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映画「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」とシリーズ過去作にハマる|よもやホラーで目頭を熱くするとは

滑り込みで死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』を劇場鑑賞してきました。いや〜、ド直球ラブストーリーで最後は泣いた。めちゃくちゃよかった。え? タイトル間違えてないかって? いいえ、まごうことなき『死霊館』シリーズ最新作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』です。

2013年から続くこの『死霊館』シリーズ、じつは今月に入って一気に観ました。脚本家・映画監督・スクリプトドクターの三宅隆太さんが配信している『スクリプトドクターのサクゲキRADIO』というポッドキャスト番組を最近聴いているのですが、その第2回と第3回で『死霊館』シリーズが扱われていたのがきっかけ。

三宅監督はホラー作品を主戦場とされている方で、今回のポッドキャスト配信は三宅監督が『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』のパンフレットに寄稿されたことを発端に、『死霊館』シリーズの「作劇」について解説するという企画です。自らもホラー作品の作り手である三宅監督が「作劇の観点から理路整然とホラー映画を解説してくれる」んですけど、これがもう全然ホラー映画の話に聞こえなくてめちゃくちゃおもしろいのです。

三宅監督のお話を聴いていて、ああホラー映画も人の子なんだよな、楽しんでもらうために創意工夫を凝らして作られたものなんだよなってあらためて思いました。そんなわけで観たい気持ちが募り、早速第1作死霊館(2013)を鑑賞。

死霊館(字幕版)

死霊館(字幕版)

  • べラ・ファーミガ
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ちなみにこれ、育児に勤しむオタクマザーと不定期開催している「お子そっちのけで映画を観る会(仮)」で観たのですが、わたしが選んだわけではなく偶然なんですよ、すごくないですか。しかも前回が『アクアマン(2018)』で今回が『死霊館』、彼女的には知る由もなくの偶然ジェームズ・ワン縛りなんですよ、すごくないですか。

さておき第1作『死霊館』、確かにドラマ要素が強めでホラー要素はオマケと言ってもいい程度、少なくとも『死霊館』なんていう字面から連想するような内容ではなかったのでへえ〜となりました。まあ映画の半分ぐらいは現実世界のキッズたちが目の前うろちょろしてて怖いムード皆無だったというのもありますけど(オタクマザーは隣で縮こまっていたのでそこそこ怖くはあるのだと思う)。

んで今度は翌日ぐらいに、我慢できず一人で第2作死霊館 エンフィールド事件(2016)を観ました。これがまたすごく良くて。クリスマスのね、ホリデームービーなんですよね。シングルマザーの家庭と怪奇現象、『ストレンジャー・シングス』が好きな人はきっと好きです。時代設定的にも80年代前後のレトロみがいちいち素敵。観賞後に丸一日ほどテレビが映らなくなりましたけど気にしません。

ここまでくると劇場公開中の第3作目も観たくてたまらなくなるわけですが、時すでにかなり遅し。関東圏の上映館がラスト1館、みたいな感じになってまして。でもそこはオタクの気合いで、最終上映に滑り込んできましたよ。本当に最終日最終回だったと思う。


映画「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」ポスター
映画「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」ポスター


いや〜、というわけで冒頭の感想になります。死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』観ました。ド直球ラブストーリーで最後は泣いた。めちゃくちゃよかった。え、なんかホラーで目頭熱くなってんだけど、ウケる、とか思いながらじんわりしちゃった。

いまさら『死霊館』シリーズについて作品説明をしますと、ウォーレン夫妻という「実在の」心霊研究家夫妻が毎回このシリーズには登場します。扱われる心霊事件も1970〜80年代の実話をベースにしているのが売りなんですね。ただし、心霊現象の専門家たるウォーレン夫妻を主役にしてしまうと「ホラー映画」が成り立ちにくい(冷静に対処しちゃうから)。そこで、三宅監督の言葉を借りるならば「ゲスト家族」を毎回登場させて代わりに怖がってもらう、と。なのでメインキャラクターは夫妻というよりそのゲスト家族のほうになるわけです。第2作目『エンフィールド事件』まではそうでした。

今作『悪魔のせいなら、無罪。』にもゲスト家族は登場し、一見同じパターンに思えます。しかし観ていると明らかにバランスが異なることに気付きます。じつはここにきてようやくウォーレン夫妻が主役になるんです。これがねえ、ほんとに、よくて。ゲスト家族の若いカップルと熟年ウォーレン夫婦の愛情物語が並行して描かれることにより、全体として非常に「ラブストーリー」の印象が強くなるのが個人的にはたいへん好みでした。ホラーなのに!っていう意外性の良さみもあります。こういうテイストでもホラーは成立するんですねえ。あの「一錠」がめっちゃ泣けんのよ。よく見るとポスターも夫人にスポット当たってるのよね。

あと、この『死霊館』シリーズに共通する良さみとして「味方が多い」が挙げられると思います。「超常現象が起きる、でも周りがなかなか信じてくれない」みたいなストレスで引っ張ることはしないんですよね。普通にみんな目撃してる、知ってる、どうにかしなきゃ……ってなかで現象がエスカレートしていく。今回もあの彼女がいることによる心強さは大きいし、終盤の「誰がどう見ても憑依」なシーンをちゃんと複数人が目の当たりにしている、そこからの腑に落ちる判決。そうそう、今回ちょっとした法廷劇でもあるし、デヴィッド・フィンチャー作品みたいなサスペンス要素が強いのもいいんですよね。

等々、とにかくハマってしまいました。「死霊館ユニバース」としては8作品もあるようなんですけど、ウォーレン夫妻の出てくる本筋はここに挙げた3作品だけとのことなので、もし気になった方おられたらぜひ『エンフィールド事件』までの2作品だけでも観てみてください(※書いている時点で3作目は配信されていないため)。禍々しい邦題に惑わされるなかれ、ちょっと霊が出るくらいのヒューマンドラマです。それと再三のプッシュですが、三宅監督のポッドキャストが本当におもしろいので鑑賞前にも後にもぜひ聴いてみてください。

(2021年184・185本目/PrimeVideo)
(2021年190本目/劇場鑑賞)


追記:「死霊館ユニバース」全部観ました! ますます最高でした。