Netflixの韓国ドラマ「地獄が呼んでいる」感想|韓国と宗教とYouTuber時代のマリアージュ
早くも『イカゲーム』に次ぐ大ヒットを記録しているらしいNetflix製作の韓国ドラマ『地獄が呼んでいる』を観ました。『イカゲーム』も全9話と韓国ドラマ基準では短い作品でしたが、本作はさらに短く全6話。さくっと観ることが可能です。
※具体的なネタバレはありません、多分。
こちらまずポイントなのが、『新感染』シリーズのヨン・サンホ監督が手掛けている点です。前日譚的アニメ作品『ソウル・ステーション/パンデミック(2016)』では韓国社会の現在をエンタメ抜きで生々しく描き、続く『新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)』『新感染半島 ファイナル・ステージ(2020)』は実写ゾンビ映画というエンタメに振り切ってみせた監督。今作はその両方の要素を併せ持った、非常にエグいエンタメ作品となっています。
舞台は現代の韓国社会。普通に社会生活を送る人々が、ある日とつぜん人知を超えた存在から「お前は何日後の何時何分に死ぬ」と予告され、その日時になると三体のゴーレムみたいな処刑人が異界から現れて当該人物をボッコボコにしたあげく謎の熱線で黒コゲ焼死体にして去っていく。これは神が、あまりにも好き勝手に生きる人間たちへの警鐘としておこなっているものだ。地獄送りの「告知」であり「試演」なのだ。そう唱える新興宗教が勢力をつけ、人々は「神」に畏怖を抱きながら暮らすことになる──。
超ざっくりどんな話かというと「生きながら地獄送りを宣告された人たち」がどう行動するか、っていうお話で、まあそれだけ聞くとなんやねんって感じだし実際映像として見ても結構なんやねんではあるんですが、ただまあ不思議と真に迫るものであることも確かなんです。
単純なところで言えば、「死の宣告」って怖いんですよね。これは『イカゲーム』にも通じる要素で、あれも「ひとつ間違えたら死ぬ」「どちらかが確実に死ぬ」「数分後には絶対死んでる」みたいな恐怖が、デスゲームというフィクション中のフィクションでありながら手に汗握ってしまう。なんなら己をその場に投影してしまう。本作もそこは全く同じで、もし自分が「告知」を受けたなら、「試演」を待つ身なら、とキリキリヒリヒリしてしまう。
それから、社会の反応ですよね。本作で面白いのが、YouTuberみたいなのが出てくるんです。新興宗教の信者がネットを通じたインフルエンサーとなって、若者たちを感化させ、過激な行動に出させる。わたしはYouTuberカルチャーに乗れなかった人なのでその影響力について「よく知らないけど物凄いんだろうな」ぐらいの漠然なイメージしかなくて、それが余計に怖さを増長させるというか。知らない分、劇中の展開が本当にありそうと思えて仕方ありませんでした。
あとはなんかこう、韓国と宗教ってマッチングがいいんですよね。少なくとも日本よりはリアリティを感じる。映画でも『シークレット・サンシャイン(2007)』とか『哭声/コクソン(2016)』とか、宗教ベースの傑作が数多くありますからね韓国は。テイスト的にはパク・チャヌク監督とかキム・ギドク監督あたりのエグみとも近いと思いました。
ちなみにキム・ギドク監督というと、本作の何話目かで「釣り堀」が出てくるんですけども。これ日本の感覚だと全く知らないタイプの釣り堀なんです、湖の上に釣り小屋のフロートが浮いてる、みたいな。もしこのシチュエーションにご興味ある方おられたらですね、キム・ギドク監督の『魚と寝る女(2000)』という映画がまさしくこのワンシチュエーションで繰り広げられる物語となっております。
好きな人はかなり好きなタイプの「変な映画」なのでおすすめです。
と、いろいろ熱弁してまいりましたが、わたしの率直な感想としては「6話は短い」でした。それも「もっと見たい!」じゃなくて(見たくもあるけど)、「もっと話数を使ってじっくり描いてほしい」のほう。せっかく魅力的なキャラクターを創り上げているのに、退場が早すぎると思うんですよね。いやまあ、最終話のアレを見るに、今後、っていうのはあるんでしょうけど多分、ただ、そういうの、あたしあんま好きじゃない。と身も蓋もないことをボヤいて終わりとしておきます。