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主に映画の感想文を書いています

映画「マトリックス レザレクションズ(2021)」感想|過去作の再現、メタメタのメタ展開、仰々しいほどの愛。好きです。

まず最初に書いておくべきこととして、わたしが『マトリックス(1999)』を初めて観たのは7日前です。そして『マトリックス リローデッド(2003)』は2日前、『マトリックス レボリューションズ(2003)』は1日前に初めて観ました。時の流れが秒で過ぎるぜ、みたいな比喩ではなく文字通りの意味です。

クラスのみんなが弾避けイナバウアーをしていた頃にはかすりもせず、公開から22年を経てようやくあの社会現象『マトリックス』と対面を果たした。そんなホヤホヤの感想はこちらからご確認ください。

で、そのあと駆け足で『リローデッド』『レボリューションズ』を観たわけですが、正直すげえ興味わかなくて。サイバー世界でクラクラさせられるようなSFを期待していたら、なんか超ざっくりスターウォーズみたいなほうが主軸になっていくじゃないですか。いや別にそういうスペースオペラ的なの求めてないんですけど、とか思っちゃって。2003年の皆さんはどう思われたのでしょうか。

ひとつだけ面白かったのは『レボリューションズ』終盤の対スミス戦でネオが『ジョン・ウィック』のコンチネンタル・ホテルみたいなところに突き落とされるシーン。なんなの伏線なの???
ひとつだけ面白かったのは『レボリューションズ』終盤の対スミス戦でネオが『ジョン・ウィック』のコンチネンタル・ホテルみたいなところに突き落とされるシーン。なんなの伏線なの???


さておき、三部作をしっかり観てシリーズに対する愛着を深めて新作に挑もうと思っていたらむしろ興味をどんどん失っていくという不本意な結果になったわけです。そこにきて2021年12月17日金曜日、18年ぶりのシリーズ最新作マトリックス レザレクションズ』公開と相成りましたが、これがまた初日のTwitterに悪評がぽつぽつ(※個人のTLです)。Filmarksなど見てみてもボロカス評が多い。えーー。まじですか。ますます心折れるじゃないですか。

ただ、よくよく考えてみると新作に対するわたしの期待値はもともと高くなくて、作品への思い入れも全然育まれてない。もしもかつてのトリロジーを愛している人たちにとって「合わない」傾向があるのだとしたら、むしろわたしには「合う」可能性が高いのでは? あと、いつぞやの『キャッツ』しかりボロクソに言われてるやつを好意的に加点式で観るの得意ですよ。

かくして、おっしゃ!わいが救世主になったるでえという気持ちになったわいは公開初日のレイトショーに足を向けました。結果、普通にしっかり楽しんで帰ってきました。なんならトリロジーより好みだったと思う。これはまさしく「思い入れのなさ」の勝利です。よかった、22年寝かせといて。

※以下、何かしらのネタバレを含みます。


映画「マトリックス レザレクションズ」ポスター
映画「マトリックス レザレクションズ」ポスター


マトリックス レザレクションズ」ネタバレ感想

まず冒頭。1作目同様、スクリーン左上で点滅する四角いポインタが天井を白く照らし爆アガりする353さん。わたし的に『マトリックス』はここがピークだったので(ニッチ)早くも満足です。しかしさらに、そこからしばらく「1作目の再現」が続きます。あたくし「再現」に弱いんです。『レディ・プレイヤー1(2018)』や『ドクター・スリープ(2019)』に出てくる『シャイニング(1980)』の再現シーンだとか、映画体験のルーツにまで遡れば『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(1989)』のビハインド・ザ・魅惑の深海パーティー的なところだとか、そういうやつにめっぽう弱いんです。

大変美味な再現シーンを過ぎると、今度はメタメタのメタへ。いや、すごいですよ、この「メタ」。ドキュメンタリーかと思うレベル。さっきの『シャイニング』で言えば『ROOM237(2012)』のポジションと言ってもいいくらい「やりたい放題」の無許可風公式作品です。今回の世界ではキアヌ・リーブス演じるトーマス・アンダーソン君がゲームクリエイターになっていて、彼の代表作「マトリックス」トリロジーの新作を会社が作ることになるのだけど大人の事情プンプンで揶揄&揶揄。それを観ている映画館の我々が果たしてどの世界に属しているのか疑わしくなるようなクラクラ感。すき。

一応ここでネガティブめのことをひとつ書いておくと、思い入れのある層にはこのへんでもうアウトなのかもしれませんね。公式に思い出を汚されているようにも取れる演出ですしね。ポストクレジットシーンがその最たるもので、あれは蛇足だったんじゃないかなと、思い入れのないわたしでも思います。イラッとした。最後に星いくつか削りそうになった。まあ日本以外では誰もクレジットまで観ないそうですから全く無意味な「オマケ」なのかもですけどね。にしてもね。ネガティブここまで。

そう、で、個人的にはこのアンダーソン君ゲームクリエイター世界すごい好きで。1作目を観たときに、ああ『フリー・ガイ(2021)』って『マトリックス』的なお話だったんだと知ったんですけど今作では『マトリックス』が『フリー・ガイ』に寄せてるかのようで楽しいなあって。スミスやモーフィアスが別キャストになってるのもよかったですね。草薙素子のキャラデザはいくらでも変えられる、的な。スミスもモーフィアスも回想シーンで散々出てくるので別に大人の事情ではないのでしょうね。

なかなか感想が進みませんが、とにかく今回は仮想世界の場面が多くて嬉しいなと。ぼろぼろセーターの宇宙行きたくねえんだわと。そう思っていたのがバレたかのように途中からスペースオペラぶっ込まれます。坊主頭の中年ネオがなんとも寂しい。『ブレードランナー2049(2017)』のハリソン・フォードを思い出してしまった。そもそもわたし短髪キアヌが好きじゃなくて、今回ようやく髭ロン毛なジョン・ウィック・キアヌになってくれて嬉しかったのにまた剃ったよ!っていうね。こんなことばかり言っているから感想が進まないんだよね。

なんだっけ、そう、で現実世界の宇宙パート。ここは『リローデッド』と『レボリューションズ』を直近に観ておいてよかったです。でないとナイオビとか誰??になっちゃいますからね。あの宇宙船(ネブカドネザル号モデル)、トリロジーで見たときは何も感じなかったけど何故か今回はやたら格好良く感じたな。デザイン変わってないのに。こんな宇宙船の飛び交うド直球スペースファンタジーが現実世界で、仮想世界のほうがむしろ「現実的」であるということが『マトリックス』シリーズの斬新なところだったのかな。

いろいろ飛ばして最後、「君の名前は……」みたいなことになって、壮大な愛の物語として幕を閉じますけども、これも好きでしたね。トリロジーでのネオとトリニティーのラブストーリーはわたし的には鼻ホジでしかなくて、でも今回は、つるつるしてない中年男女になっていたからなのか、『センス8』ばりの仰々しさで演出してくれたからなのか、ラブ!!それは愛!!って感じでむしろ素直に入ってきました。あとちょっとなんか、ラストシーンのネオとトリニティーが『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3(1990)』ラストのドクとクララに見えちゃった。ああいう終わり方、好きなの。

『センス8』の名前を出したついでに新キャストの話。気付いた限りでは『センス8』組としてウォルフガング役のマックス・リーメルトさんと、ダニエラ役のフリーマ・アジェマンさんが出てて嬉しかった! あとバッグス役(こちらは本作の役名)のジェシカ・ヘンウィックさん、初登場シーンでの上目遣い顔がキムタクにしか見えなくてずっと「キムタク……」って思ってた。結構いろいろ出てる方なんですね。GOTのナイメリアとか、名前は覚えてるけど顔を覚えてなかったな……。

そんなわけで、すっかり楽しみました。確かにどういうつもりで作ったのか解せない位置付けの作品(内容)ではありましたが、やたらスケールの大きな珍作という意味でもわたしは好きです。「なんでもかんでも続編ってどうなのよ」と「愛!!」のカオスな煮こごりSF風味、美味でございました。あ、今の今まで忘れてたけどあの日本はなんだったの。あれは好きじゃないです。

(2021年218本目/劇場鑑賞)