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Netflixの韓国ドラマ「イカゲーム」に出てくる「モヒートでモルディブ」とは(ネタバレあり)

愛の不時着』『梨泰院クラス』をも上回る世界的大ヒットを記録しているというNetflixの韓国ドラマイカゲーム』を観ました。デスゲームあんま興味ないしと見て見ぬ振りしてたんですけど、試しに観てみたら思いのほかしっかり「韓国エンタメ」していて、あっという間に完走してしまいました。通常の韓国ドラマは16話程度あるところ、全9話と短いのもいいですね。

特に好きなのが、韓国版『三丁目の夕日』みたいな昭和レトロ風味に放り込まれる第6話。極端な作り物感の中で極端にセンチメンタルなデスゲームをおこなうあのエピソードは非常に巧いつくりでした。ドキドキハラハラさせられる一方で己の人生を刹那的に考えさせられる深さもあって、確かにこれは目が離せなくなってしまうなあ、大ヒットもむべなるかな、と納得。

ただこの作品、ストーリーとは関係ないサプライズに頼ってる部分も結構大きいなと感じました。以下、思いっきりサプライズに触れますので鑑賞前の方は読まれないほうがよいです。


Netflixドラマ「イカゲーム」ポスター
Netflixドラマ「イカゲーム」ポスター


まず最初、コン・ユが登場します。メンコお兄さんです。韓国映画界の大スターです。わたし第4次韓流ブームに乗ってきた人なので『トッケビ』などドラマ時代のコン・ユは観たことがなくて、映画俳優の印象なんですよね。だからあの場面では「ドラマにコン・ユ!!! ただごとではない!!!」ってめちゃくちゃ掴み強かったです。

※コン・ユが出ている映画、当ブログ内では『トガニ 幼き瞳の告発(2011)』『新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)』『82年生まれ、キム・ジヨン(2019)』『SEOBOK/ソボク(2021)』の感想があります。

結局は最初と最後にしか出てこないんですけど、いつまたコン・ユが出てくるやもしれないという気持ちは視聴継続の強い動機になりました。これは導入に過ぎませんし、サプライズ要素ではありつつコン・ユを知らない人でもとりあえず掴まれるシーンでしょう。

問題は物語が佳境に差し掛かったところでの、衝撃のイ・ビョンホンです。あれは100%「イ・ビョンホンであることに驚く」シーンだと思うんですよ。だってイ・ビョンホンの(名前は知っていたとしても)顔を認識してない人にとってはあそこが初めましてでしょう。仮面の下がコン・ユだったらまだ分かるけど、いきなり知らないおじさん出てきてもどうリアクションしていいのか分かんなくないですか? あなたが……お兄さん……??

まあこういうのっておそらく韓国ドラマ界よくあるっぽくて、たとえば『梨泰院クラス』のパク・ボゴムとかも当時わたし知らなかったんでよく分かんなかったんですけど、みなさまご存知であること前提の「有無を言わさぬカメオ」なんですよね。脚本上の整合性ガン無視で、割とそういうの抵抗なくやるんですよね韓国ドラマ。なので話を戻すと、わたしはイ・ビョンホンをぱっと見で判別できたから大いにサプライズ受けられたけど、あそこでモヤッとした人きっとそこそこ大勢いたよね?っていう話です。

それでも世界的に大ヒットしたというのは、わたしがパク・ボゴムを知らなくても『梨泰院クラス』を存分に楽しめたようなもんなのかしら。いや、あれはオマケに過ぎないしなあ。あ、この話は特に何か答えを出すでもなく終わります。

その代わりにお役立ち情報。『イカゲーム』におけるイ・ビョンホンご登場、伏線はあります。先ほど好きと言った第6話センチメンタル回。あそこでイ・ユミさん演じるジヨンが、ずばりイ・ビョンホンが映画で言ってたでしょ “モヒートでモルディブでも一杯”って」と言うんですよね。

で、この「映画」はもちろん実在します。2015年の『インサイダーズ/内部者たち』です。

イ・ビョンホンと『秘密の森』『シーシュポス』などのチョ・スンウがW主演している映画で、わたしは去年観たばかりでした。感想記事の冒頭ではわたしも「モヒートでモルディブ」に言及しています。だもんで『イカゲーム』でのジヨンの台詞、おおっ!と、観ておいてよかった!と、めちゃめちゃ反応したんですよね。からの「仮面の下」ですよ。完全にやられました。

この『インサイダーズ/内部者たち』という映画、Wikipediaによれば「韓国ではR指定作品として『アジョシ』などを抜き、歴代最高の観客動員数を記録した」そうで、「モヒートでモルディブ」も韓国では誰もが知ってるレベルの名台詞なのかもしれません(チョン・ホヨンさん演じるセビョクは脱北者だから知りませんでしたけど)。残念ながらNetflixには入ってないみたいですが面白いのでぜひ併せてどうぞ。

他にイ・ビョンホンの映画といえば、まずは韓国映画史でも大きな存在である『JSA(2000)』。JSAとは韓国と北朝鮮軍事境界線上にある非武装地帯のこと。自分の感想読んで思い出しましたけど、かの軍事境界線ラブストーリー『愛の不時着』でも開始早々『JSA』が出てくるんでしたね。イ・ビョンホン主演作品、何かと引用されがちです。

最近では、日本公開は逆順ですが『白頭山大噴火(2019)』と『KCIA 南山の部長たち(2020)』がいずれも最高&素晴らしい作品でした。後追いで観た『JSA』は正直あまりピンとこなかったわたしも、最新作で遅ればせながらイ・ビョンホンの魅力に気付けました。おすすめします。

といったところで、みなさまの沼が深まれば幸いです。