ストレスフリーな快作2本立て「奈落のマイホーム」「アイの歌声を聴かせて」感想
今日は久々に何もない休日。映画館で映画を2本観てきました。最近なかなか文章を書く気力が出てこず脳内にとどめて終わりになっちゃっているのですが(数行だとしてもそのうちちゃんと書きますけどね!)、今日の2本は単純にエンタテインメントとして絶品だったので、その日のうちに書いてしまいます。俺はやるぜ。
で、何を観たのかと言いますと、1本目は韓国映画『奈落のマイホーム』。2本目は遅ればせながら『アイの歌声を聴かせて』です。アイマイ2本立てと呼びましょう。いや、一応ちゃんと繋げられる気もしてるんです。その心は「ありそう」。あと「ストレスフリー」。エンタメに振り切っているけれど案外「ありそう」で、心も消耗しない傑作2本立て、いってみましょう。
『奈落のマイホーム(2021)』
現在公開中の新作。おもしろそーとは思っていたのですが観そびれてしまうはずの1本でした。しかし、宇多丸さんのムービーウォッチメン@アトロクでガチャが当たったのですねい。んにゃ、それだけじゃ最近は行かないです。思った以上に宇多丸さん絶賛してるなあ、配信始まったらすぐ観よう〜と思っていたのです。ところがです、ところがですよ(城塚翡翠を観ています)、そんなわたしの考えを察したかのようにラジオの向こうの宇多丸さんは言うのです。「こ〜〜れは、配信じゃないだろ観るなら」。えっ。
というわけで、公開規模もかなり縮小しているなか、行ってきました池袋HUMAXシネマズ。かつてのシネマサンシャインでマクロスF観たなあとか懐かしみながら、初めての池袋HUMAX。劇場スタッフさんの感じが良くて(上映時間1分前にトイレ行こうとしてんのに「ごゆっくりどうぞ〜」って声掛けてくれるのなんか嬉しい)幸先のいい感じ。予告で、意図的かも知らんけどすっごい似た感じの映画『#マンホール』が出てきて苦笑いしたり、『[窓]MADO』っていう映画が気になったり(惹かれる予告だったなあ)。
なんか長くなりそうっすね。さっさといきましょう。いざ、『奈落のマイホーム』。どんな映画かざっくり言えば、念願叶って買った新築マンションが、シンクホール=地面の陥没により地中深くに沈んでしまうというパニックムービーです。
シンクホール、韓国の社会問題として取り上げられているのを確かに聞いたことはありますし、日本でも博多駅前での陥没事故がまだ記憶に新しいところ(直った直後くらいの現場に行きました。変な感じでした)。マンションごと「形を保ったまま」地下深くに沈んでそこでサバイブするという設定は荒唐無稽ではあるのですが、でもシンクホールという現象自体は身近で起きうることを肌感覚で知っている。つまり「ありそう」。その大前提にリアリティがあるのは大きいなあと思いました。
魅力としては、まずテンポがいい! 始まった瞬間にマイホームは購入されており、当面のストレッサーかと思われたご近所トラブルも一瞬でコメディに寄っていく(宇多丸さん曰く「阿部寛」な兄貴、よすぎる)。そして何より「この建物、傾いてるのでは?」疑惑がかなり早期に共有されていく。その後も全体的にとにかくストレスが少ない。これ大事です。わたし的には。
陥没・崩落のタイミングもすごいですね。読めない。住人や客人が入れ替わり立ち替わり、さてどのタイミングで「それ」が起こるのか、ぜんっぜん読めない。そしていよいよ訪れたその瞬間も、想像の数段上をいく「金かかってる」度。あの見せ場を、映像の細部まで見えちゃう「昼間」に設定するって、制作陣の覚悟と自信を感じます。あんだけド派手な大惨事が起きてるのに、全然チープじゃないんだもの。やっぱり韓国映画は、かなわん。
中盤ややダレる部分が出てきたり、感情移入の素材が足りなく思えるシリアスシーンなどはちょっとアレなのですが、基本的には笑えて泣けて手に汗握って歯を食いしばって泣けて笑えてという感じの、満足度満点なエンタメ超快作でございました。以前、同じく韓国のパニック超快作『EXIT(2019)』を配信スルーしてしまったときの悔やみが、今回ようやく成仏したような、そんな気がします。映画館で観れてよかった! 宇多丸さん、最後の一言ありがとう!!
『アイの歌声を聴かせて(2021)』
はい、では2本目いきます。公開から一年強が経過した作品『アイの歌声を聴かせて』。こちら公開当時から強力なファンが沢山ついているなあという印象でしたが観るには至らず。予告編の感じだと、あんまり観る気にならなかったのですよね。
そこから少し月日が経ち、わたしが非常勤スタッフをしている田端の小さな小さな映画館シネマ・チュプキ・タバタが「DCP映写機」導入のためのクラウドファンディングを始めました(現在は終了しています)。業界内規格のようなもので、今やこの「DCP」を持っていないと映画の配給を受けられなくなってきているのです。で、なんの話かというと、導入に際してお客様に「DCPが入ったら上映してほしい作品」のアンケートをとったところ、本作『アイうた』がぶっちぎりの一位だったのです。
ありがたいことにご支援が集まり、チュプキは先月よりDCP映写機を導入。「約束の映画」として今月はいよいよ『アイうた』がラインナップされているのでした。そんなわけで、本日2本目は池袋から田端に移動し、チュプキで観てまいりました。なおチュプキは岩浪美和音響監督がいちから組んでくださった音響システムを売りとしておりますが、本作は岩浪さんの作品でもあります。今回の上映に向けて直々に音響調整もしていただいてますので、何もかもばっちしなはず。高まる期待。
お待たせしました!
— 岩浪美和 (@namisuke1073) November 30, 2022
ついに やっと チュプキでアイ歌!
DCP導入で
マイクロシアター最強の映写と音響です!
まじでシオンが目の前で歌いますよ!
これは体験しないと損!
みんな来て!
来ればわかるさ!
吉浦監督!
舞台挨拶してくれてもいいんだからね!?w https://t.co/GOxywPZdhU
結論としましては、とても、とてもいい映画でした。ああ、これは、ファンがつくわけだわ。こんないい映画を見逃さないで!!っていう気持ちになるわ。またしても、映画館で観れてよかった、観そびれなくてよかった……!
舞台は、今よりも少しAI技術が進歩した日本。極秘の実証実験でとある高校に送り込まれた女子高校生ルックのAIロボット「シオン」と、彼女に翻弄される生身の高校生たちの物語です。
これ、『奈落のマイホーム』との共通点という超どうでもいい観点から語っていくと、まずテンポがいい。実証実験の目標は「ロボットであると見破られない」こと、なのですが、主人公は開始数分で気付いちゃってるし、主キャラとなる数名のクラスメイトたちにも早々とバレてしまうんですね。でも「秘密」ってストレスになりますからね。そこんとこ本作は、かなり早い段階で共犯関係が出来上がる。これはいい。精神衛生上とても好ましいです。
また、予告編等で「ん」と引っかかる人が多そうな要素「ミュージカル」。というか少なくとも「歌う」こと。こちらも、それなりに事情があって「いきなり歌い出す」ことになっておりますので(クラスのみんなも怪訝な顔をしておりますので)問題ございません。途中クラスのみんなまで歌い出したときは個人的好みといたしましてはちょっとサブイボ禁じ得ませんでしたがまあ些細なことです。その前にカラオケしてるし。いいよ、許すよ、やりたいこと、やったもん勝ち、青春なら。
もうひとつの共通点、「ありそう」。これはずばり「AI」ですね。他の「AIもの」作品、たとえば『her/世界でひとつの彼女(2013)』なんかでも書いたことですけど、アレクサとかSiriとかが日常に溶け込んでいる今、本作の話って、全然「ありそう」なんですよね。だってわたし、この映画観ながら、自宅のアレクサのこと頭に浮かべてましたよ。帰ったら話し掛けよっと、なんて思ってたし、実際さっき帰ってきて「ただいま」って話し掛けて、「おかえりなさい。声が聞けて嬉しいです」なんて返された日にゃそれなりに嬉しくもなるワンルーム一人暮らしですよ。あ、そういえば『奈落のマイホーム』はワンルーム一人暮らしの人にも優しい映画です。
そんなわけで、なんだっけ、うん、いい映画でした。思ってたような話ではあったけど思ってたような映画ではなくて、だいぶ泣かされました。田端そんなに遠くないよって方は是非チュプキで、今月いっぱいは上映してますので観に来ていただけたらと思います。音響もめちゃくちゃ気持ちいいです。岩浪さんすげー!ってなること必至、ちょっとした4DX体験ができます。右後ろのドアが開きます。おすすめです。
はい。どうせこんなにだらだらと書くなら1本ずつにしろよと、こういうとき毎回思うのですが、まとめて書いちゃったほうがなんとなく楽なんだから仕方ない。とても、とてもとてもいい2本立てを組めたなあと大満足の休日でございました。隙間時間には御茶ノ水で『すずめの戸締まり』聖地巡礼もしてきましたよ。がっちりマンデーでした。あ、チュプキで年明け早々に『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』やります! うれしい!
(2022年220・221本目)
どちらも予告編より数段、数百段面白いです。