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映画「鳥(1963)」感想|元祖・生物パニック映画の潔さ〈いいかげんヒッチコックを観よう④〉

じつは全然観たことのないヒッチコックをこっそり履修していこう企画、『サイコ』『めまい』『裏窓』ときて4本目は『鳥』

ちなみに、ひとつ前に観た映画『ナイスガイズ!(2016)』のラストが「鳥たちに」「ハレルヤ!」という乾杯シーンだったのは(元々2本続けて観るつもりだったうえでの)全くの偶然。奇しくも繋がりがち、映画あるあるです。


映画「鳥」ポスター
映画「鳥」ポスター


さて本作、のちの『JAWS/ジョーズ(1975)』などに繋がっていく「元祖・生物パニック映画」であり、文字通り「鳥に襲われる映画」であることはなんとなく知っていましたが、思いのほか鳥に襲われるだけの映画でびっくりしました。【鳥ショップで出会った男女→→お近づきのしるしに小鳥を届けたら→→鳥めっちゃ襲来→→終】。さすがパイオニアはタイトルも中身も潔い。

パニック映画に「鳥」っていうチョイスがまた絶妙ですよね。もちろん大群を成されたら怖いし、最初の大襲撃である「暖炉からスズメ」などは『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(2021)』クライマックスのネズミを連想するほどギョッとしたし、某「お客様だよ!」みたいな玄関クラッシャーにも怯えたけど、でも「鳥」単体ではそんなに怖くない、むしろちょっと可愛く見えることすらある。集団心理って怖いよね、みたいなメタファーじみたところもあるのかな。

集団心理といえばまさに「人間怖い」的展開になりかけるダイナーでのくだりから先、まさかの大スペクタクル巻き起こりっぷりが意外すぎて爆笑しました。いやもっとなんか、ミニマルな恐ろしさを貫く映画だと思い込んでいたもので。こないだ全部盛りアクション映画『白頭山大噴火(2019)』で同じようなシーン見たもん。

ミニマルなほうで言うと、学校での「なかなか終わらない歌」と「だるまさんがころんだ的に増えていくカラス」はかなり「映画的怖さ」で好きでした。そもそも、あの先生もなんか怖いのよね。授業の仕方が妙だし。それにあのタイミングで避難訓練するのは明らかに悪手じゃろ、中にいなよ。

あと、最後までわけもわからず翻弄され続けたままフェードアウト、という構成は今ならコロナ的なものにもちょっと見えちゃったりしますね。なんたって「一艘のボート」から始まってるんですよ。一部で騒がれて、でも最初はみんな聞く耳を持たなくて、気付けば大爆発。息を殺して家の中に閉じこもるほかない。恐怖とは普遍的なり……。

(2021年149本目/U-NEXT)

鳥 (字幕版)

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このバービーはかなりイケてると思います。