映画「ひめゆり(2006)」感想|13年をかけ、ひめゆり学徒隊の生存者22名に向き合ったドキュメンタリー
柴田昌平監督によるドキュメンタリー映画『ひめゆり』をシネマ・チュプキにて観ました。本作で扱われているのは、太平洋戦争末期・沖縄戦で多くの犠牲を出した「ひめゆり学徒隊」。公開以来16年間、毎年6月23日「沖縄慰霊の日」に合わせて上映し続けてきたという作品ですが、わたしは今回が初見となります。
130分という長尺でありながら、本作はほぼ全編「ひめゆり学徒隊」生存者の方22名による証言映像から構成されているのが特徴です。監督はこの証言映像を撮影するのになんと13年の月日をかけたといいます。それは何より、生存者の方々が自らの気持ちで語る言葉を残すため。制作の経緯については公式サイト「作品概要」に監督の言葉で書かれておりますのでお読みください。
「まもなく私たちは70歳になります。いつまで生きていられるか分かりません。私たちの体験をきちんとした形で映像で記録できないでしょうか。遺言として残したいのです」
生存者の方々から言われました。
ひめゆり学徒たちの思いと体験は、マスコミなど伝える側の思いが強すぎ却ってきちんと耳を傾けてもらえなかったり、断片として切り取られ伝えられることが多かったのです。
(「ひめゆり」長編ドキュメンタリー映画 公式HPより抜粋)
淡々と続く22人分の証言は驚くほどさらりとしていて、しかしとてつもなく壮絶です。「切断した兵隊さんの腕をチリ箱へ捨てに行くのが、重かった」。こんなことを、さも夏休みの思い出かのように語らせてしまう戦争。腕の重さなんてわたし知りません。観ながら自分の片腕を持ち上げてみましたが、血が通っているから全然ぴんとこない。
また、いちばん記憶に焼き付いたのは「1秒でも早く死なないと捕まる」という少女たちの思考。殺してくれと頼み込む少女たちを、引率の教師たちは「もう少し様子を見てみよう」と鎮めたそう。当然ながら大人より子どものほうが芯から染まることになった軍国教育の恐ろしさを、心底感じました。
いま挙げた感想は本当にごくごく一部です。実際にご覧になって、さまざまなことを肌で感じていただければと思います。沖縄慰霊の日を控えた現在、ポレポレ東中野やシネマ・チュプキ・タバタほかで上映中(上映情報)です。ソフト・配信等は無く、上映のみの作品となっています。ぜひ足をお運びください。
(2022年106本目/劇場鑑賞)
こちらは、この映画から生まれた児童向けノンフィクション。刊行されたばかりです。