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主に映画の感想文を書いています

大林千茱萸監督作品「100年ごはん」上映会へ行ってきたはなし。

2024年6月28日、雨。梅雨生まれの誕生日にふさわしい雲模様の中、溝の口のおしゃれなライブハウスで、とある映画の上映会に参加しました。その映画とは、大林千茱萸監督の『100年ごはん』

大林千茱萸(ちぐみ)さんは大林宣彦監督のご息女。2013年に一本だけ映画を撮っておられて、それがこの『100年ごはん』です。大分県臼杵市が推進する有機農業の取り組みを扱ったドキュメンタリーなのですが、自主上映メインの作品で、なかなか観ることが叶わず。この度ようやくタイミングが合いました。

この映画の上映会は「観て、食べて、話す」の三本立てが原則となっているようで、今日もまず映画の上映、そして臼杵の食材を使ったお弁当でしっかり食事をとる時間、身も心も満ち足りたところでトークセッション、という流れ。ちなみに今日の「お弁当」を作ってくれたのは、現在全国で公開中のドキュメンタリー映画『キッチンから花束を』の主人公である「ふーみんママ」こと斉風瑞さん!

「このピーマンは、『100年ごはん』を観て臼杵へ移住した子が作ったピーマンで…」なんていうエピソードが全てについてくるようなこだわりの食材で丁寧に作られたお弁当は、素朴ながら染み入るおいしさでした。やさしい味わいのものが多い中で、一つだけ入ったエビチリが意外とパンチの効いた味付けだったりするのもよかった。

さて、順番が前後しましたが映画のはなし。お父上の作風は知り尽くしているけど、千茱萸さんはどういう映画を撮るんだろう。それもドキュメンタリーで、オーガニックな感じの題材で、そんなに作家性が出そうには思わないけれど……、なんて思っておりましたが、どっこい。始まった瞬間からめちゃめちゃ「大林映画」でした。

こちらに語りかけてくる「ワタシ」と「アナタ」。時をかけ、手紙を交わし、ピアノも弾いちゃう。ナレーションの調子も、劇伴も(クレジットに山下康介さんの名前を見て納得)、びっくりするほど大林映画。だけれども確かに大林宣彦監督には撮れないであろう作品になっていて、ものすごく不思議な感覚……。やはり大林一家は渾然一体としているんだなあ……。

映画本筋の感想としては、失礼ながらわたしあまりオーガニック的なるものに関心がなくて、そもそも「食」に対する興味もかなり低い人間だもので最初はどうしても斜に構えた見方をしてしまっていたのですが、最終的には揶揄でもなんでもなく「丁寧な生活」しないといけないなあと大真面目に思っていました。お皿買おうかなあとか、そんなこと考えてました。ちょうど「家が好きな人」を前の晩に読んでたし。

引っ越して一年近く経って、ようやく自炊欲もちょっとだけ復活してきたので、まずはコンロを買うところから、かなあ。今の家、コンロのスペースがぽっかり空いてるのだ。いや、別にそういう映画じゃないんですけどね。ただ、未来のわたしに恨まれるよなあ、この生活は。とは思いましたね。そんな映画でした。

映画の公式サイトは上映会情報が更新されていないので、千茱萸さんのInstagramなどを見ていただくのが上映会情報には近道かな?と思います。食や農業に興味がある方はもちろん、大林映画を愛する方にも見逃してほしくない一本です。

すっかり更新が途絶えてしまった今日この頃ですが、流石にこれはしっかり告知せんといかんぞよという件があるので近いうちまたお知らせいたします。今回の『100年ごはん』とも関係あり。しみじみです。