映画「マリグナント 狂暴な悪夢(2021)」感想|全部盛りでめちゃくちゃ楽しい、ジェームズ・ワンの最新ホラー
『死霊館』シリーズのおかげですっかりホラーがクセになってしまったわたし。摂取したくてたまんないんですけど、ってことでちょうど現在公開中のジェームズ・ワン監督最新作『マリグナント 狂暴な悪夢』を観てきました。タイミングがいい!!
※ネタバレがないとは言いません。
いや〜〜〜。これめちゃくちゃ楽しかったです。笑っちゃうほど全部盛りで、最後にはホロッとしてしまう。もしかしてホラーって泣けるジャンルですか?(死霊館でも泣いた)
王道「館ものホラー」として始まって、死んでほしい男は秒で死んで、もうそろそろみんな「それ」に耐性ついてきたでしょってところでパルクールアクションになって、刑事もの、思いのほか景気のいいゴア描写、B級SFホラー、騙し合いサイキックバトル!みたいなところまで発展して、最終的には絆を確認し合って涙。血縁関係ファックオフ。これで111分しかないとは信じられない。
登場人物もかなり多いと思うんですがうまいこと散漫になっておらず、感情移入できる程度に描き込んだ人物は殺さない&殺す人物には感情移入の余地を与えない(さっさと殺す)という配慮がたいへん観心地のいい映画になっていました。
最後のほうで豪華なドールハウスがちらっと見えるシーンは、思わずアリ・アスター監督の名作『へレディタリー/継承(2018)』を連想。あちらも血縁関係ファックオフな物語だったので先輩から後輩へのオマージュ返しなのかもですね。建物内を露骨に「真上」から見せるカメラワークもドールハウス的で、オチと合わせて非常におもしろかったです。
よりネタバレ強め雑感
序盤の展開は『アナベル 死霊館の人形(2014)』とよく似ていたが、夫のクソさが段違いだった。とはいえ殺意に水が差されちゃうあたりも、さすがDV夫という感じ。改心してくれたら許してあげないこともない……とは問屋がおろさない。
アナベル・ウォーリスさん演じる主人公マディソン、これもまた『アナベル 死霊館の人形』の主人公ミアとよく似たタレ目の……と書いたところで、知る。同じ女優さんでした。似てるわけだわ。同じ人だもん。そらそうだわ。マジか。びっくりだな(ちなみに『アナベル 死霊館の人形』は前日に観ているのである、偶然)。ともかく、良い。この方、良い。
気を取り直し、マディー・ハッソンさん演じる妹ちゃんもとても良い。メイジー・ウィリアムズとかフローレンス・ピューみたいな、こういうタイプの眉つよガールがわたしはとても好きである。姉妹なのに髪の色全然違うんだな、という違和感にもちゃんと意味がある。脚本が上手い。
あらすじ言いたい。──血縁関係というまだ見ぬものに憧れを抱いていたマディソン。しかし長年自分を苦しめていたのはそのものずばり血縁だった。戦いを終え、自分を捨てた実母の前で義理の妹と血縁ファックオフな絆を確認し合う── 涙。めっちゃいい話。
窓から現れる妹ちゃんがクソ怖いシーンでは、『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。(2021)』の、爆音ルームで彼女がニュッと顔を出すシーンを思い出した。こういう無害なサプライズに飛び上がってしまうときが楽しい。
妹ちゃんは廃病院に単身乗り込み無傷で帰還しちゃう程度にはクソ度胸の持ち主でそこがまた好ましいのだが、愛車がプリウスなのは不安を増長するので唯一好ましくない。断崖絶壁駐車で寿命が縮んだ。
実家が『プロミシング・ヤング・ウーマン(2020)』と同じロケーションだとTwitterで見て、あっそうだよね!!となった。プロミシング〜みたいな話でもあるしね。あ、ひとつ前の『ひらいて(2021)』の感想にキャリー・マリガンのこと書き忘れたのを思い出した……(山田杏奈さんはキャリー・マリガンみたい、という話)。
屋根裏ドチャーンはわたし的にはうっかり完全に予想外だったので笑っちゃうほど楽しんだ。もう一度見たい、引きの画が!!
マディソンがVR犯行現場ビューに入るときの演出、すっごい好き。わくわくする。細かいこと考えちゃうとちょっと意味わかんなさすぎるんだけどそんな細かいこと考えてる暇のないジェットコースター展開なので有難い。終盤ふたりの世界に入っちゃうところも、リンチ版『DUNE』くらいのチープさが逆にいい。あそこ、衝撃の展開ではあるものの「いや、この脚本はそんなことしないよ」って信じられちゃうのがすごいと思う。たかだか100分くらいのお付き合いなのにね。
警察チームたちも良い。特にあの男刑事役のジョージ・ヤングさん、てっきり『ザ・ボーイズ』のディープかと思った。イチローでなきゃディープでしょ。ベッキー似の浮かれた彼女も好き。「警察にかけちゃった」が超かわいい。
とにかく死んでほしくない人みんな死なないのがとても嬉しい。しいて言えばお腹の赤ちゃんが心残りではあるが、血縁ファックオフな話である以上は仕方なかったのかもしれない。じゃあ妊婦じゃなくても良かったのでは?とも思いつつ、そうすると最後にマディソンが覚醒するにあたって動機が足りなくなるのかもしれない(ちなみに『アナベル 死霊館の人形』では同シチュエーションで無事出産できている。その代わり、血縁のない善人が死ぬ。難しい)。
ああ、ホラー楽しい。幸せ。しばらくハマっちゃいそうです。
(2021年194本目/劇場鑑賞)