更新滞りまくっておりますが、久しぶりに映画のことを。「まっぷるトラベルガイド」さんで書かせていただいている映画紹介記事、今月は「韓国恋愛映画のおすすめ20選!王道から“こじらせ系”ラブコメまで」というものが公開されました。
韓国恋愛映画のおすすめ20選!王道から“こじらせ系”ラブコメまで
普段はある程度「観たことがあるもの」を中心に構成していくのですが、じつは恋愛ものの韓国映画ってそんなに観たことがなくて。ドラマならあるけれど、そもそも「恋愛映画」が韓国はヒットしにくいらしくてですね、日本に入ってくるものもそのぶん少ないというわけです。で、今回の記事を書くにあたっては不採用含め18作品を新規で鑑賞しました。大変でした(笑)
1月ごろのことでだいぶ記憶も薄れつつあるところですけども、観た順で軽く感想を書いていこうと思います。あらすじ概要は「まっぷる」さんの記事をご参照くださいませ。ほとんどの作品が、U-NEXTなど配信サービスで観られます。
『ニューイヤー・ブルース(2021)』
『ニューイヤーズ・イブ』みたいな群像劇かな、好きそうだな、と期待して観た一本。実際そういうやつでしたが、導入部のコメディ色(ていうか軽さ?)が強すぎて戸惑いも。まあ韓国映画って総じてそんな感じですけどね。イグアスの滝に行く『ブエノスアイレス』なくだりが好きでした。
『恋愛の抜けたロマンス(2021)』
体当たりの18禁コラムを書かなきゃいけなくなったライターと、恋愛にはウンザリの性欲強め女子。出会い系アプリで繋がった二人の割り切った関係が、あれ、いつの間に……みたいな話。おもしろいし出来もいいんですけど、かなり直球なワードが飛び交うやつなので家族で観るのはだめです。案外ソフトな韓国ドラマと比べて、韓国映画は最近こういう赤裸々なのが流行りらしい。
『ユンヒへ(2019)』
観れていなかったやつ。半分は小樽が舞台の、クィアな物語。これ、素晴らしかったです。とにかく抑制が効いていて、ベッドシーンなどもなく、「振り返る瞬間」が一番ロマンティック(小樽運河がセーヌ川に見える!)、みたいな。かつ、可愛らしいティーンの恋愛ドラマも並走していて万人向け。岩井俊二オマージュが強く、始まった瞬間から「あ!」って感じなので岩井俊二好きな方はぜひどうぞ。
『なまず(2018)』
『梨泰院クラス』『野球少女』のイ・ジュヨン主演作。新宿武蔵野館で見かけて気になりつつも観れていなかったのでこの機会に鑑賞。想像以上にシュールな世界観で、印象としては韓国版『アメリ』ですかね。下ネタも強め。最後のシンクホールは『奈落のマイホーム』以上に心臓に悪かった(音が)。恋愛映画としてはおすすめしにくかったため、不採用です。
『二つの光(2017)』
これもどこかで見かけて気になっていた作品。短編だったとは。視覚障害者同士の恋愛映画ですが、晴眼者キャストであるヒロインの目の演技がすごく、当事者キャスティングと思い込んでしまっていました。サムスンの視覚障害者用VRアプリ「Relumino(リルミノ)」が展開に大きく関わってくるのもおもしろいところ。
『最も普通の恋愛(2019)』
これは今回のイチオシです。『恋愛の抜けたロマンス』などと同系統の赤裸々ラブコメ系ではあるのですが、とにかく細部まで出来がいい!(あのトウモロコシがちゃんと回収されるだなんて思わなかった!) 主演二人はもちろん、脇まで最高のキャスティングで、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の記憶が新しいカン・ギヨン、『愛の不時着』で北朝鮮のおばちゃん組のひとりだったチャン・ソヨンなど、名バイプレイヤーたちを堪能できます。
『その日の雰囲気(2016)』
これを観たあたりで「割り切った関係」でひとつ分類できそうだな、と思ったのでした。そう、韓国恋愛映画はどうも「割り切った関係もの」が多い様子。『新感染』でお馴染みの「釜山行きKTX」で隣同士になった男女のワンナイトラブというゲスいお話ではあるのですが、意外や温かい展開をしていくのがさすが韓国映画の振り幅。
『男と女(2016)』
チョン・ドヨン×コン・ユですよ、すごいな! だのに、なぜか今回までノーマークでした。ベタすぎるタイトルで素通りしていたのかな。いきなりフィンランドの雪景色から始まる感じは、『ユンヒへ』あたりの手触りとも通じるかも。辛い辛い、楽しいことなどひとつもない、不倫のお話です。
『雨とあなたの物語(2021)』
ティーンが主役の、とても丁寧につくられた恋愛群像劇。きれい系というか、『ビューティー・インサイド』ぐらいの恋愛映画が観たいな、という方におすすめ(今回挙げたなかでもおすすめ度高いです)。『欲望の翼』や「レスリー・チャンの命日」がキーワードとなるなど、ウォン・カーウァイの影響力は本当に大きいんだなあと思いました。
『ただ君だけ(2011)』
チャップリンの『街の灯』をモチーフにした作品。ボクシングや刑務所といった要素がそんなかたちでアレンジされるのか!という楽しみ方ができるので、ぜひ『街の灯』とあわせてどうぞ。「盲目の花売り娘」に相当するヒロインを演じるのは『ビューティー・インサイド』のハン・ヒョジュ。この方は他の韓国女性俳優さんとは確実に何か違う空気感を纏っていて、好きですね。
『君の結婚式(2018)』
初恋供養型ラブストーリー。画面が横向きになる二つ折りのガラケー、おでん屋かと思ったトッポッキ屋台など『雨とあなたの物語』に通じる要素が多いので、連続して観ると韓国のノスタルジーを感じられるかも。そのほか、韓国の独特な「釣り堀」が出てきたり、朴槿恵の支持率が高かったり、何やらいろんなものが込められています。そろそろどれがどれだか分かんなくなってきたけど、こういう映画のクオリティ、どれも高いなあ。
『私の頭の中の消しゴム(2004)』
いきなり超王道。しかし初見。ヒロインは『愛の不時着』ソン・イェジンですが、めっちゃ汚い姿で登場するため戸惑い必至。『マイ・フェア・レディ』のヘプバーンみたいなものか。全体的に「一昔前の映画」という感じで、そんなにおすすめはしません。朝ドラ『あすか』のテーマ曲だった「風笛」を盗作したのでは??と騒がれた劇伴は必聴です(のちにカヴァー扱いとなったそう)。
『ユ・ヨルの音楽アルバム(2019)』
Netflix作品。ヒロインは『トッケビ』のキム・ゴウン。実際にあったラジオ番組を時代背景としたとっても丁寧な物語で、『雨とあなたの物語』あたりが気に入った方におすすめ。記事のほうでもさりげなく細くしていますが、「出所=豆腐」のカルチャーを知っていないと最初のほうでちょっと置いていかれるかもしれません。「誕生日=わかめスープ」など、韓国特有の<日本人に馴染みのあるもの×馴染みのない文化>が、わたしはとても好き。
『ジョゼと虎と魚たち(2020)』
ご存知『ジョゼ虎』の韓国リメイク版。と言いつつ、じつはまだアニメ版しか観ていない状態で鑑賞。大阪弁が強烈なジョゼのツンデレキャラ、果たしてどうなるのか??と思っていたら、180度異なる「めっちゃ静かな映画」になっていてびっくり。今回紹介したなかでおそらく一番静かだと思います。観賞後すぐに犬童一心監督の元祖実写版も観たのですが、こちらもまた全然違う作品で(そして、納得の名作!)。映像化されるごとにここまでテイストが変わる『ジョゼ虎』、おそるべし。原作も読まねばです。
『今日の恋愛(2015)』
ええと、これは、観た順では最近なのに、かなり記憶が薄い。幼馴染はアウトオブ眼中、なラブコメですね。軽いのが観たい方におすすめです。『その日の雰囲気』にも出ていたムン・チェウォンは、水卜ちゃんに似てるなあと思ったりしました。
『ワン・デイ 悲しみが消えるまで(2017)』
だいぶ独特な作品。記事のほうではあえて書かなかったのですが、本作のヒロイン(被害者女性)は目が見えません。視覚障害者なのに事故現場から白杖が見つからなかった。これは自殺だろ、自殺にしろ、過失はない!みたいな、そんな話なんです。でも、昏睡状態から「幽体離脱」したヒロインは目が見えるようになる。保険会社に勤める主人公男性は、「他の人からは見えない」かつ「目が見えるようになったばかり」のヒロインを連れてあちこちに出かける。すっごく要素の多い話でしょ。それでいて後味はビターで。うん、変な映画です。
『私のオオカミ少年(2012)』
『ヴィンチェンツォ』のソン・ジュンギが「オオカミ(に育てられたような)少年」を演じるラブコメ。何がいいって、ヒロインのパク・ボヨンがめちゃめちゃ可愛いです。病気がちに見えない。あと、お金ないはずなのに毎日違うおしゃれな服着てる。気になるところは多いですが、パク・ボヨンが可愛いのでなんでもいいです。
『ラブストーリー(2003)』
最後にまた王道。でもこれ、今回初めて知りました。タイトルがそのまんますぎて目に留まらなかったのでありましょう。翌年公開の『私の頭の中の消しゴム』が「古い」感じだったのに対し、こちらは今でも全然見れる上質な仕上がり。同じく主演のソン・イェジンも、こちらでは『愛の不時着』と全く変わらぬビジュアル! 『秘密の森』のチョ・スンウも素敵なのですけども、最後の展開はやっぱり「それ」なのかい。韓国映画、こういう手よく使ってくるなあ。
以上、記事から漏れたあれこれ雑感でした。ご紹介した20作品を観ておけばもうかなり網羅したことになる、と言ってもよさそうなくらいの韓国恋愛映画事情。連続鑑賞して初めて見えてくるようなこともあるので、ご興味ありましたらぜひいろいろ観てみてください。