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主に映画の感想文を書いています

まっぷるさんで新海誠作品7本の紹介記事を書きました

「天気の子」の聖地、田端駅南口の実景写真。

まっぷるトラベルガイド」さんにて、新海誠監督の劇場用作品全7本について記事を書かせていただきました。それぞれ簡単な作品紹介と聖地ガイドになっています。

新海誠監督につきまして良く言えば「フラットな視線を持つ」、悪く言えば「熱心なファンじゃない」わたしが大変僭越ながら担当させていただいた本記事ですが、執筆を経てだいぶ「好き度」が上がってしまいました。

こういう機会でもないとなかなか全作品を一気見することもないでしょうし(熱心なファンでないなら尚更)、とてもありがたい経験でした。記事のほうにも私的な感想らしきものは混入させておりますけども、はみ出た部分などをこちらで補足していくことにします。

ほしのこえ(2002)

だいぶ久しぶりに観ましたが、新海誠的背景美術の仕上がりっぷりが本当にすごい! そしてとにかく、現時点での最新作『天気の子』に至るまでの「見たことあるシーン」が続々登場してくるのも鳥肌もの。

ラストシーンの「階段」は『君の名は。』で名所となったあの階段を連想させるものですし(こちらはこちらでモデルが存在しているようです)、屋上から「放射線状に伸びる何か」を眺めている主人公の画もやはり『君の名は。』そのもの。クレーターのような地形も多くの作品に登場します。

「うわ、この頃からもうこれやってるんだ」っていうゾクゾク感は、それこそ少し前のわたしが大林宣彦監督に心酔した理由と同じで、つまるところ「あからさまな作家性」「マンネリじゃなくて署名」みたいな、好きなんですこういうの本当に。全作品通して観たことで一気に自分的評価の上がった作品でした。

雲のむこう、約束の場所(2004)

これは、いつか観たはずだけど全然記憶がなくて、もしかしたら初見なのかも。端的に言って「すごく好き」でしたね。南北分断された日本という設定がまずツボだし、そびえ立つ白い巨塔の異物感もたまらない。巨大建築好きなんです。圧倒的巨大さの無機物に弱いんです。円柱かと思ったら四角柱なのもいい。

一本線=今回なら巨塔で「空が分割」される描写も、新海作品ではよく出てきます。代表的なものは『秒速5センチメートル』第2話、ロケットの軌跡で二分される空でしょうか。大気中にできる影が特徴ですね。

どんどんSF色が強くなっていく物語展開も好みだし(『君の名は。』『天気の子』に通じる要素がいっぱい!)、満を持しての飛行機ヴェラシーラの発進シーンもめちゃめちゃかっこいいし、ううむ、これは傑作です。

秒速5センチメートル(2007)

こちらは言わずもがなだし何度も観てるので省略しますが、「踏切で向こう側の人影が消える」っていう描写、『ほしこのえ』か『雲のむこう〜』か、どっちかに同じのがあってびっくりして。それを踏まえて、あらためて『君の名は。』のそれは野暮だよ、と思うのでした。

星を追う子ども(2011)

初見でした。というか、この機会がなければ観なかっただろうなって。世評に左右されちゃうタイプなので。そんでもって序盤はやはりその「ジブリ感」に顔をしかめてしまったのですけど、しかし観進めていくにつれ、だんだん「ジブリの皮をかぶった新海誠」になっていくのが興味深かったです。一気見しないと気付けなかったかもしれない。

記事にも書きましたが、『ほしのこえ』との共通点が多い作品でもあります。『ほしのこえ』終盤、けっこう『星を追う子ども』そのもの!みたいなビジュアルが出てくるんですよ。

また、インタビュー等を読んでいくと、この「ジブリ感(正確には「世界名作劇場」感)」に対する監督の意図というのもだいぶいろいろ知れて、なるほどなあと。どの作品についても新海監督、こちらが顔をしかめるような部分に関して比較的しっかりと回答してくれている気がします。

言の葉の庭(2013)

言の葉の庭

言の葉の庭

  • 入野 自由,
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爆弾低気圧の、寝てるしかないような大雨の日にベッドの中で観ました。最高のシチュエーションでした。こちらも『秒速』くらい何度も観ている作品ですけど、いやはや、あらためて、美しい。尋常でなく美しい。おそらく背景美術的には最高傑作だと思います。こんなに美しいアニメーションはそうそうない。

ここ数年わたし新宿駅をよく利用するのですが、JRのホームからこのアングルで見上げるドコモタワーの頭がすごい好きで、そしたら監督も同じところを切り取っていて。映画のなかの印象は残ってなかったんですけど、今回あらためて観て、あ、こんな開始早々に登場させてたんだって。サブリミナル的に影響されていたのかもしれません。

君の名は。(2016)

劇場公開時以来の鑑賞でした。あの年わたしは『シンゴジラ』に熱狂していた組ですが、あれだけ大ヒットした事実を知った上で観ると、この奇跡的なバランスはいや〜すごいなと。それに尽きます。

国立新美術館には「新海誠展」でも行っていますが(友人に誘われて着いて行った、くらいの熱量)、今回記事に挿入されているのは昨年ワクチンを打ちに行ったときの写真です(笑) カフェを上から撮った写真素材がなかったのでカメラロールから発掘してきました。

国立新美術館文化庁の職域接種がある!っていうことで、ミーハーなので電車乗り継いで行ったんですよね(よくない)。3回目はもう新鮮味もなくなって、地元で受けました。

『天気の子(2019)

天気の子

天気の子

  • 醍醐虎汰朗
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こちらも劇場鑑賞ぶり。ここからようやく当ブログに感想があります。久しぶりに読み返しましたが、へえこんなこと書いてたんだと他人事のように読んでしまいました。まっぷるさんの記事のまとめとも通じていて、わたしにとっての新海作品はやはりそこが評価ポイントなのよねと確認した次第です。

で、今回しれっと書きたかったのは「田端」です。わたくし今「シネマ・チュプキ・タバタ」に関わらせていただいておりますゆえ、とにかくしれっと田端を推したいと画策していたわけなのですけども。

「山手線いち地味な駅」こと田端駅、初見時はチュプキのことも知りませんでしたので、「田端が沈む」あのビジュアルぐらいしか記憶になかったんです。でも今回観直したら、あれま、そもそもヒロインが田端住まいなんだ!とか(それすら覚えてなかった)、今はなきホテルメッツや、JRの支社も映ってるじゃーんとか。田端解像度かなり高めで観れておもしろかったです。しれっとする必要もないほど正真正銘の聖地でした。

記事中の画像はこの時の写真をやはりカメラロールから発掘して使っております(撮り直しに行く時間がなかったので……)。

今回気付いたことは、主人公たちが逃げる「真夏の雪」のシーン、あれって田端から池袋まで行ったところで山手線が止まってラブホへ駆け込むんですけど、その移動距離の短さが「子ども」っていう感じすごくしますね。ほんの数駅しか動いてないんですよね。なんか、妙に好きなディテールでした。

というわけで以上、補足編でございました。

あと今月はもうひとつ、『「泣ける映画」をもっと語りたい! 〜韓国映画編〜』も公開されております。こちらの記事との連動企画で、よりじっくりとあれこれ書いている記事です(もはや「泣ける」とはだいぶ離れた内容になってます)。

例によって全作品観直してますが、なかでも『タクシー運転手 約束は海を越えて(2017)』の感想が、初見時とはだいぶ違ったものになりました。ご興味ありましたらぜひお読みくださいませ。