「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(2011)」雑感
イギリス初の女性首相マーガレット・サッチャーの伝記映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』を観ました。主演はメリル・ストリープ、監督は同じくメリル・ストリープ主演の『マンマ・ミーア!(2008)』を代表作とするフィリダ・ロイドさん、なんですが本当に同じ人…?ってくらい違うテイストの映画でした。
あらすじ
イギリス初の女性首相として10年以上勤め上げたマーガレット・サッチャー。「鉄の女」の異名を持つ彼女も、齢80を超えた今すっかりもうろくしていた。自身の伝記本にサインを入れる作業中、無意識に「マーガレット・ロバーツ」と旧姓を書いてしまったところから半生の回想が始まる。
雑感
先日『英国王のスピーチ(2010)』のときにも触れたエリザベス女王の伝記本で「女王が首相の葬儀に参列したのはチャーチルとサッチャーだけである」という話を読み、なんとなくしか知らないサッチャーのことをもっと知りたい!と思っての鑑賞です。
そういう意味では、やや期待外れだったかもしれません。端的に言うと、あんまり面白くない(笑) 伝記映画ってわたしの場合その人の魅力的な部分を知りたくて観るので、例えば『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(2017)』を観て「チャーチル好きだわ…」ってなるような映画体験を期待するわけですが、ちょっとそうはならない作品でした。
なにせ物語の中心は、すっかりもうろくしてしまい死んだ夫の幻覚と暮らしているサッチャーです。そんな彼女が、かつて「鉄の女」と呼ばれた栄光と闘いの日々を振り返っていくのですが、肝心のその日々もいまひとつ魅力的には描かれていないような気がします。「苦渋の決断を下すとその時は憎まれても何世代か後に感謝を受ける」という印象的な台詞があったので、もう少しそういう方向性にしてくれてもよかったんじゃないかなと思いました。それとも魅力なかったのかしら……(って思っちゃうじゃん)。
あと、幻覚要素の占める割合が高すぎるのも「変な映画」感が増しちゃっててもったいない。掴みとしては良かったんですけど、あまりに続くもんで一体何を見せられてるんだろうな〜という気がしてしまいました。邦題にある「鉄の女の“涙”」も、そこで泣くのかよ! 100%フィクションじゃん!っていう。ちなみに原題は『The Iron Lady』で泣きません。
見どころとしてはわりと後半、閣議の席で凍りつくようなパワハラを振りまくサッチャーの、メリル・ストリープの演技が圧巻でした。「議長クンが準備を怠ったので今日はもうおしまいで〜す」のくだり。映画観ててこんなに引きつることってそうそうないですよ。必見です。ただこれも決して魅力的ではないんだよな……。映画製作時、まだご存命だというのに。
どう考えてもめっちゃ面白そうなのに蓋を開けてみると……という似たような面白くなさで連想したのが『ザ・シークレットマン(2017)』。『大統領の陰謀(1976)』の裏側を描いた映画で、地味ながら身震いするほど面白かった『大統領の陰謀』に比べると圧倒的にエンタメ要素が物足りない作品だった印象です。
サッチャーのことはおそらく、Netflixドラマ『ザ・クラウン』のシーズン4(次シーズン)あたりでもうちょっと魅力的に描いてくれるんじゃないかと期待してます。女王とサッチャー、そりはあまり合わなかったみたいですが。そうそうあと本作、女王が一切出てこなかった! そこを期待してたのに!笑
(2020年72本目/Netflix)
小ネタとしては、冒頭でほんの1シーンだけ『フリーバッグ』のフィービー・ウォーラー=ブリッジが出てくるよ!とか、全然気付かなかったけどオリヴィア・コールマンも出てる(サッチャーの娘役)からやっぱりちょっとしたフリーバッグだよ!とか。