こんにちは、さんごです(伏線)。M・ナイト・シャマラン監督の新作『オールド』を観てきました。と言いつつシャマラン作品は全く観たことがなかったんですけども(かすりもしていないことに驚き)、こういう感じなら好きかもしれない。つまり好きでした。
以下、ネタバレ控え目です。
「そのビーチでは一生が一日で終わる」とはポスターなどに書かれているコピーですが、ざっくりそんなお話です。時の流れが異常に早いビーチ(※この設定に疑問を感じてはいけない)に閉じ込められてしまった旅行客たちが、秒で過ぎ去る人生に狼狽する奇妙な物語。「秒で成長・老化する」設定は既に宣伝段階でオープンになっていたので、そのギミックを使いつつどんな映画にするのか、っていうところがお楽しみでした。
少なくとも日本では「謎解きタイムスリラー」と銘打たれていますけど、振り回されはするもののこれ謎解きではないと思います。薄気味の悪い映画が好きな人は好きなやつですし、いわゆる「寓話的」な映画でもあるのでそういうのが好きな人には合うと思いますが、「どうして?」を求める人には期待外れかもですね。もう一度言っておくと、つまりわたしは好き。
公開からだいぶ遅れての鑑賞だったことにより「ツッコミどころ満載」であることは散々見聞きしていたので、そこがノイズにならなかったのもラッキーでした。もし予備知識ゼロで観ていたらツッコミどころが多すぎて折れてたかもしれません。でもあのビーチで手術受けたいって人そこそこいるんじゃないかな(笑)
また、ライムスター宇多丸さんの評で「人生について考えさせられる映画」だと聞いていたのも大きかったです。人生について考えさせられる映画、好きなんですよ最近。よおし人生について考えちゃうぞ〜とワクワクしながら観に行って、しっかり期待通りのものを得て帰ってきた、そんな幸せな人間がわたしです。
何書いても受け売りになっちゃうので詳しくは聴いてくださいって感じですけども、確かに理不尽なのは時の流れだけで、あのビーチで起きていることって基本ごくありふれた「人生」なんですよね。そして「圧縮した人生」とはイコール我々が日頃親しんでいる「アレ」であるという宇多丸さん的解釈。この映画は「見方」を知ってから映画館へ行くほうが吉と出るかもしれません。
あ、そういえば伏線回収を忘れてました。なんかね、わたし突然嫌われるんですよ。結構ショッキングな手紙でしたね。もし覚えてたら劇場で同情してください。
はみ出し雑感
サンセリフ体からセリフ体にフォントが変容していくタイトルバックがかっこいい。宇多丸さん曰くヒッチコック風のタイトルバック作りを得意とする方が担当しているそうで、まだそんなに観れてないけど確かにヒッチコック作品どれもOP印象的。『鳥(1963)』のかじられていくやつとか。
近年では『アス(2019)』なんかを思い出させる「車でリゾート地に向かう家族」という平和かつ経験上不穏なオープニングからの、ホテルに到着するや提供される奇妙なドリンク。それを差し出す女性スタッフの、どこか不自然な筋張った身体。どこか何か気持ち悪い。う〜ん、いい感じ。
ちなみにどこか不自然な筋張った身体の女性スタッフはフランチェスカ・イーストウッドさん。そう、クリント・イーストウッドの娘さん。ってことは『運び屋(2018)』に出てたりした、あの娘さん? と思ったらそれはまた別の娘さんだった(アリソン・イーストウッドさん)。
どっかで観たような→ああ!!ってなキャスティングが本作わりと多い。例えば成長したお姉ちゃん役のトーマシン・マッケンジーさんは『ジョジョ・ラビット(2019)』に出ていたあのユダヤ人美少女。もうひとり成長したお嬢ちゃん役のエリザ・スカンレンさんは『ストーリー・オブ・マイライフ(2019)』のベス。豪華!
成長した弟くんのアレックス・ウルフ氏も『ヘレディタリー/継承(2018)』や『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル(2017)』および続編に出ている彼。最後の成長は正直わかんないレベルだったな。弟くんに限らず「成長キャスティング」がお見事。
うまいなあと思ったシーンは「わかるでしょ、想像してくれ」のシーン全般。アレとかアレとかアレとか。めっちゃ嫌(褒め)だなあと思ったシーンは「布に包まれたとあるものがカラカラ音を立ててる」やつ。いいなあと思ったのは「チート的に危機を乗り越えた二人」の晩年。
あと、てっきり『ビバリウム(2019)』的ループの胸糞エンドかと思いきや案外後味良く終わってくれるのもよかった。なお『ビバリウム』は「お部屋探し中のカップルが内見で連れてこられた奇妙な住宅地から抜け出せなくなる」お話なので結構近いタイプの映画。
最後に一応付けられている「どうして?」のくだりは個人的にわりと好き。というか納得。あのひと意外と何事もなく過ごしてるな、とは思っていたので。スッキリ謎が解けたと言えなくもない。
トレントとカラが「プロムも体験しないまま青春が終わる」みたいなことを話してるシーン(成長のプロセスでプロムの知識も自動的に入ったのだろうか……)、コロナ禍の学生に重ねてしまった。コロナ禍はわりかしあのビーチみたいなもんだと思うのよ。
(2021年153本目/劇場鑑賞)