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主に映画の感想文を書いています

試写で観た『ケナは韓国が嫌いで』のこと。

試写にて、3月7日公開予定の韓国映画『ケナは韓国が嫌いで』を観てきました。2015年に本国で刊行されたチャン・ガンミョンさんの小説「韓国が嫌いで」の映画化作品です。

『82年生まれ、キム・ジヨン』と同時期に出た小説で、わたしは2020年ごろ、韓国文学にハマっていたタイミングで読んでいました。今回、試写状を見て「おや、これは」と映画化を知り、普段あんまり行かない試写に申し込んだのでした。

なかなかセンシティブっぽいタイトルですけども、その内容は、アラサー韓国人女性のケナさんが、韓国もう無理、もっと人間らしく生きたいと単身外国に移住するお話。韓国人女性とわかる主語を付け加えた今回の邦題、要らぬ誤解を回避していて名案です。なお原作ではオーストラリア、今回の映画版ではニュージーランドへと飛び出していきます。

順風満帆な物語では全くなくて、ときには裁判沙汰で一文なしになるし、韓国に戻ってきたりもするケナ。それでも七転び八起き、自分の「幸せ」を追い求めて舵を切っていく姿にとても力をもらえる作品です。原作にあった「もうとにかく人生いろいろある感じ」が、映画版でもそのままの感覚で味わえました(ビターさが加わっていたのも好みの塩梅)。

読んだのが5年も前なので試写前日に久しぶりに読み返し、おそらく当時よりもケナのことが好きになって、映画の中で会えるの楽しみ!という気持ちでのぞんだ試写でしたが、その期待を裏切らないとても丁寧な映画化だったと思います。読んだばかりだからこそ、細かい部分まで脚色の手腕を感じることができました。

細かいところで言うと、ケナの移住先をオーストラリアからニュージーランドへ微調整していることにより「オペラハウス」という便利なロケーションがなくなってしまっているんですけど、当該の場面がちょっとオペラハウスの階段を思わせるような場所で撮られていて嬉しかったな、とか。

また、原作では最後のほうで出てくる「さむがりやのペンギン」というディズニー絵本を今回の映画では冒頭からキーアイテムとして登場させており、同時にケナが「寒がり」であることも原作より強調したうえで最後まで効果的に使っていて、そこもうまいアレンジだなと思いました。

出会いは最悪、なソウルメイトのジェインも、演じるチュ・ジョンヒョクさん(『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のクォン・ミヌ!)が流石で、料理人になってる終盤の彼とか、あそこだけは韓国ドラマのときめきがあった。キャストで言うとケナ役のコ・アソンさんは『グエムル』の、あの娘ちゃん(ソン・ガンホの)だそうです! そりゃ嫌にもなるわ、韓国が。

てなところで、原作を読んでいた方は安心して観られる出来だと思いますし、原作知らない方も人生なんとかやってく勇気がもらえる後味のいい映画ですので、3月7日の公開、ぜひお楽しみに、です。