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主に映画の感想文を書いています

大林宣彦監督作品「22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語(2007)」雑感

2007年公開の大林宣彦監督作品22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』をレンタルDVDで観ました。伊勢正三さん作詞作曲のフォークソング22才の別れ」をモチーフとした作品になっており、こちらは未見ですが2002年公開の『なごり雪』に引き続いての「大分映画」シリーズとのこと。

タイトルはパッと見「Lyrics」かと思っていたら「Lycoris=リコリス」で、彼岸花のこと。「葉が出るときは花がなくて、花が咲くときは葉がない」という特性から「葉見ず花見ず」の別称があるのだそうです。

あらすじ

40代独身、年収1500万、しかし無精子症で子供を作れない男・俊郎筧利夫のもとに、近所のコンビニで働く20代の女が「私と援交してください」と突然あらわれる。子供は欲しくないと言う彼女に、こんな物語も悪くはないかと急展開の結婚を考える俊郎だったが──

雑感

いかにも00年代の大林映画というテイストで、かなり地味な部類には入ると思いますがじんわりと後味のいい物語でした。同年公開の『転校生 -さよなら あなた-』と共通して「画面がナナメ」なのも特徴です。2007年の大林監督は常に首が傾げていたのだろうか。

何箇所か、妙に『さびしんぼう(1985)』と重なるようなシーンがあって何か意図でもあるのかなと思っていました。例えば、ボロいアパートを見られるのが恥ずかしいからと家の手前で見送りを拒むヒロインの姿。または自転車の故障を直してあげることで距離を縮める主人公とヒロイン。どちらも既視感です。でもラストの展開を見て、なるほど!と。リアル寄りにした『さびしんぼう』みたいな話だったんですね*1

大林作品にしては極端に地味なヒロイン、一挙一動がシリアスになってしまう筧利夫さん、そもそも全体的に華のない感じ、となかなか入り込みづらい作品でしたが、後半で登場する窪塚俊介さんの「人と深く関わらないようにしようとする」理由がとても共感できるものだったりして勇気をもらえました。また、一見かなり淡々としている物語が「意外としっかり構築されている!」と少し驚いてしまう終盤の静かなる畳み掛けもなかなか見事でした。

ぼくの映画人生 (実業之日本社文庫)

ぼくの映画人生 (実業之日本社文庫)

本作と『なごり雪』で舞台になった大分の臼杵津久見のことについては、ちょうど買って読み始めたばかりだった大林監督の自伝本『ぼくの映画人生(先日文庫化されました)』に詳しく書かれていましたので併せて読むと理解が深まるかと思います。

(2020年112本目/TSUTAYA DISCAS

ちなみにこの話、「ノストラダムスの大予言」の影響をもろに食らった世代、っていう設定の男女(筧利夫さん・清水美沙さん)が出てくるんですけど、「ノストラダムスの大予言」を書かれた五島勉さんってちょうど1ヶ月前くらいに亡くなられたばかりだったそうで。ふいにラジオでその話題を耳にして、ちょっと鳥肌が立ちました。

*1:「綺麗な人は綺麗に、そうじゃない人はそれなりに写りまーす」なんていう台詞が出てくるのも、『さびしんぼう』にお正月のご挨拶で樹木希林さんが出てくることを思うとニヤッとできます(笑)