
2025年1月16日、尾道映画祭へ行ってきました。2020年に大林監督のファンになってからずっと行きたかった映画祭。昨年は監督とのご縁をかなり繋いでいただいたこともあり、今年こそはと夜行バスで駆けつけました。WILLERの運転手さんが弊社最長コースとアナウンスするほどの、アメリカくらい行けそうな走行時間のバスでしたが、意外と快適で味をしめた38歳です。
初めて尾道へ行ったのは2022年。すべてが大林映画のオープンセットと言ってもよいその街に、大いに酔った最高の思い出。街歩きについては、半ばで止まりつつも(果たしてあとどれぐらい書けてないのかすらもはや分からない)熱さだけはある半端な探訪記で代えさせてください。でないとまた下書きで眠っちゃうため。
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今回最大のお目当ては、映画祭クロージング作品として上映された『日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群』。1988年公開の大林宣彦監督作品ですが、ほぼ全ての大林作品を観たつもりのわたしでも未見だった作品で、なんなら大林家にもディスクが1枚しかないらしい超希少な一品です。メインキャストは(しゅっとしてた頃の)竹内力さん、三浦友和さん、南果歩さん、永島敏行さん。
撮影の多くが尾道で行われており、うねりまくった地形を舞台装置に、もしかすると他のどの大林作品よりもひたすらに山陽本線がスレスレ駆け抜けていく様が大変印象的な、虚構寄りの尾道映画と言いますか、そんな感じの濃厚な作品でした。
最後の作品となった『海辺の映画館-キネマの玉手箱』へと繋がる要素が非常に多いのも驚いたところです。閉館迫る映画館「瀬戸内キネマ」の存在だったり(基本デザインも同じ)、『海辺の映画館』の小林稔侍さんと高橋幸宏さんを思わせる年配男性キャラ2名の配置だったり、生々しく性と生を感じさせる演出だったり、他にも随所で「繋がる」要素が山盛りとなっています。
ヒロイン・南果歩さんの尋常でない可愛さも特筆すべきポイント。2025年現在の感覚では何周か回って髪型・メイクなど全く古臭さを感じることがなく、もうただただ可憐です。本気で惚れます。なんでも大林監督も南果歩さんに心底惚れ込み、その熱で作った映画なのだとか。
予算削減から生まれたアイデアとしてコマ落としで撮影している場面が多く、無声映画的なコメディみも魅力。今回の映画祭では後ろの席のご夫婦がよく笑ってくれるオーディエンスだったので、通常ならややうるさいとも言えるのですが、この度に関しては「映画っていいなあ」でございました。ソフトや配信ではなく有観客(それも700名近い満席の劇場!)で観れたこと、得難い体験でした。
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上映後は監督の御息女・大林千茱萸さんの進行で、奥様の大林恭子さんと、そして三浦友和さんによるトーク。皆さん数十年ぶりの再会、ぐらいにおっしゃっていたかと思います。ご紹介が済むや、広く間隔を取られていた座り位置から車椅子の恭子さんに椅子を寄せた友和さん。広いステージの上、3人ぎゅっと中央に集まって親密にお話されている姿がとても素敵でした。
友和さんといえば、「モモトモ」こと山口百恵さんと三浦友和さんのキューピッドは大林監督といわれています。この日も、その馴れ初め話なんかをしたくてたまらない恭子さんと、気まずそうに話を逸らそうとする友和さんの攻防が微笑ましく、貴重な場に居合わせた気持ち。また、本作の音楽は「愛は勝つ」でヒットするより少し前のKANさんが担当されており、上映の前に哀悼のメッセージが出されたほか、会場にいらしていたKANさんの奥様に拍手が送られるような一幕も。
当然ながらお話は尽きないなか、なんとか畳んでの閉会式。閉会の挨拶をされた年配の実行委員の方が「じつは私も(『おかしなふたり』に)出てたんですよ」とおっしゃっていて、やはり何よりこの尾道という地で大林監督の映画が上映されることの意味は本当に大きいのだなと感じました。うわべではない思い入れとつながりが伝わってくる映画祭でした。
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終演後、どうしても恭子さんにご挨拶をさせていただきたく、お願いをして楽屋へ。恭子さんと(千茱萸さんとも)初めてお会いしたのは、2020年10月18日の埼玉・深谷シネマさん。『海辺の映画館』公開後初となる舞台挨拶でのことでした。詳しくは以下の記事にしたためてございます。
このときに恭子さん・千茱萸さんからそれぞれ「監督の映画をもっと広めてくださいね」と言っていただいたことが今の映画業界従事にも繋がっていると思うのですが、恭子さんとはそれ以来お会いすることが叶わずだったのです。今回ようやくもう一度ご挨拶することができて、また恭子さんも思い出してくださったようで、感無量でした。
最後には一緒にお写真も撮らせていただき、千茱萸さんと恭子さん、恭子さんの手には大林監督の写真立て(チャールズ・ブロンソンと一緒に撮ったもの、のブロンソンを切っちゃったやつ)、つまり「お三方」と一緒に写った、生涯の宝物となる一枚をスマホのメモリに焼き付け、きっと湯気を立たせながら会場を後にしました。
2020年4月10日、大林監督が亡くなられた日から大林映画を追い続け、いろんな出会いや転機があって、2025年1月26日、尾道の地で、ついに大林監督とお会いできたような気がしています。『おかしなふたり』の中で「人はむやみに出会うもんじゃない」という言葉が出てきますが、出会ってしまった以上、普段はあまり「縁」みたいなことを口にしたくないほうではあるものの、こればっかりは今後もしつこくご縁を繋いでいきたいと思う次第です。
尾道では他にも志田一穂さんと千茱萸さんのトークイベントや街での出会い、シネマ尾道さんでの初映画鑑賞(遅まきながら『アングリースクワッド』を観た!)など書きたいことが多いのですけれども、いつまでも公開ボタンを押せなくなるので一旦これまで。
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大林監督関連の過去記事はほぼこちらにまとまっております。