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映画「ナイスガイズ!(2016)」感想|ライアン・ゴズリングの情けなさが光る「低み」コメディ

ラッセル・クロウライアン・ゴズリングのバディムービー『ナイスガイズ!』を観ました。2016年の作品ということで、ライアン・ゴズリングはこの年『ラ・ラ・ランド』と2本出てたんですね。

ちなみに何故いきなりこれを観たかというと、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」にて先日「低み」という特集が放送されまして。前番組から続いている、書籍化もされている名物コーナーなんですけども。

自己啓発ならぬ「自己底発」の、まあいい感じに元気が出る投稿コーナーです。最新版もかなり面白いので、意識高いことに疲れちゃった方はぜひ聴いてください。

そんでもってこのコーナー、タイトル読みで宇多丸さんが「ヒクミッ‼︎」と必ず裏声まじりに不恰好なシャウトをするんですね。わたし新参リスナーなのでその「原典」までは知らなかったのですが先日の放送で改めて説明があって、宇多丸さん曰く「映画『ナイスガイズ!』における、ライアン・ゴズリングが急に高い声を出すくだりのオマージュ」であると。へーー。

というのが、経緯です(無駄に長い)。何でもかんでも元ネタ知りたいタイプのわたしにはうってつけの情報でしたし、この日はえらく鬱々としてしまい無理矢理にでも着火したい気持ちだったこともあって、楽しそうな映画にすがってみたわけです。結果、楽しかった! ありがとう映画!


娘ちゃん推しなもんで、すまんラッセル・クロウ/映画「ナイスガイズ!」より
娘ちゃん推しなもんで、すまんラッセル・クロウ/映画「ナイスガイズ!」より


さてさて、まずオープニングがとにかく秀逸でございます。深夜のキッチン、少年がこっそりエロ本を読んでいると、窓の外、観客にしか見えないアングルから車がぴょーんと宙を舞って──。いや〜、めちゃくちゃいい掴み! そのあとエロ本の少年が取る行動もまたいいんですよね。下衆なミスリードを誘いながらの、まさしく「ナイスガイ」な善行。やりたい放題の映画だけど「良心」はあるよ、と最初に目配せしてくれる作り。たいへん好印象です。

以降、全体通して「(せめてもの)良心」が大事な要素となってくるハートウォーミングな映画ですが、しいて言うなら開始早々「ゲイ」が笑いの種にされてたり(それを怪訝に見ている文脈とはいえ)、散々な目に遭うモブ敵がことごとく黒人だったり、5年前ってまだこういう感覚かと思わなくはなかったです。いや、設定は70年代LAですけど、今ならわざわざ採用しなさそうな演出だなと。

それはそうと、あの時代のLAたまらんですね。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)』を思わせる住宅地と金持ちのパーティーと美しいアメ車とファッションと。生けるマクガフィンアメリア」がずっと着てるイエローのドレスはそれこそ『ラ・ラ・ランド』的だし、ライアン・ゴズリングがまたああいう感じほんと似合うんですよね。

問題の「ヒクミッ‼︎」は、観て納得です(笑) 確かにめっちゃ言ってる。近年わたしの中ではレイノルズのほうが上回ってきてたライアン株ですが、本作でだいぶゴズリング巻き返しました。コメディのライアン・ゴズリングいいわ好きだわ、情けなくて不恰好で、なんなら最高だわ。

それから、凸凹バディをもっと凸凹させる「娘ちゃん」の存在が絶妙で! いい子なのにね、しれっと運転してたりね。アンガーリー・ライスさん、どっかで観た顔だなと思ったらMCUの『スパイダーマン』シリーズにも出てる方だったんですね。若い頃のキルスティン・ダンストみたいな雰囲気(ブロンドってだけでは)がすごく好きです。

(2021年148本目/PrimeVideo)

この日は続けてヒッチコックの『(1963)』も観ようと思っていたんですけど、驚いたことに『ナイスガイズ!』のラストってライアン・ゴズリングラッセル・クロウ「鳥たちに」「ハレルヤ」と乾杯するシーンで終わるんですよね。なんというお導き。もちろん観ましたよ、『鳥』。ハレルヤ。