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映画「インシディアス」シリーズ4作品を一気に観た|そっちが主役?!そんなSF展開あり?! 予想外が楽しい連作ホラー

死霊館』シリーズ8作品や『マリグナント 凶暴な悪夢(2021)』などを経て未だ止むことのないわたしのホラー映画ブーム。続きましては、同じくジェームズ・ワン監督率いるインシディアスシリーズ4作品を一気に観ました。

怖さという点ではだいぶ苦手なタイプで、4作品通して同じ感想だったので多分しっかりとコンセプトが定まっているのだと思います。ただしアイデア的な面白さでは『死霊館』シリーズをも上回るのでは??というぐらいの、思わず人に話したくなるような作品でした。

※以下、1作目『インシディアス』の結末などネタバレを複数含みます。


映画『インシディアス 第2章』かっこいい海外版ポスター
映画『インシディアス 第2章』かっこいい海外版ポスター


1作目のメインキャラクターは、悪魔に子供が取り憑かれた家族。もう手詰まり、というところでベテランの霊能おばちゃんが登場しますが、このおばちゃんは事態を解決した直後になんと亡くなってしまいます。せっかくの頼れる専門家が早くも不在となり、不穏です。

しかし観賞後にWikipediaを見ていると、おかしなことに気付きます。霊能おばちゃんを演じていた役者さんが、どういうわけか4作品全てに出演しているようなのです。えっ、死んだはずでは。果たして2作目以降この霊能おばちゃんがどのように登場してくるのか。そこが本作まず一つの面白さでございます。

それからもう一つは、劇中で「彼方」と呼ばれる霊界のルール。どうやら「彼方」では時空を飛び越えることができるらしく、それによる心霊現象のタイムパラドックス的なものが起こり得るのです。特に2作目のとある展開、ホラー門外漢のわたしとしてはかなり「斬新!!」と驚かされました。

そしてスピンオフ的な3作目と、スターウォーズでいえばローグ・ワン終盤からエピソード4冒頭へ向かっていくようなわくわく感を味わえる4作目、どれもそれぞれに面白いです。鑑賞順は、シリーズ展開の舵取り具合まで含めて楽しめる「公開順」をお勧めします。

といったところで以下、鑑賞ごとにつけていた感想メモです。ある程度ネタバレを含みます。

リン・シェイさん演じる霊能おばちゃんエリーズ
リン・シェイさん演じる霊能おばちゃんエリーズ

インシディアス(2010)

静かすぎるオープニングが怖い。そのくせ本編の強烈な音演出もいちいち怖い。セコムしてないほうがもう幾分か怖くなく済んだのではと思う。出てくる““奴ら””のなかでは、特に学帽姿の童が怖い。幽体離脱後に登場する「止まってる人たち」は映画的楽しさが勝った。「幽体離脱なんて……できてるーーーっ!!」のシーンも好きだった。

死霊館』シリーズと同じく「専門家」がついてくれるのに、なんだろうこのウォーレン夫妻より圧倒的に頼れる根拠がない感じは。得意か苦手かで言えば間違いなく苦手なほうのホラーであった。でも『死霊館』シリーズとの決定的な違いがいまひとつ思い当たらない。

インシディアス 第2章(2013)

前作の直後、3度目の引っ越しで実家に戻ってきたところから始まる。前半は前作同様のドッキリ音演出ホラーでかなり好かないのだが、二番煎じと思いきやいつしか話がSFめいてくる。まず、心霊現象の専門家たちがいることを逆手に取り、主要人物がこの世を去ったとしても「会いに行けばいい」という選択肢が生まれる。そして何やらあちらの世界では時空をたやすく越えられるらしい。それによる「前作の怪奇現象」の伏線回収がとても面白い。BTTF2的とも言える。

初登場時から「視える」キャラとして登場しているお母さんが今回は別班で専門家たちと行動しているのも面白い。ていうか、もはや生きながら「あの世行き」してるキャラクターがかなり増えていないか?

一点、トランスジェンダー差別に繋がりかねないキャラクター造形が難ありと感じたが、2013年だとまだ仕方ないのかもしれない。

インシディアス 序章(2015)

時系列的には1作目の前日譚。霊能者のエリーズとゴーストバスターズ的二人組がタッグを組むきっかけとなった事件を描く。ランバート家の人々は出てこないスピンオフ的な内容だが、ステファニー・スコットさん演じるティーンのヒロイン(今回の被害者)が魅力的で、これまでとは一味違った作品になっている。

相変わらず「前半は前作同様のドッキリ音演出ホラーでかなり好かない」のだけど(本シリーズはこれが本当に無理)、後半からはシリーズものの面白さを存分に活かしたお話になっており楽しい。それにしても、1作目で殺したエリーズを2作目では霊界に登場させ、3作目では前日譚として登場させ……、つまり『死霊館』シリーズのウォーレン夫妻と同じく、このシリーズはエリーズが主役なのだとここで気付く。

そのほか、壁一枚挟んだ想い人(結局ほぼ出てこなかったな!)とのゾッとするやりとり、ビデオチャット越しのゾッとするやりとり、隠してない隠しカメラのゾッとする使い方、骨折を利用したゾッとする挙動、自我の持ってかれ度をのっぺらぼうで表現する手法、覚醒したエリーズの「来いよ(クイクイッ)」の楽しさ、などなど見どころは多い。『裏窓』オマージュっぽさもよい。

インシディアス 最後の鍵(2018)

3作目『序章』と1作目『インシディアス』の間に入る、より前日譚的な作品。霊能者エリーズの幼少期と、それに関連した事象が描かれる。ここまでくるともう完全にエリーズが主役であり、ランバート家など脇役に過ぎなかったことがわかる。サイキックとサイドキックが主役なのである。また、生家における第三者の合流は『アナベル 死霊博物館(2019)』の感じに近くて好き。

終盤では1作目へとダイレクトに繋がっていくが、え、これエリーズのせいなのでは? わりと因果応報な1作目ラストだったのでは? と思った。さておき、ここまで観ると俄然もう一度1作目を観たくなる。循環構造のシリーズものとしてよくできている。

(2021年199〜201, 205本目/Netflix, PrimeVideo)

ちなみに5作目はランバート家のその後を描く物語として、なんとパトリック・ウィルソンが監督で進んでいるらしいです。なお小さな声で言うと、わたし1〜2作目の彼がパトリック・ウィルソン(『死霊館』シリーズのウォーレン夫)であることに鑑賞中は気付いてませんでした。似てるけど別人だと思ってた。役者ってすごい。