Netflixで独占配信されている韓国映画『ザ・コール』を観ました。「20年前と電話が繋がっちゃった」というところから始まるタイムパラドックス系スリラーで、ちょっと感動しちゃうくらい面白かったです。超おすすめです。
主演はパク・シネさんとチョン・ジョンソさん。パク・シネさんはかなり有名な方のようですが、これまでかすりもしなかったのが不思議。本作の彼女はとっても上白石萌音さんに似ていて、わたしの脳内では「上白石萌音を見た」と認識されちゃっています。
そしてもうひとり、チョン・ジョンソさん。イ・チャンドン監督の『バーニング 劇場版(2018)』でヒロインを演じていた方ですね。あの役も不思議なキャラクターでしたが今回はまた数ランク上のサイコパス。途中でビニールハウスが出てくるのは『バーニング』オマージュかもしれません。
ネタバレに一応配慮した感想
本作では「電話」というアイテムが現在と過去を繋いでくれるのですけども、あくまで「通話ができる」だけであって「時間旅行はできない」ところがミソです。また主に同じ屋敷内(過去の住人と現在の住人)で物語は展開していくため、密室劇の愉しみもあります。
前半は、ご挨拶程度のホラーな演出こそあれど普通にいい映画。ひょんなことから1999年への直通回線を手にしてしまった2019年のヒロインが「1999年のヒロイン」と交友を深めていく様はとても心温まりますし、お決まりの過去改変も単純に嬉しい。一件落着! いい映画だ! でもおかしいな、多分この映画まだ1時間くらい残ってるんじゃないの……?
案の定、というか予想をはるかに超えて、そこからの後半の展開がエグかった。一言であらわすなら「過去は未来より強い」。未来のなんと無防備なことか。過去のなんと暴力的なことか。いやはや、めちゃくちゃ怖かったし、めちゃくちゃ面白かったです。
佳作が見れればいいなくらいの気持ちで観たのですが、どっこいこれは名作と言っていいレベルの仕上がりじゃないでしょうか。タイムパラドックスもの、まだこんなに新鮮な魅せ方があったとは。お見事でした。
ネタバレに配慮してない感想
超常現象を信じさせるために「この先起こるニュース」を予言してみせる、よくある流れ。これがじつは未来側から手を打てる唯一の「攻撃法」でもあった、というくだりがとても面白かった。
「時間旅行はできない」ことによる未来側の無力さ、改変されてしまうとわかっていてただ無防備に未来でその瞬間を待たねばならない恐ろしさ、この描き方が斬新だった。過去を敵に回しちゃいけない……。
ポストクレジットの衝撃展開は蛇足だと初見時には感じたのだけど、映画全体の展開が冷笑的な構成であることを考えるとあの結末で正解なのかも。過去に囚われるな!未来だけ見て生きろ! そういう話かも。
携帯電話は肌身離さず持っていよう!九死に一生を得るかも!って話かも(それは多分ちがう)。
ちなみに本作の原案は『恐怖ノ黒電話』というイギリス映画だそう(古典かと思いきや2011年の映画だった。タイトルよ)。先日観たタイムトラベルもの『あなた、そこにいてくれますか(2016)』もフランスの小説を原作にしていたし、韓国映画はリメイクがうまい。
上白石萌音さん似のパク・シネさん。それだけじゃなくファーストシーンでは吉岡里帆さんに見えたり、髪が伸びたら柏木由紀さんに見えたりと、韓国女優さんのなかでもひときわ日本人っぽいお顔立ちなのかなあと思った。
パク・シネさん演じる2019年側のヒロインはとにかく肝が据わっている。あんな空き家にひとり、っていう時点でとんでもなく怖いのに、そんな行動します?! 壁壊せます?! 上白石萌音マスクで怖いもの知らずなギャップ、萌え。
『梨泰院クラス』のスングォンが出てきて嬉しかった。
ビニールハウスはチョン・ジョンソさん出演を踏まえた『バーニング』オマージュだとして、あの「自動車教習」は『サマリア(2004)』なのだろうか。それとも、韓国映画・ドラマでわりとありがちな父娘エピソードだったりするのだろうか。日本では見たことない。
怖いおかーちゃんが薬草をザクザクと裁断するところは、そのまんま『母なる証明(2009)』のオープニングシーンを思い出した。本作でも母娘のエピソードはなかなか切ない。っていうかマジでエグいぜこの映画。
(2021年23本目/Netflix)