『ハムネット』というタイトルを聞いた印象は「ハムレット」のパロディかな、くらいの、かと言ってシェイクスピアのことなど何も知らないのだけど、実際のところはそのシェイクスピアの息子がハムネットという名前らしい。そしてそのハムネット君がかの「ハムレット」誕生に関係しているのではないか、てなことを描いた同名小説が原作の映画『ハムネット』を観た。監督はクロエ・ジャオ。独特の神秘的な空気感は『エターナルズ』などとも通じる部分が確かにある。スロースターターながら引き込まれるものがある。
本作の主人公はシェイクスピア本人ではなく、その妻のアグネス・ハサウェイ。アン・ハサウェイとも呼ばれるそうで、ならばあの(現代の)アン・ハサウェイさんは何か関係あるのかしらと思ったら、Wikipediaによればこの(シェイクスピアの妻の)アン・ハサウェイさんが由来の本名なのだとか。女の子が生まれたからアン・ハサウェイにしちゃおう、っていうハサウェイ家の方々、どういうつもりなんだ。本名のまま芸能活動どころかスーパースターをやっているアン・ハサウェイ(現代)さんもすごいけど。
さておき、いつの間にか3人も子供ができたシェイクスピア夫妻(ちなみにわたしは教養がなさすぎて、かなり終盤までこの夫がシェイクスピアであることに気付かなかった。それぐらいのほうが楽しめる気もする)。とっても幸せそうな日々を過ごしているのだが、流行り病のペストが子供たちを襲い、幼いハムネット君をあっけなく失ってしまう。加えて、単身赴任の夫シェイクスピアが息子の死に目に立ち会えなかったことから、夫婦の間には深い溝ができてしまう。
その先に「ハムレット」があるのかもしれない、という物語なので、終盤は舞台がロンドンのグローブ座に移り、妻アグネスと共に夫作「ハムレット」の初演を観ることとなる。今の感覚だとなかなかチープな演劇だが、観衆は食い入るように観る。クライマックス、物語の中に自分を引き寄せた観衆たちの姿が本当に印象的だった。誰しもがペストで身近な人を亡くしているのかもしれない。ペストだけではないかもしれない。とにかく必死に生きる日々でしっかり悲しむ暇もなかったのかもしれない人たちが、その瞬間、感情を取り戻していく様がすごかった。16世紀のことが、2020年代の自分とも明確に重なった。
500年前も、1000年前だって、人は物語を必要としている。物語は人を救う。ジェシー・バックリー演じるアグネスが大河ドラマ『光る君へ』の吉高由里子(つまり紫式部)に見える、なんて思っていたのだけど、物語についての映画だったと気付いたとき、妙に腑に落ちた。もしハリウッドが平安文学をベースとした映画を作ることがあれば、紫式部はジェシー・バックリーでお願いします。さておきその2、こんな表現は不本意なのだが「深い感動に包まれ」てしまったので、一年ぶりにこのブログを動かしてみることとした。かつ、思いっきり文体も変えてみた(読み返していたら一年前の記事でも同じことをしていて閉口した。今度はしばらく貫くつもり)。『ハムネット』、おすすめです。
・・・
近状報告。ここは一年間放置していましたが、映画は過去いち観ていた2025年でした。今年も、もう50本くらい映画館で観ている。とにかく映画館へ行くようになりました(映画館で働いているのにね。いるからこそね)。書きたいなと思ったら書くように、してみたい、と思います。続かなさそう〜。いや、でも、いろんなアウトプットを試してみたけど、やっぱりこれが一番続けられるはずなんだ。Twitterと思ってやればいいのでは?(1433文字。10倍)