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映画「君はひとりじゃない(2015)」感想|ホラー映画からホラー演出を抜くとこうなる、のかも。

シネマ・チュプキ・タバタにて『ベイビーわるきゅーれ(2021)』日本語字幕&音声ガイドっていうかアクション実況付き上映(最高!)を観て帰ろうとしたところにお声掛けいただき、急遽『君はひとりじゃない』というポーランド映画の上映会に参加してきました。


映画「君はひとりじゃない」ポスター
映画「君はひとりじゃない」ポスター


予備知識ゼロで観たこの映画、序盤からなかなかシュールで、ヨルゴス・ランティモス作品であるとか、はたまたアリ・アスター作品であるとか、ちょっとワケありなアート映画の雰囲気が漂います。加えてささやかなポルターガイスト的現象なども発生し、これはホラーなのか?と思いきや、しかしジャンル映画的な何かが起こるわけではなく、ふんわりとハートウォーミングに幕引きとなります。出そうで出ないくしゃみみたいな映画です。

でもわたしはこの映画、すごいタイミングですごいもんに出会ったなと内心興奮していました。というのも、奇しくも前日に観たホラー映画インシディアス 序章(2015)とほぼ同じ設定の物語だったからでした(公開年も一緒!)。


インシディアス 序章』はジェームズ・ワン監督率いる『インシディアス』シリーズの3作目です。主なキャラクターとして以下の3人が登場するのですが──

  • 亡くなった母親に会いたくて霊能力者に頼る「娘」(父親のことは煙たがっている)
  • 娘のことは心配だし亡き妻にも会いたいが心霊現象には懐疑的な「父」
  • 紆余曲折ありつつ最終的には交信を一任される「霊能力者の女性」

じつはこれ、『君はひとりじゃない』にも全くそのまま共通する設定なのです。でも前述の通り、本作はジャンル的にはホラー映画というわけではありません。

最近ホラー映画をいくつも観ていくなかで、ホラー映画が「最終的には泣かされるヒューマンドラマ」である率が高いことを知りました。考えてみれば往々にして身近な人の死が関わってくるわけで、そこに人間ドラマが生まれやすいのは当然のことです。

ときに怖い映画が決して得意ではないわたしは、もしホラー映画にいわゆる「ホラー演出(音響効果やカラーグレーディング等)」がなかったらどんな映画になるんだろう、普通にいい映画になるのかな? などと考えていました。悪趣味にドーン!ギャーン!で脅かしてくるのやだなあ、それ抜きでも成り立つのでは? と。

で、その一つの答えが図らずも本作で見れたわけですけど、まあなんていうか、ジャンルの皮が剥がされることでかなり「変な映画」になっていたというのが感想です。やっぱり心霊現象的な話って視えたり視えなかったりそもそもがふんわりしているので、多少陳腐になろうともドーン!なりギャーン!なり何かしら明確な「それ」を出しておかないとメリハリが付きにくいのかもしれません。

そっかー、こんな感じかー、ちょっとスパイス足りてないかなー、と結局いつものジャンキーなホラーに戻ってしまいそうな学びでございました。好きなタイプの映画ではありましたが。でかすぎる犬と同居したい。

(2021年203本目/劇場鑑賞)