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是枝裕和監督作品「誰も知らない(2004)」雑感|こんなのきっと気付かない

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幻の光(1995)』『ワンダフルライフ(1999)』『DISTANCE(2001)』と順番に観てきたところで一年近く途切れてしまっていた是枝裕和監督の作品履修を再開。まずは2004年の『誰も知らない』から。

実際に起きた育児放棄の事件をモチーフとしたオリジナル脚本の本作、その構想は是枝監督の商業映画デビュー以前に遡り、本当はこの作品をキャリア1作目にしたかったのだとか。「社会的に見たら完全アウトな状況なのに、ほのかに温かく楽しい」という序盤の構図はのちの『万引き家族(2018)』とも非常に近い世界の物語と言えますし、監督の根っこ的なものがこのへんにあるのでしょう。本作がデビュー作となった柳楽優弥はなんとカンヌで最優秀主演男優賞を獲得(タランティーノのお墨付き)。是枝監督の名を世界に広める大きなきっかけとなった作品、のようです。

映画は、母親と少年がアパートに越してきたところから始まります。母子揃ってご近所にご挨拶。何か起こるのはまだ先の話なのかしら、と思っているとどっこい仰天の「荷ほどき」。こ、こんな淡々と素朴なタッチのくせしておぞましいくらいあり得ないことが起きている……。とはいえ前述したようにしばらくは温かく楽しそうな生活が送られていくため、明らかにアウトな何かを見てしまったけれど「ま、まあいいか」と一旦流して傍観。しかし、そのうちやっぱり見過ごせないくらい大変なことになってしまい、最終的には取り返しのつかない結果を迎えることに(中身のなさすぎるあらすじ)。

何も起こらないような映画のふりして何見せてくれてんのよ、という感じの「静かに壮絶な映画」なので、未見の方の衝撃を奪わないようここでは明記を避けますが、観終わってからもう一度冒頭を観直したとき、たいそうショックを受けました。身近でこんなことが起こっていても、きっと気付かないのだろうと思います。そしてやはり是枝作品は、うわあとなってしまって感想が書けません。

(2020年166本目/PrimeVideo)

誰も知らない

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