広げて。本当は何だってできる、何にだってなれるんだぞ。──広義にも狭義にも取れるこんなメッセージがさらっと出てきて、不意打ちにハッとさせられてしまいます。
その他なんとなく好きなシーンは、たとえば主人公の「ガイ」がヒロインのキスによって呪いから解けるという逆展開。撃たれるのが怖くて常に両手を挙げていた「彼」のその後。これまでは強盗が襲撃してくるたび腰からホルスターを外していた警備員「バディ」が最後にホルスターを外すシチュエーションetc...。
公開当時あんなに熱狂した『レディ・プレイヤー1』は数年経って観てみるとラストに少し「あれっ?」と思ってしまったりもしましたが、似たような作品でも確実に少しずつアップデートされてきているのが嬉しいです。
(2021年138本目/劇場鑑賞)
そういえばとあるシーンでアステアの「Cheek to Cheek」が流れてたのは、あれはどういう意図があるのだろう……。わたし一番興奮したの、そこなんですけど(サプライズは除く)。