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主に映画の感想文を書いています

映画『炎上(2026)』感想

新宿を舞台にした映画が好き。この場合の新宿は、主に歌舞伎町を指している。「新宿映画」は「ニューヨーク映画」とも近いと思う。ニューヨーク映画をニューヨークで観ることはなかなか叶わないけれど、さいわい東京あたりに産み落とされたわたしは新宿映画を新宿で観ることができる。この点に関しては己の幸運に自覚的なので、いつも噛み締めながら観たり歩いたりしている。

テアトル新宿で先日観てきた映画『炎上』は、歌舞伎町の、なかでも「トー横」と呼ばれるエリアに集まる若者たちを描いた物語。トー横とは、TOHOシネマズ新宿と歌舞伎町タワーの間にある、大都会新宿では稀有な空き地エリアのこと。居場所を失った若者たちが集まる場所として「問題視」される文脈が多い。

意外にも本作が単独初主演となるらしい森七菜さん演じる主人公じゅじゅは、なんでも自分が歌舞伎町に火を放った犯人であると告白しつつ、成り行きを語ってくれる。新興宗教の家庭で、吃音があって——。ウッ。どちらも個人的フラッシュバック案件です。宗教のことは、書いたことがなかったっけ。まあ、リアルにも片手で足りるくらいしか人に話したことがないので。吃音については5年前に『英国王のスピーチ』に絡めて書いてますね。さておき、そんな環境から逃げ出してきたじゅじゅがトー横へ辿り着き、居場所を見つけて、というのが序盤のストーリー。

歌舞伎町を描いた映画、最近だと『ミーツ・ザ・ワールド』や(同時期の『愚か者の身分』は観れていない)、弁セレ2025作品『天使たち』、最高アニメーション『無名の人生』などが印象に残っているけれど、大体どれもちょっと美しい瞬間があったりして、本作も例に漏れず、客観的には地を這うような状況なのだけども豊かに感じられる時間みたいなのが時々流れる。たとえ最悪の状況下でも「高級肉」のシーンなどは(歌舞伎町タワーが見える墓地なんてあるのかしらというのも含め)とても印象に残った。反芻していてふと、『RENT』っぽいかもなと思ったりもした。やはりニューヨークである。

などとつい他人事の視点にしてしまいたくなるが、この映画の舞台が現代日本であることを忘れてはいけなくて、もし新宿でこの映画を観れる環境にある人は、観終わってからトー横に足を運んでもらいたい。わたしが行った際はフード系のイベントが催されており、まさにその場所なのだけどその場所ではなくなっていた。具体的に何ができるとかでなくても映画を通して街や人の見え方は少なからず変わると思うし、「思いを馳せる」ことが大事だと思う。ついでに寿司も食べた。スシローのカウンター席にみっちり押し込まれつつ、両隣の人の存在を極力無視して自分の寿司やスマホに集中することが良しとされるこの空間は孤独感が薄れて心和らぐなあ、なんてことも思った。

ところで本作、今や『国宝』『フロントライン』『秒速5センチメートル』といった大作に次々出ている森七菜さんを主演に据えておきながら、度肝を抜かれる自主映画的テイストなのも特筆すべき点。初めて歌舞伎町へやってきたじゅじゅが明らかに台車移動させられているところで超わくわくした。トー横の若者役として『地獄のSE』監督の川上さわさんが出演しているのだけど、このテイストを見て腑に落ちた。テアトル新宿の客層も普段とまるで違う若さで、『地獄のSE』をどこからか嗅ぎつけてくるようなティーンの人たちがここにも的確に来ているのだと思うと嬉しい。そしてこんな、かなり勇気のいる作品を単独初主演作として選んだ森七菜さん、すごい。いや、森七菜さんはいつだってすごいんだけど。